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GOOD PROFESSOR

東京電機大学
工学部 環境化学科

鈴木 隆之 教授

すずき・たかゆき
1964年生まれ。’94年早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻後期博士課程修了。’95年米コロラド大学博士研究員。’96年米ピッツバーグ大学博士研究員。’98年山形大学ベンチャービジネスラボラトリー博士研究員。’99年信州大学繊維学部助手。’00年東京電機大学工学部助教授。’08年より現職。
著作には『理工系一般化学』(共著・東京教学社)がある。
鈴木先生が主宰する「機能高分子化学研究室」のURLアドレスはコチラ→
http://www.chem.kn.dendai.ac.jp/lab/fpc/fpc_main.html

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環境・医療に福音もたらす「機能高分子化学」

鈴木先生の研究室のある5号館
東京電機大学5号館の正面入り口

今週ご紹介する一生モノのプロフェッサーは、東京電機大学工学部環境化学科の鈴木隆之教授だ。
まずは所属学科である環境化学科の特徴から話を伺おう。

「文字どおり化学が主流の学科ですが、一部生物も扱っております。最近は学際的な研究が増えていまして、化学と生物が明確に分けられなくなっているのが実情ですね。この学科で研究されている課題は何らかのかたちで環境につながっており、学科名に『環境』が冠されているのもそうした事情からです」
「現代は、どんな職種どんな職場であっても環境に無縁というところはありません。ですから化学や生物の仕事に携わるときには、つねに環境を意識してもらいたいという意味もあります。自分たちが将来開発したものが、環境にどのような影響を与えるのかを念頭に置くということですね」

なお、化学と生物の分野を基礎とした新しい技術の研究と教育を目標に掲げる環境化学科を構成しているのは、①環境化学②機能性高分子③生物工学④環境材料工学――の4つの柱だ。

さて、鈴木先生の専門分野は「機能高分子化学」だ。
どのような研究内容なのか、ご説明いただいた。

「複数の金属イオンが溶け込んだ水溶液から特定の金属イオンを取り除く材料として、キレート樹脂やイオン交換樹脂というものがあります。ただ従来の除去方法では、吸着した金属イオンを樹脂から外すのに塩酸や硫酸を使わなければなりません。せっかく有害な重金属を外しても、また有害な薬剤を使わなければならないのです。その矛盾を解決し発展させていくのが私たちの研究です」
「我々が開発した材料は、より高い性能で吸着し、さらに吸着させた金属を、光を照射するだけで外れるようにしました。その光も可視光線を使うことで、材料の劣化も防げるため、寿命は半永久的です。金属を吸着する前と吸着中では色が変わって知らせますから、その点もこれまでの材料にはない特徴になります」

こうした新材料の開発はもちろん世界初のことで、しかも研究室段階の実験を終え、実用化に向けて企業との共同で製品開発に入っているという。
これが実用化されれば、工場廃液の浄化処理などに画期的な変化がもたらされることが期待される。

太陽光による酸素回収法が呼吸器疾患の苦しみを解消

都心に位置する東京電機大学キャンパス
学生たちを指導する鈴木先生

さらに機能高分子化学研究室では、空気中の酸素を太陽照射によって濃縮回収できる高分子材料の開発プロジェクトにも成功している。
この酸素回収メカニズムのモデルは、なんと我々の体内を流れている血液だという。

「血液の赤血球中にあるヘモグロビンは、肺の空気から酸素をとり込んで各細胞に供給して戻ってくるというのを繰り返しています。そのヘモグロビンのはたらきにヒントを得ました。この新材料は、現段階では医療面での活用を考えています。肺疾患の患者さんが酸素吸入用のボンベを携行している光景を見かけますが、我々が開発した新材料が、将来ボンベの代わりになり得ます。しかも新材料はフィルムですから、それを肩に貼るだけで濃縮酸素が得られます。患者さんは手ぶらでも外出できるようになるわけです」

これも実験室段階の研究を終えて、いまは実用化を待っている状態だという。
さらに将来的には火力発電所での利用をも考えられるとも語る。
発電燃料の燃焼効率を向上させるうえに、排出CO2を削減するという2重の効果があるからだ。

そのほか鈴木先生たちは「光応答高分子」を用いた新規CO2センサーの開発研究にも取り組んでいる。

情熱的かつ民主的な研究室で一生モノのリテラシーを

研究室の学生たちとともに

東京電機大学環境化学科の学部生が、各教員が主宰する研究室に配属になるのは3年次の2月から。
機能高分子化学研究室でも例年4~5人の学部生を受け入れている。

「配属を希望する全員に『なぜ私はこの研究室を選んだのか』というテーマで作文を書いてもらいます。ここでの研究に懸ける気持ちの強さをその作文で測るわけです。研究室入りにあたって学業成績は特に関係ありません。あえて成績など見ないようにしているくらいです」

その作文は鈴木先生を含めた研究室メンバー全員で読んでいく。
配属学部生の採否は全員による投票で決まる。

「自分ひとりで完璧な判断など到底できません。ですから出来るだけ研究室の運営は民主的にやりたいと思っているのです」

キッパリと鈴木先生はそう語る。
研究室に配属になった学部生は約1年間かけて卒業研究にいそしむのだ。

卒研のテーマは、彼らの人柄や特性・興味などを日ごろ観察したうえで鈴木先生のほうから与える方法をとる。
あらためて学生たちへの指導で心がけていることを伺った。

「この大学を卒業して社会に出ても、大きな学閥などあるわけではありませんので、自分ひとりの力で生きていけるように育てたいと思って指導しています。そのためにも私から指示を待っているようではダメなんです。まずは学生たちに決めさせて、自ら決めたことなのだから責任をもってやり遂げるようにというのが基本方針です」
「化学の研究や実験などしていますと、いろんな壁に突き当たります。その打開策には、加熱温度を変えてみたり、加圧の力を変えてみたり、溶剤を代えてみたりと、いろいろな方法があり得ます。そうした実践的研究のなかで学んだ方法論を、社会に出てから直面するさまざまな問題解決にも役立ててほしいですね」

こんな生徒に来てほしい

あまり学力については問いません。
とにかく大切なのは「情熱」です。
「大学でこれをしたい」という強い気持ちを持って進学して来ていただきたい。
一流といわれる人は、バランスのとれた才能とともに、みんな強い情熱を持っています。
わたしの研究室には次のような「研究心得」を掲げてあります。
――情熱がなければおしまいだ――

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。