早稲田塾
GOOD PROFESSOR

芝浦工業大学
工学部 情報工学科

大倉 典子 教授

おおくら・みちこ
東京生まれ。’78年東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。’79年日立製作所中央研究所入所。’84年日立超LSIエンジニアリング入社。’87年ダイナックス入社。’94年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。’99年芝浦工業大学工学部工業経営学科教授。’01年より現職。グッドデザイン賞(06年)。日本感性工学会技術賞(07年)。
大倉先生の「情報システム工学研究室」のURLはコチラ→
http://www.jin.ise.shibaura-it.ac.jp/

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「人にやさしい情報」への工学的アプローチ

大倉先生の研究室が入る「研究棟」
芝浦工業大学の校名プレート

今週のグッドプロフェッサー・芝浦工業大学工学部情報工学科教授の大倉典子先生は、理工系学部では数少ない女性教授のひとりである。
まずは、大倉先生が教鞭を執る芝浦工業大学情報工学科の特徴から伺おう。

「芝浦工業大学情報工学科のカリキュラムは、情報処理学会が出している標準コースに準じており、その充足率は90%を超えています。これは、日本国内の大学における情報系学科での最高の充足率です。このようにバランスのとれたカリキュラムを用意し、主要科目はすべて専任教員が教えていますので、その内容だけでなく質についても誇れると思っています」

さらに、ふつう半期で教えられることの多い「コンピュータアーキテクチャ」「離散数学」などの科目も通年をかけてじっくり教えていること、さらに座学と演習を巧みに組み合わせて「学んだ知識を使える技術にする」ように工夫していることなども特徴だという。

「バランスよくじっくり学んでもらって、それを技術として習得していく。私ども自慢のカリキュラムになっています」

大倉先生は、カリキュラム立案メンバーのひとりでもある。そんな大倉先生が研究テーマにしているのは「人にやさしい情報の形」である。
その意味するところを聞いてみると――

「研究項目には3つありまして、まず第1がバーチャルリアリティー(VR)を駆使した研究です。いま高度情報化社会といわれ、若い人たちには便利な時代ですが、高齢者や障碍者・子どもたちにとっては雲の上の技術になっています。そうした人たちが情報化社会の恩恵を受けられるようにするための研究です。たとえば遠隔地の世界遺産の光景を200とか300インチの大型画面に3D技術で再現させることができます。家に居ながらにして世界中の世界遺産をVRで体験できるようにするような研究ですね」

その一環として、情報システム工学研究室で開発した視覚障碍者用のゲームが、すでに商品化され市販されている。

女性らしい思いやりに満ちたユーザビリティー研究

豊洲キャンパスの全景
キャンパス植栽の緑が美しい

さらに、第2の研究項目は「わくわく」と「かわいい」がキーワードとなる。

「いまの日本は元気がありませんから、皆さんにもっとわくわくするような体験をしてほしいと思いましてね。人はわくわくすると心拍数が上がりますが、そのためにはどうすればいいのか? ということを 科学的に裏付けされたものに基づいて考えていきます。キッチン用品や日用品などの、デザインにおけるエレガントさでは西欧にかないませんから、日本の製品は『かわいい』を追求するべきだと思いまして、『かわいい商品とは何か』についても、系統的に分析する研究を始めています」

そして第3の研究項目は医薬品のユーザビリティー(使いやすさ)についてだ。

「看護師の9割は女性ですから、同じ女性の立場から、彼女たちに役立つものを考えて支援したいと思っています。医薬品や医療機器は専門スタッフが使用するということで、ユーザビリティーの観点からの配慮がなされていないケースが多いのです。しかし医薬品のパッケージデザインが似ていたために、それを取り違えるなどの医療事故が起こっています。私たちの提案ですでにいくつかの医薬品パッケージのデザインが変更されています」

06年に大倉先生はグッドデザイン賞を受賞している。
これは、点滴用複室バッグを女性看護師でも容易に扱えるように改良し、その成果が認められたものだ。
このほか医療用のユーザビリティーとして、リハビリ支援システムにゲームを組み込んだものを開発。
これも日々リハビリをする子どもたちに好評だ。

このように「人にやさしい情報の形」を3つの観点からアプローチしている大倉先生。
その研究テーマの多様な広がりと、女性ならではの細やかな思いやりに満ちた点が特徴である。

研究室モットーは「楽しくなければ研究ではない」

屋上までもが緑化されている
研究室内で大倉先生と学生たち

芝浦工業大学情報工学科の学生は3年次後期の11月に各研究室に仮配属される。
大倉研究室でも例年12人前後を受け入れているが、いつも希望者が多く、大倉先生と大学院生による面接で選抜しているという。

「仮配属の決まった学生は、まずネットサーフィンを自由にしてもらいます(笑)。とにかく自分が興味のある分野を探してもらうわけです。また4年次の先輩の卒業研究を手伝って、自分のテーマを徐々に絞り込んでいきます」

卒業研究のテーマについては、先輩の研究を継承するも良し、新たな課題を設定して挑むも良しである。

「卒研テーマは学生の希望を尊重するようにしています。本人が嫌だと思っている研究など長続きしませんし、楽しいと思えない研究をしても良い結果は得られませんからね。せっかく1年近くをかけて研究するわけですから、『楽しくなければ研究ではない』というのを研究室の指針にしています」

また、卒業研究においては学生2人がペアになって研究することを推奨しているらしい。
ひとりだけでの研究では行き詰まることも、2人の複眼思考であたれば活路が開きやすいという考えからだ。
最後に、大倉先生が学生指導で心掛けていることについて伺った。

「まず、自ら物事を考えられる学生を育てたいと思っています。いま日本は世界に先駆けて超高齢社会に入っています。先行するお手本などありませんから、独力で切り開いていかなければなりません。そうした人材が強く求められていくはずなのです。さらに、プレゼンテーションおよびコミュニケーション能力を身に付けさせたいと考えています。どんなにすばらしい研究をしても、他の人に伝わらないと意味がありません」

この2つのリテラシーについては、ぜひとも大学4年間で身に付けてほしいとも強調する。

こんな生徒に来てほしい

どんなことでも良いですから、一所懸命になってやり遂げた経験のある人がいいです。
1回でもそうした経験があれば、また懸命に取り組むことができますからね。
私たちの研究室ではいろんなジャンルのシステムを組み上げることが多いので、受験科目以外の音楽や美術・体育などの素養も必要になることがあります。
そうした科目も積極的に学んできてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。