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GOOD PROFESSOR

玉川大学
農学部 生物資源学科

佐々木 正己 教授

ささき・まさみ
1948年東京生まれ。’70年玉川大学農学部卒。’72年東京農工大学大学院農学研究科修士課程修了。’75年東京大学大学院農学系研究科博士課程単位取得満期退学。’75年玉川大学農学部助手。’80年同助教授。’87年より現職。玉川大学学術研究所所長。同ミツバチ科学研究センター主任。
著作は『養蜂の科学』(サイエンスハウス)『ニホンミツバチ―北限のApis cerana―』『蜂から見た花の世界』(前著ともに海游舎)など多数。
佐々木先生のURLアドレスはコチラ→
http://www.tamagawa.ac.jp/gakubu/nougaku/agronomy/entomology/msasaki/

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「ミツバチ愛」ゆえの世界的研究

佐々木研究室の入る6号館「SCIENCE HALL」
玉川大学町田キャンパス点描

今週の一生モノのプロフェッサーは、昆虫(とくにミツバチ)研究におけるわが国の第一人者として、世界的にも名をはせる玉川大学農学部生物資源学科の佐々木正己教授である。
まずは佐々木先生による「ミツバチの不思議」話からご紹介していこう。

「ミツバチの個体というのは、非常に小さなものですが、その記憶・学習能力はサルにも匹敵するといわれています。ミツバチの集団にリーダーはいません。その1匹1匹が細胞のようになって『超個体システム』で分業しているのです。巣内部のコロニーは『集合脳』とも言えるもので、未来の並列コンピューターを先取りしているとも言えます」

ミツバチといえば、「ダンス言語」による情報伝達のことを、小中学校で習ったことを覚えている人もいるだろう。

「たとえば『8の字ダンス』による蜜源情報の伝達では、そのダンス内容によって方向や距離さらに蜜の量・質まで伝えています。このほかコロニーごと転居する際に、その準備を全員に伝えるダンスがあったり、巣を2つに分ける『分蜂』のときの飛び立ちの信号を一瞬で仲間に知らせたりするシステムも持っています」

知れば知るほど実に不思議なミツバチの世界だが、その不思議解明のために佐々木先生ら研究者の不断の努力が続けられているわけだ。
そして徐々にではあるがミツバチの神秘的行動は解明されつつある。

「たとえばダンスにより蜜源の場所情報を受け取ったハチは、そこに最初に向かうとき『迷子保険』として飛翔エネルギーの源になる蜜を余分に持っていきます。それが2回・3回と回を重ねることで必要な量だけになっていくのです。これは世界初の発見です」

「ミツバチのコミュニケーション」COEの事業推進者

最寄り駅から続くサクラ並木
キャンパス内には自然林が広がる

いまやミツバチの研究はどんどん進み、すでに遺伝子レベルの段階にも入っている。

「’06年にミツバチの全ゲノムのDNA塩基配列解析がなされました。私たちは本学のグローバルCOEプログラム『社会に生きる心の創成――知情意の科学の再構築』のメンバーとして、『ミツバチのコミュニケーションと認知』について遺伝子レベルから解明すべく研究しています」

「ミツバチ博士」としての印象が強い佐々木先生だが、ほかにもマルハナバチ類やウワバ類(チョウ目ヤガ科)について、ノルウェー北極圏や蔵王の高山帯でのフィールド研究も行っている。
次いで佐々木先生が所属する農学部生物資源学科についても話を伺った。

「本学のキャンパスは自然が豊富で、実習用圃場(畑)も敷地内にあり、農学を学ぶ環境としては恵まれています。生物資源学科はその名称のとおり生物を扱いますから、なるべく本物の動植物に触れられることが大切です。カリキュラムは基礎的な純粋科学から応用科学までカバーしています。農学部は、人や社会に役立つことを目指していますから、この応用科学までをもしっかり学ぶことが大切ですね」

玉川大学生物資源学科は「分子レベルから個体・個体群レベルまでの研究」をうたっており、近年は分子レベルの研究や学習指導にも力を入れているという。
さらに、OBでもある佐々木先生は玉川大生物資源学科の魅力についてこう語る。

「何といってもこの学科で伝統的・特徴的なのは実習に力を入れているところでしょう! 箱根の演習林はじめ北海道に牧場、鹿児島にも農場を持っています。いずれも実習授業で大いに活用していますよ」

絶滅危惧種!? 「昆虫オタク」は佐々木研究室に集合せよ

飼育中のミツバチと佐々木先生
飼育中のミツバチと佐々木先生

玉川大学生物資源学科の学部生は、3年次前期から(1)遺伝子・細胞工学(2)植物機能開発科学(3)動物・昆虫機能開発科学――の3領域に分かれて学ぶ。
さらに3年次後期になると、各教員の研究室に入ってそれぞれの卒業研究に臨む。
佐々木研究室でも例年7~8人の学部生を受け入れている。

「卒研の研究テーマについては、本人の希望がある場合にはできるだけ尊重します。が、最近はそういう元気のいい学生は少数でして、わたしの方で提案するテーマを挙げて、話し合いや予備実験をやりながら決めています」

卒業研究の研究内容によっては、佐々木先生が主任を務める「玉川大学ミツバチ科学研究センター」に軸足を置いて本格的に研究する人もいる。
今年は同センターの指導もあって、ニホンミツバチの空中交尾の様子を世界で初めて画像にとらえた現役学部生もいたそうだ。
あらためて学生・研究室生への指導で心掛けていることについては次のように語る。

「まず、自分が材料とする昆虫をちゃんと飼育できるようになって欲しいということですね。ミツバチの場合は奥が深い世界なので簡単ではありませんが、それでも実際に飼育しながら自分で面白さを発見していってほしいのです」

昨今の高名な研究者のなかには、対象昆虫を特に飼育することもなく、いきなりDNAを抽出する「効率的」な実験によって研究論文を発表する研究パターンも増えているという。
しかしこうした研究姿勢を佐々木先生はキッパリと否定する。

「最近の学生たちを見ていますと、言われたことはできても、自ら何かテーマを見つけたり、自分で計画を立てたりするのが苦手な人が多いようですね。ですので、あまり細かく指導することよりも、学生のモチベーションを高める指導を心掛けるようにしています」

インタビューの最後に佐々木先生はこんな話もしてくれた。

「以前でしたら、幼いころから昆虫採集や昆虫の飼育に夢中だという良い意味での『昆虫オタク』の学生をたくさん見かけたものでした。彼らは1年次のときから研究室に入り浸っていたものです。いまも昆虫オタクはいることはいるのですが、総じて草食系というか大人しくなってしまって(笑)。みんな3年次後期の研究室入りまでじっと待っていますからね。それが物足りないというか淋しい気もします」

そもそも大自然のなかに息づく野生生物を対象に研究する者にとって「インドア系」流儀は似つかわしくない。
出よ! 「野生系」昆虫オタクたち――

こんな生徒に来てほしい

実際に生きている動植物について、自分なりの関わりをもった人に来てほしいですね。
テレビや図鑑を少し見て昆虫が好きになった、というだけの人ではちょっと困ります。
写真映像のなかの昆虫と違って「逃げる」「刺す」「におう」「死ぬ」ということが野生の昆虫には付きものです。
本物の生物に触れたこともない人がこの学科で学ぶのは困難な面があります。
たとえ都会育ちの人であっても、生きものに触れる機会はいくらでもあるはずです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。