早稲田塾
GOOD PROFESSOR

武蔵大学
社会学部 メディア社会学科

小田原 敏 教授

おだわら・さとし
1956年秋田県生まれ。’80年明治大学政治経済学部政治学科卒。’85年上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士後期課程(単位取得退学)。’86年東京ケーブルビジョン入局。’89年電気通信政策総合研究所入所。’92年「CNN DayWatch」メーンキャスター。’94年関西大学総合情報学部助教授。’98年加トロント大学マクルーアン研究所在外研究。’04年より現職。
主な著作に『メディア時代の広告と音楽』『テレビニュースの解剖学』(前著ともに共著・新曜社)『情報通信業界(第6版)』(教育社)などがある。
小田原先生が主宰する「ODASEMI」のURLアドレスはコチラ →
http://www.musashi.jp/~odawara/

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総合知としての「メディア社会学」研究

小田原研究室の入る教授研究棟
武蔵大江古田キャンパス正門

今回ご登壇ねがう一生モノのプロフェッサーは、武蔵大学社会学部メディア社会学科の小田原敏教授である。
まず、「メディア社会学」とはいったいどんな学問分野なのか?
その根源的なあたりの説明からお願いしてみた。

「いまやメディアといっても、テレビや新聞・雑誌ばかりでなく、インターネットやゲーム・携帯電話関連のコンテンツまで非常に多彩になっています。それらが人間社会にどう組み込まれ、どう機能しているのか? これを探求する研究分野です。またメディアと社会の関係(あるいはメディアと人間の関係)について探求する分野でもあり、いろいろな学問領域とメディアとが組み合わされた学際的な研究分野だとも言えます」

ここで武蔵大学メディア社会学科の特徴については、1年次の入学早々から少人数制の基礎ゼミ開講だと語る。
若い学生たちの伸びしろに懸けた、実のある教育指導が武蔵大学メディア社会学科では日々行なわれている。

「そこで個々の学生のニーズ(何について興味があるのか? 将来の進路希望は何か)などを教員が把握して、早い時期から学習・研究の方向付けがなされます。1年次のスタートから4年次の卒業までにどこまで伸ばして育てられるのか。そこが他大学との競争だと思って懸命に指導しています」

ところでプロフィール欄にもあるように、小田原先生はケーブルテレビ局勤務やCNNテレビ番組キャスターなどの豊富な経験をもつ。そんな先生が専門研究課題として取り組んでいるのは「メディア論」と「コミュニケーション論」だ。
その研究へのアプローチがとにかく非常にユニークなのである。

「メディアとは何か」をさらに読み解く

新装なった武蔵大学10号館

最近は、脳生理学などの知見を利用しながら、「メディアとは何か」をさらに読み解くべく研究に挑んでいる。

「最近の脳生理学では、『ミラーニューロン』と呼ばれ、鏡のように外界刺激を映しとる神経の研究があります。メディアでの体験は擬似であり仮想にすぎない――などと言われてきましたが、実際には、この神経は実体験と等価だとして受け取っています。そういう意味で、メディアによって我々が日々体験していることはリアルな現実なのです。ですから、メディア研究はミラーニューロン研究と表裏の関係にあるのではないか――という考えも成り立つと考えているわけです」

10年ほど前、小田原先生は在外研究で訪れたカナダでこんな発見をしたという。

「当時すでに日本の大学生の大半が携帯電話を持っていました。ところがカナダの大学生の間では携帯端末はほとんど普及していませんでした。この日加の差異はなんに由来するのか? 当時ヒトのゲノム解析が盛んになされ話題となっていました。その過程で『不安遺伝子』というのが発見されました。この遺伝子の保有率が人種によって違うというのです」

日本人などモンゴロイドのほうが、カナダ人(多くは非モンゴロイド)より不安遺伝子を持つ人が多いらしい。
とすると、それにより日加におけるメディアコミュニケーション性格の違いを説明できる可能性も出てくる。

さらに、最新の地質学・生物学の知見からの考究もある。
約6500万年前の「K/T境界」(中生代と新生代の境目に相当する地質年代区分)から大量の恐竜の骨が出土し、この時期に恐竜が大絶滅したことを示していることは高校生の皆さんも地学の授業などで習ったはず。

「繁栄を誇っていた占有生物種が、ちょっとした環境変化で大絶滅を地球史上何度も繰り返してきたことが、地質学の研究成果で分かってきました。このようなことが人類にも起こり得ることを知ってしまうと、その急激な環境変化への対応を考えねばならなくなります。もはや世代交代で形質変化をしていく単純な進化などでは対応できない。なので、前世紀から電子メディアが急速に使われるようになり、大量の知の共有でヒト絶滅への対処をしようとしている――まぁ、これはまだ仮説段階ですけれどね(笑)」

このようにユニークな論点を展開していく小田原先生のメディア論は、非常に興味深く飽くことがない。
そのメディア論に懸ける信念はといえば、次のような研究方法こそが一番ふさわしいと思って研究しているという。

「メディアの本質に行き着くためには、いろんな研究領域の成果を利用しながら、その総合知として学際的に理解していくべき」

研究コンセプトは「解明困難だが面白い」

キャンパス内ながれる濯(すすぎ)川

武蔵大学メディア社会学科の専門ゼミ演習は3年次から始まる。
小田原先生は、基本的に入ゼミ希望者は全員受け入れる方針を示す。
今年度(10年度)は18人を受け入れた。

「どうやら適正規規模は10人前後までのようですね(笑)。さすがに今回はちょっと多すぎました」

そう笑う小田原先生だが、これも人気ゼミゆえのことだろう。
小田原ゼミにおける基本的な研究コンセプトは、「解明するのは大変だが面白いテーマ」だという。
毎年度4テーマほどが設定され、3年次ゼミ生が1年間かけて討議しながら解明していく。

「研究テーマの設定はコンペ方式を採用しています。ゼミ生全員から候補をいくつも出させて、そのなかから全員投票で決めています。選ばれる具体的なテーマは、一見すぐに解明できそうなのに実はなかなか本質にたどり着かないというものが多いですね」

ちなみに今年度の研究テーマは以下の4題である。
いずれも取り組みやすそうに見えて、そのくせ一筋縄ではいかない難題ぞろいと言うほかない。

(1)ディズニーランドという空間【その場がもつモードや規範について】
(2)「熊」が「クマさん」になるとき【凶暴な熊が縫いぐるみのクマさんに変化する仕組みについて】
(3)恋愛シミュレーションゲームとは【実在しないキャラクターに恋愛感情をもつことについて】
(4)美人の研究【美人と我々や社会との関係や構造について】

なお、卒業にあたっては卒業論文か卒業制作のどちらかの提出が義務づけられる。
また武蔵大学社会学部では、正規科目とは別に「社会実践プロジェクト」という活動が教員によりサポートされている。
「公共広告CM学生賞」出品用の公共CM制作や、ケーブルテレビ(J:COM)放送用の番組制作なども可能で、1・2年生を 中心に多数の参加がある。

ここでも小田原先生の豊富なメディア現場での実体験が、指導に大いに生かされる。
あらためて学生たちへの指導方針については次のように話してくれた。

「まず卒論研究では、自分たちのメディア印象論を述べるだけでは不十分です。きちんとデータをとって、実証性と客観性に裏打ちされたものでないと学術的には通用しません。一般的にもメディア研究では川面の現象にとらわれる傾向があります。しかし、その底に流れているものを独自の視点で見る努力を惜しんではなりません」
「2年次の制作実習については、番組作品などを視聴者として見ているだけでは分からない制作側の実際を体感してほしい。とくにメッセージを込めたメディア表現をすることの難しさをぜひ体感してもらいたいと常に思っています」

ますますIT化・メディア化する現代において、「ゼミの武蔵」をうたう学園内でまさにピッタリと具現化しつづける一生モノのゼミといえよう。

こんな生徒に来てほしい

メディアとか社会一般に関心のある人ならメディア社会学科に向いています。
また、興味の方向が多様でひとつに絞れないという人でも歓迎します。
この学科のもつ学際的ないろいろな知見に触れることで、充実した4年間を経験できると思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。