早稲田塾
GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
法学部 政治学科

関根 政美 教授

せきね・まさみ
1951年神奈川県生まれ。’74年慶應義塾大学法学部政治学科卒。’76年同大学院修士課程法学研究科政治学専攻修了。’79年同大学院博士課程社会学研究科単位取得退学。’79年慶應義塾大学法学部政治学科講師。’84年同助教授。’89年より現職。この間’79年豪ニューサウスウェールズ大学留学。’89年豪キャンベラ日本大使館専門調査員。
主な著作に『多文化主義社会の到来』(朝日新聞社)『エス二シティの政治社会学』(名古屋大学出版会)『マルチカルチュラル・オーストラリア』(成文堂)などがある。
「関根政美のホームページ」のアドレスはコチラ →
http://fs1.law.keio.ac.jp/~sekine/

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「多文化主義」オーストラリアに学ぶ政治学

関根研究室の入る三田「研究室棟」
南側から見る完成間近の「南校舎」

慶應義塾大学法学部政治学科の関根政美教授のご専門は「社会変動論」と「比較文化論」。
これらの学問カテゴリーにおいて、多文化主義を標榜する大国オーストラリアをテーマに研究している。

そもそも関根先生は、わが国でのオーストラリア研究の端緒を開いたパイオニアである。
いまもその第一人者として衆目の一致するところにある。

「70年代後半から日本とオーストラリアとの貿易は拡大の一途でした。それに伴ってオーストラリアでは日本研究が盛んになっていました。ところが日本側におけるオーストラリア研究は非常に冷めたものでした。そんなときオーストラリア政府の招きで同国大学に留学する機会を得まして、それならば、と研究してみることになったわけです」

関根先生はこの研究に入ったいきさつをそう語る。
おりから同国は「白豪主義」(白人優越思想)の人種差別撤廃を宣言していた。
白豪主義を廃したオーストラリアは、アジア諸国などから積極的に移民や難民を受け入れていく。
そして「多文化主義」への道を力強く歩むことになる。

「この多文化主義は80年代以降世界的な潮流にもなってきています。ただ先進国において、日本だけは移民や難民の受け入れに消極的で、ひとつの文化ひとつの社会に固執してきました。そんなことでは数年のうちに大変なことになると私たちは盛んに警鐘を発したのですが……」

少子化対策なども後手となる中、ついにGNP世界第2位の地位も中国にあっさり抜かれてしまう。

「好況のときには外国人労働者を受け入れながら、不況になるとリストラして知らん顔――これでは多文化主義国家への道のりは遠いですね。多言語・多文化の人々をオーストラリアがどう国としてまとめ上げたのか? そうした先進事例を手本にしながら、日本も早くシステム化をめざすべきです」

単純労働にしろ医療・福祉分野にしろ、外国人を受け入れるということは、定住化・永住化を見据えた中長期的なシステム構築が図られてこそだと語る。

世界先進例を日本政治システムに反映させていく

北側から見る完成間近の「南校舎」
慶應義塾大学「図書館旧館」

ついで関根先生が在籍する慶應義塾大学政治学科についてその特徴を語っていただこう。

「本学政治学科には専任教員が40人近くおります。これは世界的にみても有数の規模といえます。他大学の政治学科が専門店だとすれば、本学はデパートといっても良いでしょう。デパートですから政治学について何でも学べます」

こう言い切れる大学は案外に少ないとも強調する。
慶應義塾大学政治学科は5つの専門領域で構成される。
政治思想と日本政治・国際政治・地域別政治・現代政治社会論の5つである。

「ここでいう地域とは、アメリカやヨーロッパ・アフリカ・ロシア・中国・東南アジアなど地域別の政治のことです。学ぶ側にとって選択肢が豊富で、しかもそれぞれに専門の教員がおります。また各教員のあいだで自然に互いに鍛えられ、それが良い意味での競い合いになっています」

さらに、政治学を学ぶことの意義について関根先生はこう話す。

「世界各地域の政治について知って、それを日本の政治に反映させること――これに尽きますね」

その慶應義塾大学政治学科の専門ゼミ演習は3~4年次学部生が対象である。
関根ゼミで受け入れているゼミ生は例年15~20人ほど。

「1万字論文」熱血ノックの嵐に君は耐えられる?

三田周辺の町並み。奥に東京タワー

その選抜方法がとにかくユニーク。
なんと、入ゼミ選抜のために1万字の論文提出を求めるというのだ。
その論文を提出した人だけが面接に進むことができる。

「わたしは卒業論文の作成を最重要に考えていますから、まず論文を書く能力の有無を問います。この先どんなことを学びたいかをテーマに、論文書式に則ったものを提出するのが条件です。面接は4年次ゼミ生といっしょに行ないます。先輩ゼミ生を面接員にするのは、入ゼミ希望者に関する情報を彼らの方がいろいろ持つと期待しているからです(笑い)」

こうして厳しい難関を乗り越えて選抜されたゼミ生たちは、「国際社会学」「グローバル社会変動論」「オーストラリア研究」の3つから希望するテーマに関連するものを選んで研究していく。
ただ残念なのは、関根先生が力をいれる「オーストラリア研究」に手を挙げる人が少ないことだという。

「オーストラリア研究の人気がないということでは決してないんです。ただ、豪国に関する書籍や論文などの日本語文献が少ないため、どうしても英文で書かれた1次資料に当たらなければならないのを、皆嫌うのだと思われます」

また入ゼミ選抜での1万字論文については、ゼミに入った後も続けられて関根ゼミの名物的な存在ともなっている。

「3年次の夏合宿までにも1万字論文を書いてもらいます。さらに三田祭で発表するグループ研究に関するものでまた1万字、4年次春と夏にもさらに1万字ずつ論文を書いてもらいます。これらを合わせると4万字の卒論がほぼ出来あがっているというわけです」

ただし、これを達成するためには、最初から卒論テーマが設定されていることが必要条件となる。
あらためて学生たちに対する指導方針についてはこう語る。

「論理的に物事を見通す能力を身に付けて、長い文章を難なく書けるようになってもらう――そのことに尽きますね。その場その場での対応ではなく、じっくりと考え続けていく。それも1万字レベルの論文を書けるように。長い文章が書ければ、短いビジネス用の文章など必然的に書けるようになりますから」

こんな生徒に来てほしい

じつは、人生においてじっくり考えられる時期というのはそんなに多くはありません。
大学生の4年間は本当に貴重なのです。
きちんと考える大学生活を送りたい――そう考える人が来てくれたらいいですね。
21世紀まだまだ変化の激しい時代が続きそうです。
そんな時代環境だからこそ、じっくり考える力がいま求められていると思っております。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。