早稲田塾
GOOD PROFESSOR

千葉大学
法経学部 経済学科

内山 哲彦 准教授

うちやま・あきひこ
1971年東京生まれ。’01年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。’01年千葉大学法経学部経済学科専任講師。’04年同助教授。’07年同准教授(名称変更)。
著作に『バランスト・スコアカードによる戦略実行のプレミアム』(共訳・東洋経済新報社)があるほか、論文多数。
「内山哲彦研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.le.chiba-u.ac.jp/~uchiyama/index.html

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管理会計研究から企業の姿が見えてくる

内山研究室の入る「法経学部棟」
千葉大学西千葉キャンパス点描

今週ご紹介する一生モノのプロフェッサーは気鋭の会計学者である。千葉大学法経学部経済学科の内山哲彦准教授がその人。まずは、その所属する千葉大学経済学科の特徴から伺おう。
法経学部経済学科は、学科専任教員が約30人(学生も1学年約170人)もいて、独自カリキュラムが組まれている。

「ですので他大学の経済学部に遜色のない内容と自負しています。この学科の特徴は、純粋な経済理論そのものの教員ばかりでなく、会計や経営・マーケティングなど実学的な商学系や経営系を専門にする教員も多数おり、その扱う間口が広いということです」

さらに千葉大学経済学科には3年次学生を対象に「フィールド・スタディ」という独特の制度も用意されている。

「3年次の夏休みを利用して国内外の現場フィールドに出てもらいます。国内組はいわゆるインターンシップ制度で、千葉県内を中心とした自治体や企業での実体験を、海外組は海外の大学を訪問したり訪問国の経済に関するフィールド調査などをしたりするものです」

いずれのフィールド・スタディも、参加した学生たちからは大好評だという。「机上の経済学」というありがちな制約を乗り越え、国内外の実社会でのフィールド体験が経済学生たちを大きく育てていく。

個々の企業経営と業績評価の仕組みに迫っていく

学術交流ホール等がある「けやき会館」
千葉大学生思索の森「かたらいの森」

内山先生の専門分野は企業の「管理会計」である。あまり聞きなれない分野だが、その意味から説明していただこう。

「現代の企業による経営活動の結果は、会計データによって表わされます。この会計には2種類あって、企業外部に向けて発表する『財務会計』と、企業内部に向けて経営管理のために作成する『管理会計』の2つです。わたしが研究しているのは後者の管理会計になります」

この管理会計は外部に発表する必要がないことから、公式のフォーマットがあるわけではない。つまり各企業はそれぞれ独自の管理会計マニュアルをもっていて、この世に存在する企業の数だけの会計方法があることになる。そのため管理会計の調査研究は非常な困難が付きまとう。あえて内山先生がその困難に踏み入って管理会計に興味をもったのは大学生のころだという。

「企業の内部組織における業績評価の仕組みについて関心をもったのです。とくに従業員にかかわる業績評価が企業活動に及ぼす影響、その関係の解明に惹かれました。それで業績評価と報酬との関係について調査研究するようになったのです」

やがて前世紀末からアメリカ発「グローバルスタンダード」が喧伝され、企業の業績評価に成果主義が持ち込まれるようになる。そしてわが国の産業界や会計制度はそれに席巻されていく。

そのブームの頂点は2000年ごろであった。そのなかで日本の企業にも早くから成果主義を取り入れてきたところと、当時のブームに押されていわば無計画に導入した企業の大きく2つのタイプがあったという。

「前者の企業は、掲げた経営目標を達成するために成果主義の制度を巧みに絡めているところに特徴がありました。それに対して後者の企業には深い意図は見られません。ただ人件費を抑えたいとか、他社でもやっているからなどの理由でして、やはりこういうケースは効果が長続きしません。企業風土を根本から変えるくらいの覚悟がないと成功はしないと思います」

自らの調査研究の成果をもとにそう語る内山先生。先にも述べたように、管理会計は社外に公表する義務のない会計である。その調査研究は多くの企業に質問票を送ったり、一社一社を地道に訪ね歩いては協力を要請してまわる。そんな苦労の積み重ねがあって初めてなるものだ。

「各企業の管理会計をみていくと、表面的な計算方式は同じであっても、そこに入れる数字は各社まちまちですから、それを外部から読み取ることは非常に難しくなります。これに人事考課などが加味されたりすると、さらに見えにくくなってしまいますね」

管理会計研究の苦労を語る内山先生だが、最近はインタンジブルズ(無形の資産)の人的資産などにも研究の範囲を広げている。この無形の資産をも含めた管理会計の視点から、ニッポン企業の経営活動を見ていきたいとの意欲も語る。

自ら設定して具体的な企業・業界分析に取り組める

東京証券取引所見学での集合写真
千葉大学図書館は増改築の工事中

千葉大学経済学科の専門ゼミ演習は3~4年次学生が対象となる。内山ゼミは、定員8人のところに例年20人ほどの応募がある人気のゼミだ。入ゼミ選抜は自己PRのエントリーシートの提出と、内山先生による面接である。その面接のポイントは「本人の問題意識とやる気の有無」だという。

3年次のゼミでは管理会計についての文献の輪読が1年間続く。これと併行して、毎年12月に行なわれる首都圏4大学でのインターゼミがある。そのためグループ研究から発表準備・発表へと、これらに半年間かける。内山ゼミが一番の活気に包まれる時期でもある。その具体的な研究テーマについては企業や業界の分析が多いという。

また4年次ゼミ生は1年間を卒業論文の作成に充てる。卒論テーマは企業の経営から会計の範囲であれば基本的にゼミ生の自由という。この卒論の中間発表会においては3年次ゼミ生も出席するのが決まりとなっている。

「3年次のゼミ生が中間発表を聞くことで、具体的な研究テーマの立て方から問題設定・資料収集・論理展開などにふれてもらいます。そして次年度に自ら研究する卒論の進め方の参考にしてもらおうという狙いもあります」

ゼミ生たちへの指導方針については、自分で問題設定ができるようになって、その解決の道も自分で探れるようになること――これが指導の基本だという。
「そのためにゼミの運営からインターゼミ・卒論までその大半をゼミ生の自主性に任せています。自ら問題を設定して解決への道を探っていく。それが社会に対してどんな意味をもつのか? さらにどんな貢献になるのかまでも意識してくれたらと思って指導しています」

あらためて千葉大学生の印象について内山先生はこう評価する。

「総じておとなしく、真面目で礼儀正しい学生が多いですね。それはそれで結構なのですが、もう少し弾けるような人がいても良いような気もしますね」

こんな生徒に来てほしい

まずは、いったい大学で何を勉強するのか? 自分は何に興味があって、何を学びたいのか。これらをきちんと固めてから、大学なり学部なりを選んでほしいですね。受験生のみなさんは、目の前の受験科目と格闘する苦しい日々が続いているかと思います。でも、その格闘が自ら希望する未来につながっていると思うことが出来れば、苦しみも少しは和らぐのではないでしょうか。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。