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GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
東京外国語大学 外国語学部インドネシア語専攻

青山 亨 教授

あおやま・とおる
1957年兵庫県生まれ。’83年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。’92年オーストラリア・シドニー大学文学部インドネシア・マレー学科博士課程修了。’00年鹿児島大学多島圏研究センター教授。’03年東京外国語大学外国語学部教授。’09年より現職。多言語・多文化教育研究センターセンター長。
主な著作に『岩波講座 東南アジア史 2』(岩波書店)『ラーマヤーナ の宇宙:伝承と民族造形』(春秋社)『地域のイメージ(地域の世界史 第2巻)』(山川出版社)などがある(著作はいずれも共著)。
「青山亨研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aoyama/

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インドネシア「前近代史」への接近

青山研究室の入る研究講義棟
正門に建つ「TUFS」のオブジェ

東京外国語大学の学びのスタイルは、1~2年次に自ら選択した専攻語を徹底的に学び、3~4年次でその習得した言語能力を用いて「言語・情報」「総合文化」「地域・国際」の3コースから選択して専門課程を学ぶ(ほかに大学院に連動した「特化コース」もある)。

今回紹介する青山亨先生は、1~2年次学生にインドネシア語の教授とインドネシアについての「地域基礎」を講義し、3~4年次学生には総合文化コースで「アジア文化論」の講義とゼミ演習の指導をしている。そこでまず、インドネシア語を学ぶということの意義・意味からレクチャーしていただこう。

「インドネシアは東西5千キロを超える広大な地域に2億3千万人もの人々が暮らしている東南アジア最大の多民族国家です。その公用語はインドネシア語で、国内のどこに行っても通じる便利な言語です。また日本人には習得しやすい言語のひとつでもあります。その理由はローマ字表記であること、声調(イントネーション)がないこと、母音の使い方が日本語に近いことなどが挙げられます」

またインドネシア語は単語の語幹に接頭辞や接尾辞をつけて派生語をつくっていく特徴があり、基本になる単語をひとつ覚えることで派生語の世界が大きく広がる。さらに欧米語のような活用や性・数・格もない。そのことからも日本人にはなじみやすい言語だとも語る。

そんな青山先生が3~4年次の総合文化コースで講じている「アジア文化論」は、東南アジア地域が欧州の支配を受けはじめる16世紀以前におけるアジア文化論を対象としてとしている。

仏教・ヒンドゥー教からイスラム教への変容過程

初夏の東京外国語大学キャンパス点描
東京外国語大学キャンパス内は緑豊か

青山先生のご専門は、「東南アジア前近代史」「東南アジア宗教史」それに「古ジャワ語文学」である。

「前近代における東南アジア地域の文化は、インドの影響を受けて、宗教についてもヒンドゥー教と大乗仏教が占めていました。その後この地域の大陸部を中心に上座仏教、島嶼部を中心にイスラム教が入ってきて栄えるようになります。
わたしの関心は、外から新しい文化を取り入れる時、その地域はどのような変化の過程をとるのかというところです。古いジャワ語で書かれた仏教叙事詩に『スタソーマ』(Sutasoma)があります。物語の舞台はインドなのですが、そこに示された仏教観はインド仏教を換骨奪胎した東南アジア独自の密教的な宗教観に変容されています。
それはヒンドゥー教でも同じことが言えます。さらに、そのあと東南アジアで広まることになるイスラム教についても同様に言えるのです」

宗教は、受容される地域の社会や文化によって元々のものから変容していく。これはインドネシアにおいても例外ではない。

「最近の研究テーマは、イスラム教徒が大半を占めるジャワ島に残る長編叙事詩『ラーマヤーナ』変容についてです。本来『ラーマヤーナ』はヒンドゥー教の叙事詩だったのですが、いまやイスラム教徒であるインドネシア人を支える世界観の一部にさえなっています。その変容過程なども研究テーマにしています」

2004年、インドネシアはスマトラ沖巨大地震と大津波の被害に見舞われた。青山先生ら東京外国語大学の研究者たちは、スマトラ島アチェに収集されていて被害に遭った古いイスラム教の写本の調査や修復研修・収蔵品カタログ作成などを現地の研究者とともに行なった。こうした地道で貴重な復興支援は、いかにも東京外国語大学らしい活動ともいえよう。

ゼミ演習は卒論を書ける実力養成のためにある

最寄りは西武鉄道多摩川線・多磨駅

東京外国語大学学部生は3年次に進学すると3つのコースに分かれて専門課程を学ぶ。それといっしょに専門ゼミ演習も3年次から始まる。

「わたしの専門はインドネシア前近代ですが、ゼミでは現代のインドネシアおよび東南アジアの文化全般について扱っています。これはゼミ生たちの希望によるものです」

ゼミ生の受け入れは例年10人前後。いまのところ入ゼミ希望者全員を受け入れているが、授業で総合文化コースか地域国際コースのいずれかを受講していることが条件になっている。

「ゼミ演習というのは4年次の卒業論文を書くために存在するというのが私の考え方でして、3年次はインドネシアに関する文献の講読と卒論を書くための技術的な方法論の習得に充てることになります。その方法論とは(1)卒論を書くための研究の方法(2)その研究のための考え方と発想(3)論理的な日本語表現技術の獲得――が3つの柱になります」

こうした方法論については、青山研究室のURLのなかの「授業関係のお知らせ」(3年次ゼミで学ぶこと)にさらに詳しく解説されているので、興味のある人はぜひ閲覧してみてほしい。ちなみに東京外国語大学では卒論に代えて、卒業研究(履修した専攻語を用いた絵本の作成など)での提出でも認められている。
次いで青山先生の指導方針について伺った。

「『考える力』と『発表する力』を身に付けてもらうことですね。考える力というのは、現実を見て問いを探し出し、その問いの答えを導き出すことで、これは卒論の基本ともなります。発表する力というのは、そのプロセスを分かりやすい日本語で表現していくことです。この2つが十分にできて初めて自らの考えが他の人たちに理解してもらえるわけです」

最後になったが、青山先生がセンター長を務める東京外国語大学の「多言語・多文化教育研究センター」についても語ってもらった。

「いま日本に住んでいる在留外国人は、国籍別で190ヵ国以上、約220万人います。つまり21世紀の日本は急速に多言語・多文化という状況に向かっているのです。こうした状況に対応できる人材の育成は東京外国語大学に課せられた使命のひとつで、その中心になるのがこのセンターです。新しい言語の習得とともに、在日外国人が抱えている問題を解決していける人材の養成などにも力を入れています」

【お知らせ】

これまで東京外国語大学は外国語学部だけの単科大学として長く教育指導がなされてきた。このほど2012年度から「言語文化学部」と「国際社会学部」(いずれも仮称)の2学部制が敷かれることになった。今回紹介した青山先生は言語文化学部の所属となり、講義・ゼミともこれまで通りの内容が踏襲される予定だ。新年度からの学部改編については、同大学のURLにアクセスするか、大学入試課(電話042-330-5179)まで問い合わせを。

こんな生徒に来てほしい

いまの日本の若者は内向き傾向の人が多いといわれています。ただ東京外国語大学では、学んでいる内容の性質上からか、そのような学生はまず見当たりません。海外留学も相変わらず盛んです。日本の外に出てみると初めて分かることがたくさんあります。「地球はひとつ」ということも理解できるはずです。世界に出て行くためのステップとして、この大学で学んでいただけたらと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。