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GOOD PROFESSOR

國學院大學
神道文化学部

黒崎 浩行 准教授

くろさき・ひろゆき
1967年島根県生まれ。’92年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。’96年大正大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。’95年東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員。’97年國學院大學日本文化研究所専任講師。’03年同大學神道文化学部専任講師。’07年より現職。
主な著作に『社会貢献する宗教』(世界思想社)『神道はどこへいくか』(ぺりかん社)『プレステップ神道学』(弘文堂)などがある(著作はいずれも共著)。
黒崎先生が主宰する「クロサン」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.capnoir.jp/

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「宗教界からの情報発信」の研究者にして実践者

黒崎研究室が入る若木タワー
國學院渋谷キャンパス西門

國學院大學神道文化学部は「神道文化コース」と「宗教文化コース」の2つのコースからなる。今週の一生モノプロフェッサー・同学部准教授の黒崎浩行先生には、まずこのコースについて説明していただこう。

「國學院大學の役割のひとつに神道神職の養成というのがあり、それを担っているのが『神道文化コース』です。もうひとつの『宗教文化コース』は、神道をふくめた日本文化や、神道以外の宗教などについて学びたいという一般の学生のためのコースになっています」

したがって神道文化学部は神道信者以外にも門戸が開かれ、誰でも学ぶことができる学部である。なお同学部の2コースはどちらのコースの科目でも自由に履修できるようになっている。

「近年この国をめぐる情況のひとつとして、神道文化や宗教などに関心を寄せる若者が増えていることがあります。本学神道文化学部の受験者数も年々増加しております。スタジオジブリの一連の映画作品や、『らき☆すた』に代表される漫画やアニメ、さらにパワースポットなどのブームに影響され、日本の民俗信仰に興味をもって入学してくる人も多いようです」

前世紀末バブル崩壊後この国の「失われた○年」状態は世紀をまたいでも浮揚する兆しはいっこうに感じられない。小泉・竹中路線に代表されるように「グローバルスタンダード」が声高に叫ばれる一方で、福祉予算なども削られ「自己責任」が求められる苛酷な社会風潮が続いている。

こうしたなか2201年11月から「宗教文化士資格」(宗教文化教育推進センター主催)が新設される。國學院大学神道文化学部における受験資格取得のためのカリキュラムについては「宗教文化コース」のほうに組まれることになるという。

3.11東日本大震災後ニッポン宗教はどうあるべきか

國學院渋谷キャンパス点描
國學院渋谷キャンパス点描

黒崎先生自身の専門は「宗教学」。なかでも「宗教と情報・コミュニケーション」をテーマに研究してきた。

「わたしがこの研究を始めたとき、ちょうどインターネットが普及しはじめたころでした。そこで、宗教とインターネットとはどういう関係になっていくのかに興味をもちまして、幾人かの研究者とともに共同研究をスタートさせました。98年ごろのことです」

このうち黒崎先生は「神社とインターネットとの関係」についての調査を担当することになるが、そこにひとつの論争がわき起こる。

「ある神社がパソコン画面を使った『バーチャル参拝』なるものを始めたのです。これに対して、パソコンを操作するだけで神社に参拝したと認めても良いのかという声があがり、関係者のあいだで激しく争われることになります。
このときわたしは賛成・反対双方の当事者に取材してそれぞれの意見を調査しました」

その結果は反対意見が圧倒的に多かったようだ。ただ、たとえバーチャルであっても、神社離れを起こしている若者たちが、これをキッカケに神社に目を向けてくれるのであれば意味はあろうという意見もあった。それも一理あると黒崎先生も感じているという。

さらに記憶に新しいが、2011年3月11日、東日本の広い地域が大地震と大津波に襲われ、未曾有の被害がもたらされた。長年の「ニッポン原発神話」をも打ち砕くことになる「3・11東日本大震災」である。

「この大震災で、地域社会における神社の役割が改めて問い直されることになったと思います。わたしたちも震災直後の現地に入って調査をしました。
神社は高台に設けられているところが多いため、その大半が津波被害を免れていました。そうした神社のなかには被災者を受け入れたり、積極的に救援活動をしていたりするところもありました。しかし、そうした地元神社や神職の活動は、マスコミに取り上げられることはあまりありませんでした」

ところが、インターネット上では神社関係者らが発信する被災者や救援に関する情報が盛んに飛び交っていたのだ(むろん神道以外のほかの宗教関係者からの情報も盛んに流れた)。

「こうした動きを受けて、大阪大学の教授のよびかけで『宗教者災害救援ネットワーク』が立ち上げられました。宗教組織や宗教人からもさまざまな情報が発せられるようになりました。
わたしもこれに参加して、被災地にある社寺の被災の状況や、各社寺の被災者受け入れの様子がわかるマップを作成して発信しています。宗教界と一般市民のきずなを深めるために、インターネットが果たす役割の大きなことを実感しています」

スピリチュアル宗教ブーム、その拠って立つところは

若木タワー17階からの渋谷展望

國學院大學神道文化学部の専門ゼミ演習は3年次から始まり、3、4年次合同授業で行なわれる。同学部では、学生たちは各教員均等に割り振られ、各ゼミとも1学年15人前後、合わせて30人ほどのクラスになる。黒崎先生のゼミも同様である。ゼミのテーマは「大衆文化と宗教」である。

「昨今の漫画やアニメなどの大衆文化のなかに宗教やスピリチュアル的な要素が含まれるようになり、そうしたところから神道や宗教に関心をもつ若い人が増えています。その拠って立つところは何か? そうした考察がゼミの中心テーマとなっています」

こうした神道や宗教のあり方について、自らのことを振り返りながら全体で議論して、この状況を理解し評価することを繰り返していく。

「自分の意見を発表し議論するなかで、学生個々の宗教観が浮かび上がってもきます。たとえば日本人には無宗教な人が多いといわれますが、意外に宗教的な考えをもって生活していることが分かってくるのです」

こうした2年間の研究の成果はそれぞれの「演習論文」としてまとめられる。あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「いまの大学教育機関ではコミュニケーション能力が求められるようになっています。かつての大学には、ひとりで図書館にこもってコツコツと学ぶという方法もあり得ました。それもやはり大事ですが、いまはそれだけでは済まなくなっています。
ですから議論の場に積極的に参加して、コミュニケーション能力を高める努力が必要です。大学での4年間は本や論文などのテキストをよく読むとともに、現場に出て参与観察するなどして一生モノの『知』を得てほしいとも思います」

こんな生徒に来てほしい

神道や宗教に関心のある人、これからの日本における宗教の文化的役割について考えてみたい人、また文化の継承について関心のある人なども入ってくれればいいと思いますね。
いまの学生について基礎学力の低下ということが言われています。この神道文化学部で学ぶためには、読み書きのリテラシー(とくに古文や漢文を読む能力)が備わっていると見える世界が違ってきます。その力は高校までのうちに備えておいてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。