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GOOD PROFESSOR

学習院大学
法学部 政治学科

阪口 功 教授

さかぐち・いさお
1971年奈良県生まれ。’94年筑波大学第三学群国際関係学類卒。’00年米エール大学国際地域研究センター客員研究員。’01年東京大学大学院総合文化研究科国際社会学専攻博士課程単位取得退学。’04年博士(学術)号取得(東京大学)。’04年金沢大学法学部非常勤講師。’05年学習院大学法学部政治学科助教授。’06年より現職。
主な著作に『地球環境ガバナンスとレジームの発展プロセス』『地球環境レジームの形成と発展』(共著・前著ともに国際書院)『ヒトと動物の関係学第4巻野生と環境』(共著・岩波書店)などがある。
「阪口研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20050137/index.html

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地球環境問題への社会科学的アプローチ

阪口研究室のある東2号館

今回登壇ねがう一生モノのプロフェッサーは、地球環境ガバナンスのスペシャリストとして知られる、学習院大学法学部政治学科の阪口功教授である。まずは学習院大学政治学科の特徴から話してもらおう。

「政治学はもちろんですが、これに加えて国際関係・地域研究や社会学・マスメディア研究も学べるところが一番の特徴です。ですから非常に多彩で豊富な科目群が用意されています。
もうひとつは極めて熱意があってモチベーションの高い学生のために、特別選抜の『FTコース』が用意されていることです。これは学部を3年間で修了することができる制度で、修了後大学院に進むこともできます。ただしこの制度を利用するとなると、徹底的な勉強漬けの3年間になりますから、その覚悟は必要ですが……」

さらに同政治学科はあまり大所帯ではないため、教員と学生の距離が近く、親密な関係が保たれているのも特徴のひとつとして挙げる。
そんな阪口先生のご専門は「地球環境ガバナンス」と「グローバルガバナンス」である。まず地球環境ガバナンスの話から伺おう。

「地球環境問題は国境を越えて存在します。かつて高度成長期においてわが国も公害問題で苦しんだことがありますが、国内法を整備することで一応の解決が図られました。ところが国境を越える環境問題については、いまだ『世界政府』が存在しているわけではありませんから、強制力をもった法による解決という道はあり得ません」

したがって現下の地球環境問題をめぐる状況は、非常にアナーキーな状態にあるというのが阪口先生の見解である。
現在、国境を越えて地球環境を脅かしている主な問題点を挙げてもらうと――

(1)フロンガス排出によるオゾン層の破壊
(2)二酸化炭素等の温室ガス排出による地球温暖化
(3)熱帯林の破壊に代表される生物多様性の減少
(4)マグロの乱獲に代表される国際漁業資源の枯渇
等々になるという。

利害関係複雑な環境問題解決への方途を探る

JR目白駅側の目白キャンパス西門

こうした問題についてどう解決をはかっていけばいいのか? それが阪口先生の目下の研究課題となっていく。

「いま挙げられた問題のうちフロンガス問題はほぼ解決に向かっています。これは最大の生産国と消費国がアメリカで、しかも米国民の多くが白人でオゾン層破壊による健康被害を受けやすいという事情があります。このケースでは、最大の当事国であるアメリカがリーダーシップを発揮することで解決に向け大きく前進しています。このような解決方法を『マーケット・ヘゲモニー』(市場覇権)による解決といいます」

かたや「マグロ問題」の当事国といえば我らがニッポン。この問題では、日本がヘゲモニーとしてのパワーを行使することで解決への道が見えてくるはずだと阪口先生はいう。
これに対して、地球温暖化問題は当事国が分散して利害関係も複雑で問題解決の方途が見つけにくい。

「実は一概に地球環境問題と言っても2つのケースがあります。大気環境や海洋環境のように、みんなの共有物が汚染されたり破壊されたりするケースと、熱帯林伐採などのようにそれぞれの国の領土内で起きている問題とになります。後者の問題は当事国の国内問題でもあるので、よその国は口出しできない事情もあります」

この隘路を打開する具体的な道については――

「トップダウンのアプローチでは、条約に貿易制限措置を組み込むことで、加盟しないでただ乗りしている国を排除する方法があります。ただWTO(世界貿易機関)の協定に抵触する場合もあって、実行が難しい場合もあります。

もうひとつはボトムアップのアプローチで、市民社会で直接問題解決を図ります。たとえば海外では魚の缶詰めなどには水産認証ラベル(MSC)が、木材製品には森林認証ラベル(FSC)が貼られたものが出回っています。このラベルは資源を持続的に管理していることをNGOが証明するものです。消費者がこのラベルの張られた商品を購入することで、資源の乱獲・乱伐が抑えられる仕組みになっているのです」

欧州で盛んなこういった認証ラベル運動も、わが国ではほとんど認知されていない。水産品や木材の大消費国である日本でこそ、広めなければならない運動だと阪口先生は語る。

一生モノの社会科学リテラシーを身につけよう

緑陰のなかの学習院図書館

学習院大学政治学科には1年次学生を対象にした基礎演習をはじめ、2~4年次が対象の特別演習、3~4年次を対象にした専門演習があり、充実した演習が同学科の特徴でもある。
ここでは阪口先生がご担当の特別演習と専門演習について伺おう。

「特別演習のほうは『地球環境ガバナンス』がテーマとなります。こちらは主に英語の専門文献をテキストにしていきます。前期では公共財の供給など理論を学び、後期には温暖化やオゾン・国際漁業・熱帯林などの個別的事例についてそれぞれ学んでいきます」

この分野における日本国内の大学では、最も進んだ内容の演習授業だと阪口先生は自負する。
もうひとつの専門演習のテーマは「グローバルガバナンス」である。

「こちらは分野横断的な統治についての問題を取り上げ、貿易から国際金融・人権・環境・安全保障などあらゆるテーマを検討していきます。ここでは複数の問題について横断的に検討していくため、学生たちの視野がどんどん広がっていきますね」

あらためて学生たちへの指導方針についてはこう語ってくれた。

「学問は実社会でも役立つものです。とくに因果関係分析により原因を探る社会科学的手法は職場でも家庭でも使えます。ですから大学の4年間をしっかり学ぶことで、普通の人より早く構造に気づいて世の中の見え方も違ってくるはずです。もちろんモチベーションをもって学んでいく――その意識の差によって学びの成果も大きくなることに気づいてほしいと思って指導しています」

真夏でも研究室における「ノーエアコン運動」と授業における「エアコン自粛運動」を長年つづけている阪口先生。

「環境問題を説きながらエアコンを使うわけにはいきませんよね(笑い)」

まさに見事なまでに節を通している一生モノのプロフェッサーである。

こんな生徒に来てほしい

バブル崩壊から(さらにリーマンショックに東日本大震災の追い打ちもあって)ずっとニッポン社会は全体的に元気がありません。生まれながら、成熟し豊かな日本で育ったいまの若者は、現状の狭い枠組みのなかで暮らすことに慣れ切っていて、将来に対するビジョンとか野心というものがほとんど見えてきません。
ところが今や世界全体の情勢を考えますと、そんなドメスティックな安定志向では生き延びられないことは明らかです。これからの時代を生き延びるためのバイタリティーと野心をもっと持ってほしいと思います。少々荒々しいくらいの批判的精神をもった若い人が来てくれたら嬉しいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。