早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京工業大学
理工学研究科

中島 章 教授

なかじま・あきら
1962年東京生まれ。’87年東京工業大学大学院理工学研究科無機材料工学専攻修士課程修了。’87年日本鉱業(現ジャパンエナジー)入社。’97年米ペンシルベニア州立大学大学院博士課程修了。’98年東京大学先端科学技術研究センター教官(’03年より客員研究員)。’00年先端技術インキュベーションシステムズ取締役研究所長。’03年東京工業大学大学院理工学研究科助教授。’09年より現職。’04年神奈川科学技術アカデミー(KAST)プロジェクトリーダー。材料技術研究協会討論会総合講演賞(’06年)。表面技術協会論文賞(’07年)。色材協会賞・技術賞(’09年)。日本セラミックス協会賞・学術賞(’10年)。
著作には『固体表面の濡れ制御』(内田老鶴園)があり、ほかに共著書もある。
中島先生らが主宰する「中島・松下研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.rmat.ceram.titech.ac.jp/

  • mixiチェック

「酸化チタン光触媒」「濡れ制御」研究のトップランナー

中島・松下研究室の入る大岡山南7号館
キャンパス正門の右に「100周年記念館」

「わたしの経歴を見ていただければ分かってもらえると思いますが、日本とアメリカの大学院で学んだわたしは、日本の大手企業とベンチャー企業で働き、大学の付属研究所で研究し、いまは大学の学部と大学院で学生指導をしています」

東京工業大学大学院理工学研究科の中島章教授はそう語り出す。

「こうした大小(あるいは内外)のいろんな組織に属してきた研究キャリアはかなり特殊ではないかと思います。このため多様な価値判断の基準や意思決定のプロセスの違いが理解できます」

これだけ異色のキャリアは東京工業大学でも珍しいようだ。そんな中島先生の学部での所属学科は工学部無機材料工学科である。まずはその無機材料工学科の内容から話してもらおう。

「無機材料というのは、金属や金属錯体(金属元素と有機物の化合物)を除く『無機固体物質』のことで、広くはセラミックスと呼ばれているものです。無機材料は組成や構造のバリエーションが豊富で、これから将来的にはますます有望な材料であると言えます」

ちなみに「無機材料」そのものを学科名として立ち上げているのは日本では東京工業大学だけだ。

「日本では唯一の学科で、世界的にも有数の規模を誇っております。各講座とも優秀な教員がそろっています。この学科が日本のセラミックス研究をリードし、世界と覇を競っていると言っても過言ではないでしょう」

さらにセラミックスには未だに解明されていない部分が多く、それだけに研究者にとって「宝の山」の世界でもあるとも語る。

物質表面エンジニアリングで「未知」を引き出す

新装なった東京工業大学附属図書館
東工大生いこいの芝生スロープ

そんな中島先生自身のご専門は「環境材料」分野だ。

「学科では無機環境材料講座の『地球環境材料分野』を主宰しており、材料科学の視点から、資源・環境・エネルギーに関連する様々な研究課題について取り組んでいます。その中でわたしは『酸化チタン(TiO2)』という光触媒物質を研究対象のひとつとしています」

この酸化チタンという物質は、紫外線を照射することでいろいろな性質を発現させることで知られる。

「紫外線の照射によって、たとえばその表面に『活性酸素』を発生させることができます。これによって(1)水や空気の浄化(2)有機物の分解(3)抗菌・防汚などを行うことが可能です。さらに水滴がたちまち濡れ広がる『超親水性』という効果もあります。これは水滴の付かない自動車ミラーなどに利用されています。
しかしながらそうした機能を効果的に得るためには、酸化チタン光触媒にただ紫外線を照射すれば良いわけではありません。光触媒としての機能を効果的に発現させるためには、それぞれの目的に応じた材料設計の知識とセンスが必要になってくるのです」

さらに中島先生は(酸化チタン光触媒の研究から発展して)「固体表面の濡れ制御」というテーマについても広く研究している。

「固体表面の濡れ制御については、特に『超親水性』の対極となる『超撥水性』という性質について詳しく研究してきました。これは水と固体との界面に空気を噛み込む状態をつくり、その上から水となじみにくい物質をコーティングすることで実現します。超撥水表面では、蓮の葉のように水がコロコロ転がります。この構造をナノレベルで制御してやると透明な超撥水表面が得られるのです」

超撥水表面には、流動抵抗を小さくすることによる大量の液体の効率移送(省エネ効果)や着雪・氷結の防止効果などへの期待も大きいらしい。こうした最先端研究のトップリーダーとして世界を牽引しているのが中島先生なのである。

これまで中島先生が扱ってきた諸現象は物質の表面で発現していることだ。それは、「環境材料分野」であると同時に「表面機能材料分野」における諸研究ということも意味する。

「固体表面をいろいろとエンジニアリングすることで、その物質がもつ性質を強く引き出したり、本来もっていない性質を付加したりすることも可能となります。そうした機能開拓についても我々が取り組むべき大きな研究課題になってきました」

「日本のセラミックス産業」を背負っていく

東工大大岡山キャンパス建物点描
キャンパス建物案内プレートが親切

東京工業大学工学部の学部生が、各教員主宰の研究室に配属になるのは4年次の春からとなる。中島先生の研究室にも例年5~6人の学部生が配属になってくる。国立大学工学系の研究室にしては多いと感じるかもしれないが、同研究室には中島先生のほかに松下祥子准教授や磯部敏宏助教も所属していて、それぞれ学生指導にあたっている事情もある。

「3人の教員が研究している専門分野は違うのですが、物質科学の視点から資源・環境・エネルギーに関連する課題を扱っていくという点では一致します。ですから学生の研究課題においてもこのメーンミッションを踏まえて、それぞれの教員が各自の専門分野から指導するよう努力しています」

東京工業大学無機材料工学科における学部生の研究室配属の振り分け、は学生同士の話し合いで決められるという。教員たちは一切ノータッチだ。さらに中島先生の研究室には独特の取り決めもあるらしい。

「まず個別の研究指導では、個別のミーティングか週間報告書の提出のどちらかを毎週の義務にしています。それに毎週1回開かれる全員参加のゼミもあります。こちらでは全メンバーが4週に1回のペースで日本語と英語とで研究報告をしてもらいます。それぞれが読んだ外国語論文の紹介もあって、こちらは6週に1回のペース。さらに国内学会での発表を3年間のうちに最低2回、国際学会での発表も最低1回は義務づけています」

なかなかに厳しいルールで、はじめは戸惑い気味の新メンバーもいることだろう。それが次第に慣れて一人前の研究者としてたくましく成長していくのだ。あらためて中島先生の指導方針については次のように語る。

「研究室の運営では、『切り替えの早さと集中力を出そう!』をモットーにしています。それぞれの研究については、フレキシブルな考え方とオリジナリティーをもつこと。また研究者としては、社会性と国際性を備えた人に育ってくれるよう指導しています」

そしてインタビューの最後にこう結んだ。

「本学は日本の工業分野を背負ってきた大学であるというプライドを大事にしたい。もし本学が世界との研究競争に負けてしまうと、日本の工業も世界に負けてしまう事態にも直結しかねませんからね」

こんな生徒に来てほしい

まず、どんなことに対しても「なぜだろう?」と自らの好奇心を向けられる人。さらに自然の理(ことわり)をどうにか探求してやろうという知的情熱をもち続けられる人。そんな有意な人が来てくれたら素晴らしいと思います。今どきありがちな、上からの指示がないと一歩も動けないというような人ではちょっと困りますね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。