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GOOD PROFESSOR

東京都市大学
都市生活学部 都市生活学科

岩村和夫 教授

いわむら・かずお
1948年兵庫県生まれ。'73年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程建築学専攻修了。'73年フランス政府給費研究生として渡仏。'74年在パリ設計事務所入所。'76年在アテネ(ギリシャ)設計事務所入所。'76年独ダルムシュタットに設計事務所を設立。建築設計・都市デザインに従事。'80年帰国。東京に「岩村アトリエ」を設立。'98年武蔵野工業大学環境情報学部教授。'09年校名改称により現職。'04年日本建築家協会副会長。'08年国際建築家連合副会長。国連UN-Habitat:World Habitat Award('01年)。日本建築学会賞(業績部門、'03年)。日本建築家協会環境建築賞('02年・'06年)。
主な著作に『建築環境論』(鹿島出版会)『自然な構造体』(訳著・鹿島出版会)『環境共生住宅A-Z』(共著・ビオシティ)『地球環境建築のすすめ』(共著・日本建築学会)『地球環境時代のまちづくり』(共著・丸善)などがある。
岩村先生が主宰する「株式会社岩村アトリエ」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.iwamura-at.com

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「3.11」が突きつける究極テーマ「人間の安全保障」

東京都市大学キャンパス内にある「総合研究所」
東京都市大学等々力キャンパス点描

さて岩村先生についての紹介に移っていこう。70年代の後半はドイツ国内に友人たちと共同して設計事務所を開設し、建築や街づくりの活動をしていた。80年、32歳のときに帰国してからは、「岩村アトリエ」を東京に設立して活動の拠点を国内に移している。

「わたし自身は仕事で住宅や集合住宅・街づくり・市街地再開発などに関わることが多かったと思います。とくにこの20年ほどは、地球環境時代の中心的な課題である『環境との共生』を主要なテーマに据え、国が先導する産官学のプロジェクトである『環境共生住宅』の調査・研究や企画・設計を、大学の研究室と事務所の両方で展開してきました」

岩村先生の作品には受賞作も多いが、その多くが時代の求める「環境との共生」への取り組みが認められたものだ。先生が中心となってまとめた「環境共生住宅」の定義には、(1)地球環境の保全(2)地域環境との親和性(3)居住環境の健康・快適性――という環境の大きさによって整理された3つの目的があるという。

「それぞれ、(1)は地球温暖化やエネルギー・廃棄物など地球規模の問題、(2)は立地する環境の生態系や街並み・景観・コミュニティー等の問題、(3)は最も身近な室内外の環境が対象で、シックハウスに代表されるような健康や生活の快適性等の問題があります。こうした諸問題を1つひとつ解決しながら、住まい・街づくりを通して生活の質を高めるとともに環境との共生を図っていくそんな社会をつくっていきたいのです」

ところで「3.11」東日本大震災の未曾有の被災は、住宅建設や街づくりに関わる人々に大きな衝撃をもたらした。もちろん岩村先生もその例外ではない。

「あの大震災を経験してつくづく考えさせられたのは、『環境共生』が『人間の安全保障』に役立つものでなければならないということに尽きますね。考えてみれば当たり前のことです。

住まいづくりであれ街づくりであれ、結局は人の命の安全を保障することが最優先されなければなりません。たとえば仮に地震で建物が倒壊したとしても、その中に暮らす人々の命を守れる構造にしたり、その後も短期間であれば生活し続けられるような工夫をしたりすることです」

これらは岩村先生の究極のテーマでもあるが、むしろこれから住まいや街づくりについて学ぼうとしている学生たちにこそ託される大きな課題ともいえるだろう。

環境づくりのノウハウ極めて「国際派」をめざせ

岩村先生設計「神戸ドイツ学院ヨーロピアンスクール」
中目黒にある「岩村アトリエ」

東京都市大学都市生活学部の「プロジェクト演習」は3年次から始まる。学生たちは前後期で2つのプロジェクトを体験できるようになっているのが特徴だ。これは4年次の卒業研究につながる演習だけに、そこでミスマッチが起こらないように複数の選択肢を与える学部側のはからいでもある。

さて岩村研究室(環境デザイン研究室)のプロジェクト演習の内容だが、これが実にユニークで面白い。

「まず、いま自分が日々暮らしている部屋について記憶に基づき自由に絵に描いてもらいます。次に部屋の部位や置かれている家具などの大きさを実測して、正しいパース図(透視図)としてフリーハンドで描きます。こうして頭でイメージしている生活空間と実測との違いを体得していきます。

さらに、その部屋を理想的な生活空間としてリニューアルしてみる。さらに住んでいる家全体のリフォームを提案してもらう。こうしたことを人間工学や図学の講義を交えながらひたすらスケッチしてもらいます。最終的にはこれまで2年半通ってきた大学キャンパスの問題点をKJ法等で探り、1人ひとりにキャンパス自体の改善を企画・提案し発表してもらいます」

この「演習プロジェクト」は学生たちにも好評らしい。後期に配属された「卒業研究ゼミ」では、原則として1週間に1冊の本を読破し報告するノルマが課せられ、卒業研究のテーマ探しをしてもらう。あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「ことばは悪いですが、わたしの指導法は『放し飼い方式』ですかね(笑い)。自らの研究テーマは自分で見つけなさいということです。そのための環境づくりはこちらでしますから、学生たちには自主的に1年間続けられるテーマを探しなさいと言っています。環境デザインの分野は幅が広く、扱うテーマはいくらでもあるのですから」

さて、岩村先生は長年「建築・建築界の国際化」を訴え続けてきたことでもつとに知られる。

「日本という国自体が内向きの傾向がありますが、とくに建築の世界ではそれが顕著です。全国の大学の建築学科から毎年9000人もの建築専門家の予備軍が輩出されますが、海外に出て活躍しようという人はほとんどいません。

今後日本は少子高齢化社会が加速していきますので、建築家にとってのマーケットは小さくなるばかり。いまこそ真の国際化・海外進出について考えないと本当に手遅れになってしまうでしょう」

若き日に海外で活躍してきた経験のある岩村先生だけに切歯扼腕たる想いも強いようだ。

こんな生徒に来てほしい

「好きこそモノの上手なれ!」と言われるとおり、高校時代までのうちに心からワクワクできるものを見つけておいてほしい。我々教員の立場からすると、建築や住まいや街づくりに関することが大好きという人にぜひ来ていただきたい。とりあえず図面やスケッチが上手だとか下手だとかは関係ありません。なにより「建築や街」が好きで楽しい・面白いと感じられること、夜も寝ないで夢中になれること、それこそが何よりも大切なのです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。