早稲田塾
GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
商学部

堀田 一吉 教授

ほった・かずよし
1960年島根県生まれ。'84年慶應義塾大学経済学部卒。'89年同大学院商学研究科博士課程単位取得。'88年慶應義塾大学商学部助手。'92年同助教授。'02年より現職。この間'93年米サウスカロライナ大学訪問研究員。'03年慶應義塾保険学会理事長。
主な著作に『保険理論と保険政策―原理と機能』(東洋経済新報社)『民間医療保険の戦略と課題』(編著・勁草書房)『保険学』(共編著・有斐閣)などがある。
堀田先生を中心に主宰する「堀田一吉研究館」のURLアドレスはコチラ↓
http://hotta.jimdo.com/

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ニッポン保険の未来を探る理論的研究

堀田研究室の入る三田研究室棟
新装なったばかりの三田南校舎

今回紹介する慶應義塾大学商学部の堀田一吉教授は、「慶應義塾保険学会」理事長をも長く務める。慶應義塾と保険制度との浅からぬ関係から話が始まった。

「本学の創始者である福沢諭吉が、幕末の米欧州使節団に参加したときの見聞を著した『西洋旅案内』(1867年刊)という著作があります。その中ですでに近代的保険制度を紹介していて、これこそが日本に保険制度を紹介した最初だといわれています」

これをキッカケに、わが国にも保険会社が設立されるようになった。そして慶應義塾大学からも多くの人材が送り込まれていき、現在の保険業界の発展にも多大に寄与してきたのだ。

「慶應義塾保険学会は発足から60年もの歴史を誇る学会です。『産学協同』を基本理念に掲げ、保険の理論と実務、つまり保険学と保険業実務の相互発展をめざして研究しています」

そこで現役高校生の皆さんにはまだ馴染みも薄いであろうということで、堀田先生に保険についてレクチャーをお願いした。

「いまや日本は世界第2位の保険先進国になっています(1位はアメリカ)。保険の加入率は、その国の文化程度を測るバロメーターとも言われます。つまり今日食べることを心配している人々には、将来に備えて保険に入っておこうという発想は生まれませんからね」

3.11大震災で日本人の保険認識も一新へ

慶應三田キャンパス東門(東館)

こうして成熟化した日本社会ではあるが、今年3月の大震災は前大戦敗戦以来の大試練となることは覚悟せねばならない。しかしまた、この震災を契機に保険への認識を新たにする人々が増えるのは望ましいこととも堀田先生は語る。

「保険の基本的精神は相互扶助といえます。今回の3・11東日本大震災でも多くの人々が保険に助けられています。ただ保険は相互扶助であっても、慈善事業ではありません。あくまでも自己責任の制度で、自ら加入契約をして保険料を支払っていないと、いざというときに権利を行使できない仕組みになっています」

そんな堀田先生の研究内容についてお聞きしてみると――

「いまや日本経済界において保険はなくてはならない存在になっています。その保険のあり方について理論的に考察するのが私の研究なのです」

しかし具体的な保険商品は生き物であり、日々形を変えている。また近年はさまざまな領域との融合化も盛んになってきた。

「それだけに、ある特定分野の保険だけに注目しても、なかなかその本質はつかめません。そこで、視野をなるべく広くとって保険業界の全体像の動きをとらえるよう心掛けています」

さらに、21世紀を迎えて複雑化・グローバル化していく社会情勢に対応して、ますます複雑化している保険の可能性についても研究していきたいとも今後の意欲を語ってくれた。

慶應「実学」精神を代表する商学部の特色

「ファカルティクラブ」もある北館

堀田先生の所属は商学部である。あらためて慶應義塾大学商学部の特徴について伺った。

「本学商学部は、福沢諭吉の精神を直接継承した『実学』を特徴とします。これは現実の社会現象を解明したり、合理的実証的精神に基づいて既存の知識体系を再構築したりするという意味にも通じています。具体的には、現実の企業活動に焦点をあてた研究やマクロ経済・ミクロ経済の研究などが盛んなことが特色といえましょう」

さらに商学部における教育指導の特色として、何よりもゼミ演習の充実を挙げねばなるまい。

「3年次から専門ゼミがはじまり、専門性の高い教育はゼミを中心に施されます。そのため学部での科目履修自体がゼミでの活動を補完するように選択されていき、最終的にゼミでの研究に集約されるという学びのスタイルになっています」

なお慶應商学部では学科制は敷かず、3年次から4つの領域に分かれて学ぶ。①経営学②会計学③商業学④経済・産業の4領域だ。ここで堀田先生は次のように強調する。

「他大学の商学部よりもいろんな分野について広く学ぶことができる。それこそが本学商学部の一番の特徴でしょう」

共同研究と卒論をきちんと冊子化させる意味

三田キャンパス点描(旧図書館等)

慶應義塾大学商学部の専門ゼミ演習は3年次から始まり、3~4年次合同授業形式で進められていく。堀田ゼミでは例年18人前後のゼミ生を受け入れるのが通例。ゼミの運営では、3年次がグループによる共同研究、4年次は卒業論文の作成が中心になる。

「3年次の共同研究については2つのグループに分かれています。今年度の例でいえば、そのひとつが『ネット生命保険の課題と将来』、もうひとつは『自転車保険について』を研究テーマにしています。前者のグループは『東京学生保険ゼミナール』での発表を、後者は秋の学園祭『三田祭』での報告発表をめざしています」

この3年次の共同研究こそが4年次の各卒論へとつながっていくこととなる。そのため堀田先生のゼミ指導にも力が入るという。

「3年次での共同研究を単なる調査研究だけで終わらせるのではなく、ちゃんとした論文にまで仕上げるように指導しています。そうした作業を通してゼミ生それぞれが卒論のテーマを見つけてほしいのです」

それこそが堀田先生なりの強い想いでもあるのだ。

「さらに大学時代の卒論というものは、すべての学生にとって小学校以来うけてきた教育の集大成になるわけです。それだけに精魂傾けて取り組んでほしい。3年次の共同研究でも卒論でもそうですが、わたしは必ず冊子にして残すようにさせています」

最近、ややもすれば研究論文もIT電子化してパソコンで見られれば良しという風潮もある。しかし若き日の学生時代の研究論文であるからこそ、具体的に見える形にして残すことには十分に意義があるとも語る。
そんな堀田先生が学生指導で日ごろ心掛けている点については――

「みなさんも高校・大学を終えて社会に出るとさまざま困難な問題に直面することでしょう。そのすべてが応用問題ばかりです。共同研究と卒論はそのための訓練になります。自ら問題を見つけ出し、仮説を立て、論述・論証をして、問題解決への道筋をつける。それも周囲の人々が納得させる質が伴わなければならない。その意味からも、ちゃんと卒論を仕上げて卒業することが大切なんです。そのためにも机に広げた資料だけを見て学ぶのではなく、現実の社会の動きにも目を向けるよう指導しています」

学生たちに日本保険学会の各種研究会への参加を義務づけるのも、アップツーデートな保険業界や社会の情報を得るようにしてもらいたいから――そう堀田先生は言い切る。

こんな生徒に来てほしい

社会で日々起こっている諸現象に関心を高めてほしいですね。世の常識に疑問をもって自ら調べてみたいと思う――そこから研究の入り口に立ったことになるのです。
すでに答えが用意される高校までの学習とは違って、大学からは積極的に課題を探して行動していかなければ何も始まりません。ですから高校までの間にそうした心構えやツール(道具)を自分なりのセンスで用意しておくのもいいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。