早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京工芸大学
工学部 メディア画像学科

久米 祐一郎 教授(工学部長・工学研究科長)

くめ・ゆういちろう
1954年東京生まれ。’80年早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。’80年東京芝浦電気(現東芝)入社。電子事業本部勤務。’83年早稲田大学理工学部助手。’85年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。’85年米シカゴ大学医学大学院研究員。’89年ヤナセ・アンド・アソシエイツ入社。’90年SRIインターナショナル入所。主任研究員。’95年東京工芸大学工学部講師。同助教授をへて2000年同教授。’06年より工学部長。
主な著作に『医用画像ハンドブック』(オーム社)『CCTV』(視覚障害情報機器アクセスサポート協会)『バーチャルリアリティの基礎 2』(培風館)などがある(著作はいずれも分担執筆)。
久米先生が運営する「感覚情報処理研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://laplace.photo.t-kougei.ac.jp/index-J.html

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ヒト感覚を大切にする感覚情報処理研究

久米研究室の入る10号館
工芸大厚木キャンパス正門

※こちらの記事は2011年度の情報です。

今回紹介する久米祐一郎教授は東京工芸大学工学部の学部長でもある。まずは同大学工学部の特徴から伺おう。

「本学は『小西写真専門学校』が前身でして、4年制大学として’66年に東京写真大学工学部が開設されました。前身が写真専門学校であることから、工学部は写真工学科と印刷工学科の2学科でスタートしました。

そのあと大学名の改称や学科が増えたり改組があったりで、現在は5学科体制になっていますが、その中心は映像系と環境系といえます。それが他大学の工学部とは違う東京工芸大学工学部の特徴になっています」

その教育理念は「社会で役立つ技術者の養成」にある。そのため実験・実習に重きを置いた実践教育に力を入れているという。久米先生ご自身は工学部メディア画像学科の所属だ。

「このメディア画像学科というのは、東京工芸大学(旧:東京写真大学)工学部開設時の2学科である写真工学科と印刷工学科が統合し、技術の進歩変遷に合わせて画像と映像メディアを総合的に扱う学科になったものです。現在は2コース制を採っていますが、履修モデルに若干の違いがある程度の、緩いコース制ともなっています」

ちなみに東京工芸大学は工学部と芸術学部の2学部からなるが、それぞれ他学部の科目を履修できる制度があることも特筆すべきであろう。どちらの学部からも履修できる「工・芸融合科目」も設けられており、その融通性のある学びのスタイルも特徴だと話してくれた。

そんな久米先生は大学時代に応用物理学を学んだ。就職した電機メーカーではエックス線テレビの開発に携わり、アメリカの大学院では医用画像処理を研究し、外国系シンクタンクでは技術コンサルタントに従事したという異色の経歴をもつ。

そうした多彩な才能の集大成が、東京工芸大学工学部メディア画像学科での感覚情報処理を中心とした諸研究ということになろう。その研究成果は、「口で説明するより実際の実験の様子を見たほうが早い」という展開となった。

バーチャルリアリティ機器や障碍者支援システムを開発

東京工芸大中央図書館
厚木キャンパス点描

そこで取材場所を実験室に移して、久米先生の解説付きで見せてもらった。その各研究概要を簡単に記してみると――

【運動感覚システム】
人が降下や移動・回転などを体感できるバーチャルリアリティ装置。
「装置周辺に流れる画像を投映して視覚情報を与え、それに加えて内耳の前庭感覚を刺激することで加速や回転感覚が感じられる装置です。人が移動している運動感覚を得るための研究になります」(久米先生の説明。以下同)

【ハンドヘルド・ディスプレー】
ボード状のコントローラーをもって操作すると、取り付けてある錘の移動によってボードの重心が前後左右に移動する装置。
「これはパソコンPC画面上の物体が動くことによって、ボードの重心も連動して移動するシステムをめざしています。PC画面の物体に質量をもたせるという研究です」

【塗り絵PC】
PC画面上の絵をタッチペンで塗り絵をすると、その出来ばえをPCが採点してくれる視覚障碍者支援システム。
「弱視などの視覚障碍者のために開発した訓練システムです。色の塗りむら・塗り残し・はみ出しなどをPCが計算して採点するようになっています」

【図形模写システム】
手本の図形をまねて樹脂加工された特殊な用紙に描き、それをPCが評価採点するシステム。やはり視覚障碍者支援用。
「訓練を繰り返して次第に評価の得点が上がっていくと、子どもの障碍者のモチベーションが大きくなっていくのが分かります」

以上が久米先生の研究室での主な研究開発の項目である。

「大学の一研究室でしていることですから、実験装置や予算に制約もありまして、どうしても基礎研究が中心になってしまいますね」

そう語って、もし許されるのであればさらに大きなシステム開発に挑んでみたいという久米先生の思いもこもる。

学生と実験をしているときが一番楽しい

校舎壁面に目立つ工芸大ロゴ
実験中の久米先生と水野助教

東京工芸大学工学部の学生が各教員の研究室に配属になるのは4年次4月からである。ただ就職活動の問題などもあって、近年は研究室配属が早まる傾向にあるらしい。

久米研究室で受け入れているのは例年6~7人。配属希望者が多いときは久米先生自身が面接をする。その採用の基準はずばり「やる気」だという。

「新しいことを学びたい、新しい技術を身に付けたいという意欲。つまり『やる気』こそが判断基準になりますね」

研究室配属が決まった学生は1年間をかけて卒業研究に励む。その研究テーマは久米先生のほうから大枠が示され、学生たちはその中から自ら関心のあるテーマを選んで研究に向かっていく。あらためて学生たちへの指導方針については――

「わたしも企業で技術者を経験しましたが、仕事を好きでやるのと嫌々やるのでは仕上がりに差が出てきます。ですから何に取り組むにしてもまず好きになることが重要です。

さらにヒトに備わる感覚を大切にし、それを上手に装置開発などに組み込むようにして欲しいという希望もあります。そうしたことが研究や実験のベースになると考えるからです」

いまは工学部長として多忙を極める久米先生。学生とふれ合う機会がなかなか取れないのが残念だとも嘆く。

「学生といっしょに実験をしているときが一番楽しいですからね」

こんな生徒に来てほしい

やはり新しい知識を覚えたり新技術を身に付けたりすることに興味をもって取り組める人ですね。それこそが進度や吸収を速めることにもなります。テレビゲームばかりで、プラ模型の組み立てさえリアルにしたことないまま育った学生が多くなった時代でもありますから、手を汚してのモノづくりに積極的に挑戦してもらいたいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。