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GOOD PROFESSOR

麗澤大学
経済学部

籠 義樹 教授

かご・よしき
1968年福井県生まれ。東京工業大学大学院総合理工学研究科環境工学創造専攻博士課程修了。東京工業大学工学部助手から麗澤大学国際経済学部に転じ、助手・講師・助教授を歴任。’08年学部改組により経済学部准教授。’11年より現職。この間’07~’08年英レディング大学Real Estate & Planning研究科客員研究員。日本計画行政学会学会賞(奨励賞・’ 95年)。
著作に『環境計画・政策研究の展開―持続可能な社会づくりへの合意形成』(共編・岩波書店)『嫌悪施設の立地問題―環境リスクと公正性』(麗澤大学出版会)がある。
「籠研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.ie.reitaku-u.ac.jp/~ykago/

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「嫌悪施設立地」社会的影響評価の社会工学研究

籠研究室のある「研究室B棟」
麗澤大学柏キャンパスの正門

「私どもの大学では道徳教育を正式な授業科目として取り入れ、1年次全学共通の必修科目にしています」

開口一番そう語るのは、麗澤大学経済学部の籠義樹教授である。

「これは本学の創立者である廣池千九郎(法学博士、1866年~1938年)が学問分野として拓いた『道徳科学』を今日まで継承し教育してきたものです。現代社会においても経済性や効率性だけでは決められないことが多々あります。そうしたときの意思決定は、1人ひとりの価値観や道徳観による部分が大きいのです。社会人としていかに価値判断をしていけばいいのか? それらを学んでもらうための道徳教育になります」

この国の人々、とくに若者の人心の荒廃が言われて久しいが、こうした大学における道徳教育は大震災後の今こそあって然るべきなのだろう。
次いで、籠先生が所属する麗澤大学経済学部の特徴についてはこう語る。

「経済学部は各年次の定員が300人という比較的小規模な学部でして、それだけに教員と学生の距離が近く、それぞれの学生の名前と顔が一致し目配りが行き届きます。各教員が学生1人ひとりと丁寧に向き合っていること、これは本学部の特色のひとつといえると思います」

そのほかにも学際領域を専門にしている教員が多いこと、さらに「ビジネスゲーム」を取り入れた実践的な授業も成果をあげていること、コンピューターやインターネットを活用した授業環境が整っていることなども新生・経済学部の特徴として挙げられるという。

さらに、企業や非営利組織(NPO)にインターンとして学生を参加させて、社会経験を積ませることにも力を入れており、籠先生が会長を務める非営利組織「かしわ環境ステーション」の運営にも多くの学生が参加している。

また、卒業生の就職内定率(就職希望者を分母にした場合)については、卒業までの年度内が84.1%で、卒業後1ヵ月までを加えると9割にも達するという(2010年度)。この就職難の時代にあってこの数字は特筆に値するだろう。

社会工学による問題解決こそが人類最強ツールなのかも

麗澤大学キャンパス点描
新校舎「あすなろ」のコミュニティーサークル

ところで籠先生のご専門は「社会工学」である。そもそもどんな研究分野なのか、その根源的なところから説明してもらった。

「社会工学というのは、社会がより良くなるには何をどうすればよいかについて工学的に考えていく学問です。現実の社会は複雑で多くの要素が同時に関わってきますから、経済学はもちろんあらゆる学問分野におけるさまざまな知見を総動員して解を出していきます。ちなみに、社会工学のようにいろいろな学問分野にまたがることを学際的と言います」

社会をより良くしていく、そのための方法として具体的な問題解決しかない。ただひとつの問題解決を図っても別のところに弊害が生まれるのが普通である。その弊害を除くためにも新たな問題解決を図る、また弊害が生まれたならその解決を図っていく……これらを繰り返しながら徐々に社会全体を良くしていこうという考え方こそが、社会工学の基本なのだそうだ。

そんな籠先生が社会工学的手法でいま取り組んでいるものに「嫌悪施設立地の社会的影響評価」がある。ここでいう嫌悪施設とは、ゴミ焼却場(清掃工場)などのことを指す。

「ゴミ焼却場のような環境リスクをともなう施設が立地するときに、その周辺社会にもたらす影響が心配されます。ただ、そうした施設が立地しても、ただちに周辺環境や人々の健康に被害が及ぶということは通常ありません。それでも立地に反対する住民運動が起こったりもします。施設立地による将来的な影響への不安が住民にあるからですね」

そうした周辺住民の不安を解消するためにはどうすれば良いのか? こうしたことが最近の籠先生の研究テーマのひとつなのだ。

「結論的に申せば、なぜそこに立地するのかを定量的な評価に基づいて説明し、立地に反対する人々との合意形成を図っていくことになります。合意を得るには、立地位置の最適性を示すだけでなく、将来的な影響への不安に応える必要があります。それらのなかで重要なもののひとつが、現在予見できない影響が将来生じた場合それをいかに補償するかということです」

こうした地域住民への補償の方法として、周辺環境の整備や還元施設(温水プールなどの運動施設等)の建設がこれまで一般的であった。しかし現在予見できない影響が将来生じるかもしれないというリスクに対して、直接的に補償する方法はないものか、それを金融工学などの手法を駆使応用して探っているのが籠先生の最近の研究テーマである。

実はこうした研究は籠先生のほぼ独擅場だそうで、これまでにない視点からの研究成果に各方面から期待が寄せられている。

卒論を通して一生モノの問題解決能力を養ってほしい

学生が集う麗澤大学図書館
籠先生「ファイナンス基礎」授業風景

麗澤大学経済学部の専門ゼミ演習は3年次から始まる。籠先生のゼミでは毎年度15人前後のゼミ生を受け入れている。人気ゼミだけに入ゼミ希望者が倍を超えることも珍しくないという。その選抜方法については――

「希望者それぞれの成績や志望理由を書いたリポートの内容、それを踏まえて面接をおこなって、その3項目を点数化して総合点の高い順に採用するという方法をとっています。あくまで公平にということですね」

籠ゼミの運営方式としては、いま世界中で日々起こっている問題をテーマにしたディスカッションを通して、ゼミ生の問題意識を喚起していく手法が逐一とられていく。

「そうした議論のテーマについては、環境や経済・教育・労働・財政など、現代において我々が直面しているあらゆるポピュラーな問題を取り上げて、その問題の発生メカニズムを考えて解決策を探ることにしています。また『嫌悪施設』はわたしの個人的な研究テーマですので、特にこれについての研究を強制することはしていません」

こうした熱い討論を通して、各ゼミ生は自らの研究テーマを自由に絞り込む。そして4年次の卒業論文へと結実させていく。あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように話す。

「卒論研究を通して一生モノの問題解決能力を養ってほしいと指導しています。問題の発見からその解決方法までを自ら考えてやり抜ける能力を養う。この混沌の時代において社会に出て一番求められるのがこの能力になりますからね」

こんな生徒に来てほしい

わたし自身はこんな学生に来てほしいというイメージはもっていませんね。本学経済学部のミッションとしても、研究者の養成というよりは社会貢献ができる社会人の養成に主眼があると思っています。
特定のテーマに関心がある人とか、特別な性格・能力の学生を求めるようなことも特にありません。本学での4年間の学びを通して、自らの足で立つことのできる自立した社会人を目指してほしい。そうした意欲のある方でしたらどなたでも歓迎いたしますよ。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。