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GOOD PROFESSOR

中央大学
理工学部 精密機械工学科

大隅 久 教授

おおすみ・ひさし
1962年東京生まれ。'88年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻博士後期課程中退。'88年東京大学工学部精密機械工学科助手。'91年同専任講師。'93年同助教授。'94年中央大学理工学部精密機械工学科助教授。'01年より現職。日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門貢献表彰('09年)文部科学大臣表彰('09年)。精密工学会生産自動化専門委員会委員長。2011年度日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門長。2010-2011 IEEE Japan Chapter Robotics & Automation Society Chair。
主な著作に『はじめてのロボット創造設計』『ここが知りたいロボット創造設計』『これならできるロボット創造設計』(著作はいずれも共著で講談社刊)などがある。
大隅先生が主宰する「中央大学理工学部ロボット工学研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.mech.chuo-u.ac.jp/~osumilab/

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人類未知の概念によるロボットづくり

大隅研究室の入る理工学部新2号館
中央大学後楽園キャンパス正門

今週は「ロボット博士」の登場である。中央大学理工学部精密機械工学科の大隅久教授が挑むロボット製作は、そのいずれもが世界初のコンセプトでシステム開発されているものばかり。そんな先生の話は「そもそもロボットとは何か」というところから始まった。

「高校生のみなさんは、ロボットというと、人型(ヒューマノイド)のロボットを想像されるだろうと思います。しかし実はロボットにもさまざまな種類のものがあって、その用途も多様です。では、ロボットとは何者なのか? これはわたくしの個人的な見解ですが、『いままで見たこともないような新しい概念でつくられた機械や機能』と定義できます」

その例として、大隅先生はいわゆる「ペットロボット」や「掃除ロボット」を挙げた。その一方で、炊飯器や洗濯機はどんなに進化してもロボットとは呼ばれないだろうという。現役高校生諸君にその意味するところが理解できるだろうか?

まずは大隅先生によるロボット研究について述べると、ロボットを動作させる制御技術、なかでも物を運ぶ移動制御をめぐる創造設計が得意の分野といえる。

ロボットに物を運ばせる――移動制御システム開発の数々

キャンパス中央にある憩いの広場
「移動マニピュレータ」の一例

それら大隅先生らが開発中のロボットシステム概要について、具体例をもとに直接紹介してもらおう。

【移動マニピュレータの協調制御】
「腕型ロボット(マニピュレータ=Manipulator)の関節部分のいくつかをフリーにすることで、複数台のロボットが協調しながら物を把持するシステムです。これを移動台車に載せることで全方向への移動も可能になります」

【移動マニピュレータ】
「こちらはマニピュレータ本体の下に車輪が付いていて、物を把持して移動ができるシステムです。この関節部分は『冗長自由度』を持っていて、マニピュレータの手先の位置を動かすことなく腕の部分だけを動かすこともできます。この能力を活用して、腕の途中が障害物と衝突するのを避けたり、楽な姿勢で作業をしたりすることが出来ます。マニピュレータ移動はまだ単体でのみですが、将来的には複数台での自由な移動をめざしています」。このバリエーションとして、6本のワイヤでマニピュレータをつり下げた「ワイヤ懸垂型マニピュレータ」もあるという。

【4足ロボットの高速歩行】
「ソニーから市販されていた四足歩行ロボットAIBOを実験機として利用し、四足歩行ロボットの理論的な最速歩行をめざしています。すでに直進の高速歩行は実現していますので、これからの課題はカーブや上下動などを加えた高速歩行になります」

【無人ホイールローダーシステム】
「建設現場でダンプなどに土砂を積み込むホイールローダーの作業を、ロボット化して無人作業にしようという研究で、ほかの大学や研究所との共同研究です。わたしが担当しているのは、いかに土砂を効率よくバケットにすくい取るか、またその土砂をいかにダンプに均一に積み込むか――などになります」

いま大隅先生が手がけているロボットシステム開発の主だったものを挙げていただいた。じつに多種多様である。

自らを鍛えるツールとしての「機械工学」

「ホイールローダーロボット」模型
ロボットの説明をする大隅先生

次いで大隅先生が所属する中央大学精密機械工学科の特徴などについて話してもらった。

「まずロボットの研究に力を入れているのがこの学科の特徴になります。全研究室のうちの3分の1がロボット分野をテーマにしていて、さまざまなコンセプトのロボットが研究されています。いずれも最先端の研究ばかりです」

さらに中央大学精密機械工学科の特徴として、就職の求人数が多いこと(就職希望学生の約20倍)、さらに学会などでの発表件数の多いことなども挙げてくれた。つづいて中央大学理工学部の特徴については――

「理工学部全体としては『研究活動を通じた教育』を標榜しています。つまり教室での座学を中心に指導するのではなく、なるべく研究室で実際の研究に携わりながら学んでもらうという方針です」

これによって、それぞれの問題解決能力も養ってほしいという狙いもあるという。これらは学生たちを子ども扱いせずに一人前の大人として遇するアカデミックな対応ともいえよう。

そうした学部生たちが各教員主宰の研究室に配属になるのは4年次の4月からである。大隅研究室でも例年10~13人ほどの学部生を受け入れている。


「わたしの研究室には研究項目がいくつもありますから、それらの中から学部生本人が希望するものを卒業研究テーマに選んでもらいます。自身のテーマが決まったところで、まずは大学院生たちの研究チームに加わって基礎プログラミングあたりから研究作業に参加していきます。そうして一人前に手が動かせるようになったところで、各自が設定した卒研テーマの研究に本格的に入るという段取りになります」

卒業研究のテーマを決めるにあたっては、いままでにない新しさを見つけることが何より大切――そう大隅先生は強調する。それが世界初につながるようなものであればなお結構ということだ。
あらためて学生・研究生への指導方針については次のように語る。

「10年後のこの国はどのように変化しているのでしょうか? 大震災の影響なども考えなければなりませんが、少子高齢化の進展や製造業の国外転出といった今の流れが加速していくのは間違いないでしょう。
10年後に私たちが何をすべきか考えるとき、機械工学さえできれば良いとは言えません。しかし10年後を見すえつつ、いまから機械工学で自分自身を鍛えておくことは出来るでしょう。機械工学は自らを鍛えるための道具である――そう覚悟して学んでいく必要があるように思うのですが」

10年後に世界から社会から求められることに応えられる人間であるために今から備えることの重要性――そのことを説く大隅先生の姿が強く印象に残った。

こんな生徒に来てほしい

自分は何をすればいいのか? ただ他人から指示されるのを待っているのではなくて、「自分はこうしたい」「自分ならこうする」と常に考えているような人ですね。そうした習慣や志が何より大切です。
そのためにもロボット工学分野ばかりにとらわれることなく、人類英知のすべてを幅広く学ぶ姿勢を若い時代に身につけるよう心掛けてほしい。これからのロボット工学は、新しいコンセプトを取り入れてますます学際的になっていきますから、その視野の広さが勝負になっていきます。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。