早稲田塾
GOOD PROFESSOR

首都大学東京
大学院 社会科学研究科 経営学専攻

高尾 義明 教授

たかお・よしあき
1967年大阪生まれ。’91年京都大学教育学部教育社会学科卒。’91年神戸製鋼所入社。2000年京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年九州国際大学経済学部専任講師。’02年経済学博士(京都大学)。’02年流通科学大学情報学部経営情報学科専任講師。’04年同助教授。’07年首都大学東京大学院社会科学研究科(経営専攻)准教授。’09年より現職。首都大学東京ビジネススクール教員。組織学会評議員。社会・経済システム学会理事。
主な著作に『組織と自発性』(白桃書房)『経営理念の浸透(近刊)』(共著・有斐閣)『経営行動』(共訳・ダイヤモンド社)などがある。
「高尾義明のWebPage」のURLアドレスはコチラ↓
http://homepage1.nifty.com/~ytakao/

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組織と個人との矛盾に迫る経営組織論

高尾研究室が入る首都大3号館
南大沢キャンパスへと続く階段

今回登場いただくのは、首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻の高尾義明教授である(学部の担当は都市教養学部都市教養学科経営学系経営学コース)。まずは、その所属する学部・学科である「経営学系」の特徴から話してもらおう。

「我々の経営学系は、経営学と経済学の2つのコースからなっていますが、そんなに厳しくわけられているわけではありません。双方のコースの科目履修がかなり認められていますので、経営や経済について幅広く関心がある学生にはぴったりのカリキュラムと言えるでしょう」

これは、経済学や経営学に本格的に触れたことのない高校生にとっても親切な制度と言えるのではないだろうか。さらに指導している側である教員間の連携については――

「とくに制度化されているわけではないのですが、経営学の教員間では関連する教科や内容が有機的につながるように随時連携を図っています」

教員サイドで講義内容を意識的に連携させるということなど大学教育ではあまり考えられないことだ。これも学生側の学習意欲向上に大きく貢献する試みと言っていいだろう。

そんな高尾先生のご専門は「経営組織論」である。果たしてどんな学問分野なのだろうか?

「新しい商品やサービスを企業が提供しようとするとき、それをより良いものにしたり多くの人に知ってもらうためには、複数のスタッフで協力して働くことになります。そうした協働の効果的なあり方を考えるのが経営組織論になります」

つまりは、企業活動などを目標達成に向けて運営していくためにどのような組織づくりが良いのかを研究する分野である。現役高校生で企業活動などをちょっとイメージできない人は、自らの身のまわりのクラブ活動などを例に考えてみるとわかりやすいはず――高尾先生はそうもアドバイスしてくれた。

組織内において自発性を発揮させるために

南大沢キャンパス点描
図書情報センター(図書館)

この経営組織論において高尾先生がいま取り組んでいる具体的な研究テーマは大きく2つからになる。まずひとつ目は、企業・団体などの組織内における個人力の発揮の仕方などに着目した研究だ。

「組織のリーダーが、各個人の能力発揮を期待して経営理念や新しいビジョンなどを掲げることがよくあります。しかし、理念やビジョンをフォロワー(リーダーをフォローする人々)が受けいれないと『絵に描いたモチ』になってしまいます。
そこで、フォロワーが自発的に賛同できる理念やビジョンのあり方とはどういうものなのか? また、それによって個人の能力発揮がどのように変わってくるのか――こうしたことを実際のいくつかの企業における調査をもとに研究しています」

もうひとつは、組織対組織の新たな試み「ビジネス・エコシステム」についての研究である。

「いくつかの企業間で自律的に協力し合うシステムである『ビジネス・エコシステム』が最近注目されています。これは、親会社と子会社のような関係にない企業同士が競争しつつ協調しながら新しい価値を実現するビジネスを興こしていく時によく見られます。
この場合、ある特定の企業がほかの企業を一方的にリードするというよりも、各企業が自発的に集合してそれぞれの特長を生かしながらビジネスのフィールドを開拓していきます。そういったシステムに興味をもって他大学の研究者と共同で研究を進めています」

これら2つのテーマの共通点は「自発性」という点にあるようだ。後者の新システムの試みは「企業間学習」「ラーニング・コミュニティー」(Learning Community)とも呼ばれる経営組織論の新境地に属する新たな課題ともなっていくのだという。

自ら学ぶ力が身につく「楽勝ではないゼミ」

ある日の高尾ゼミ授業風景
ある日の高尾ゼミ授業風景

首都大学東京の経営学系経営学コースのゼミ演習は3~4年次学部生が対象で、両学年合同でおこなわれる。高尾先生のゼミは、経営学コースにおける「楽勝ではないゼミ」のひとつとして広く首都大学生たちに知れ渡っているらしい。

だが例年定員(7~8人)を超える応募があるという。つまりは厳しさを超えて得るものの大きさを学生たちが認知している証しといえよう。もちろんゼミでは「経営組織論」を中心に研究討論がなされていく。

「ゼミでは文献講読が中心ですが、企業組織についての事例研究もよくおこなっています。事例研究では、学生をグループ分けして、具体的な企業についての資料をもとに、まず出題担当のグループが問いを立てます。その他のグループがその問いを検討し、その結果を発表・ディスカッションするという流れです。正解を考える以上に問いを立てるグループのほうがいつも大変なんですね。こうして何が問題なのか考えることが一番の勉強にもなります」

この「問い」とは、ある医薬品企業におけるコンプライアンス(法令遵守)を推進するためにどのような施策があり得るかなど、企業での実践活動に即して設定するのだという。4年次ゼミ生といえば卒業論文の作成が一般的だが、首都大学経営学系では必修ではない。ただし、高尾ゼミでは全員が卒論を書き上げるのが事実上原則となっているという。

「卒論のテーマはゼミ生たちがそれぞれ考えて決めます。わたしの方からは研究の方向がズレたり行き詰まったりしたときなどに指導する程度に留めています。この方法はテーマを与えることと比べると手間がかかって効率的とは言えないのですが、わたし自身が学部生や大学院生時代に同様の指導を受けたこともあり、あえて同じようにしています」

あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「ゼミについては『教えてもらう場』ではなく自ら『つくり上げていく場』であるということです。またゼミにおけるわたしの立場は『触媒』でありたいとも思っています。学習に役立つ文献や資料などをいろいろ示したりはしますが、それらを読み込んでいくのは学生たち自身であるということです。自ら学んでいく力という一生モノの力をゼミ生たちが身に付けるというのが理想ですね」

こんな生徒に来てほしい

わたしが専門にしている経営組織論というのは、企業だけでなく世の中のあらゆる組織と関係づけて学ぶことができます。日々使っている鉄道・バス会社やコンビニやスーパーといった企業はもちろん、皆さんにとってもっとも身近な高校や大学も組織として活動しています。そうした身近な組織の活動を見て、疑問や問題意識をもって理論的に考えていこうという人。そんな若い人といっしょに学んでいくことが出来たらすばらしいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。