早稲田塾
GOOD PROFESSOR

明治大学
国際日本学部

横田 雅弘 教授

よこた・まさひろ
1953年東京生まれ。’77年上智大学文学部(心理学専攻)卒。’77年ポリドールレコード(株)入社。’84年米ハーバード大学大学院修士課程(カウンセリング・心理学専攻)修了。’87年一橋大学商学部専任講師。’92年同助教授。’96年同留学生センター助教授。’99年同教授。’08年より現職。明治大学国際教育センター長。明治大学国際教育研究所長。異文化間教育学会理事長会長。
主な著作に『留学生アドバイジング~学習・生活・心理をいかに支援するか』(共著・ナカニシヤ出版)『学生まちづくらーの奇跡』(監修および分担執筆・学文社)『多文化社会の偏見・差別』(共編著・明石書店・前著ともに近刊予定)などがある。
留学生政策についての最近の研究報告についてURLアドレスはコチラ↓
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~yokotam/

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現場発「異文化間教育」のパイオニア

横田研究室の入る和泉「研究棟」
工事中の和泉キャンパス正門

明治大学国際日本学部は’08年開設の学部(国際日本学科だけの単科学部)で、第1期生がこの春卒業を迎える。同学部教授で今回紹介する横田雅弘先生にその新学部の特徴から語ってもらおう。

「この学部のコンセプトは『日本を国際的な視点でとらえ直すこと』にあります。つまり日本を新たに発見し再評価して、それらを世界に向けて発信していこうというわけです」

日本について学ぶなかで学生たちは自然と「(日本人としての)自分とは何なのか?」を考えるようになる。つまり、各自のアイデンティティーが問われることにもなっていく。

「日本について学ぶといっても、古い伝統文化や宗教、さらにアニメや現代アートまで対象はじつに多様です。当然のこととして学生側の関心もさまざまです。そうしたことに応えられるように各方面の専門領域の教員が多数集められているのがこの学部の特徴ですね」

このように大いに注目される明治大学国際日本学部。さらに同学部では、日本語と英語の指導に力を入れていること、外国人留学生を積極的に受け入れていること、そのために全科目を英語で履修できる「English Track」と呼ばれるコースを設けていること(授業は日本人学生の履修も可)――なども特長といえる。

そこで横田先生のご専門だが、前任の一橋大学勤務のときには、21年間にわたって外国人留学生の心理カウンセリング、そして地域のなかで外国人が住みやすい環境をつくる活動などをされてきた。

「大学教員が外国人留学生の面倒をみるというと、学業面のフォローと思われがちです。しかし私たちは、地域での生活面から心理的問題まで全面的に留学生たちをサポートしてきました。
日本の風習や偏見などに起因するカルチャーショック、家庭ゴミの出し方などその地域で暮らしていくうえでの複雑な諸ルール、家族同伴で来ている既婚留学生とその家族へのケア、日本人学生や留学生同士の人間関係等――などサポートが必要なことはたくさんあります」

こうして横田先生は一橋大学に「留学生相談室」を立ち上げた。そして留学生支援体制を整え、大学周辺地域の住民にも働き掛けて細かな留学生支援ネットワークを構築してきた。

「留学生から寄せられる相談は年間1600件を超えていました。ですから、1対1の個別対応だけではとても対応しきれないのです。学内外の制度を整えて、問題が起こりにくい地域や大学をつくっていくことが必要だったのです」

留学生支援活動から展開した「まちづくり授業」

新装なった「メディア館」
新築中の和泉キャンパス図書館

こう語る横田先生の留学生支援活動は、その後さまざまな新しい活動を生み出した。その最たるものがまちづくり活動である。

「留学生たちのための住居探しでは、前任一橋大学の地元である国立市の方々と話し合ったり交渉したりする機会が多く、その関係から自然にまちづくりにも参加するようになりました。
そこで授業として『まちづくり』を開講し、古い団地内のシャッターを閉めて閉店した商店4店舗を借り受けて、学生カフェや地場野菜販売店・多目的ホールなどを展開しました。
その後わたしは転任でこの活動から離れましたが、いまでも学生が参加するNPO法人としてこれらの店舗は黒字経営を続けています」

ところで明治大学は現在、JR中野駅北口に新キャンパスを建設中で、完成する2013年春から国際日本学部と同大学院は拠点をそちらに移すことになっている。横田先生は、現在開講している授業「地域国際化教育論」のサブタイトルに「中野研究」を掲げているが、すでにそこからまちづくりサークルも立ち上がった。

こうした活動は、横田先生の異文化間教育の基本方針になっている。すなわち学生が現場に責任をもって参加し、多様な年齢や社会背景の違う人々との葛藤や協働を体験することが大切な学びになるという考えだ。これを先生は「現場生成型教育」と命名している。

もうひとつのゼミ活動「ヒューマンライブラリー」

明治大学和泉キャンパスの中庭
最寄り駅の京王線「明大前駅」

そんな先生の研究キーワードである「異文化間教育」について聞いてみると――

「じつは『異文化』というのは外国を意味するだけではありません。我々の周辺にいくらでもあるのです。人には多様な生き方があり、それを知ることができることもこの『異文化間教育』の大切なテーマになってきます」

このような観点から横田先生は、国際交流の活動だけでなく、障がい者やセクシュアルマイノリティーなど誤解や偏見を受けやすい人々を一堂に会して彼らに「本」になっていただき、「読者(来館者)」に貸し出す「ヒューマンライブラリー」という先駆的な試みをおこなっている。

2011年12月に実施されたこのイベントでは、「性同一性障がい者」「全盲パラリンピック日本代表選手」「障がい者プロレスラー」「ホームレス」「顔面にあざのある人」――など30冊もの「本」(人)が集まったという。

この毎年1回開かれる「ライブラリー」は横田ゼミでも最大のイベントとなる。これはゼミ生たちにとって貴重な経験になっているようだ(同ライブラリーは一般にも公開されている)。あらためてゼミ生たちへの指導方針についてはこう語る。

「社会的な責任がとれる人、主体的に動くことのできる人、自ら意思決定のできる人――そんな人に育ってほしいと思っています。まぁ、わたしの授業やゼミ演習をとれば自然に(というか嫌でも)そうなって行きますけどね(笑い)」

こんな生徒に来てほしい

現場に飛び込んで自分の力を試したいという人に来てほしいです。大学に入ったら、自らのもてる力を最大限社会とつながりながら発揮してみたいと思う人、そういう意欲のある人にぜひ来ていただきたい。いま現実にどれだけの能力が備わっているのかどうかはあえて問いません。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。