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GOOD PROFESSOR

東京電機大学
情報環境学部

武川 直樹 教授

むかわ・なおき
1951年東京生まれ。’76年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。’76年日本電信電話公社(現NTT)入社。’92年工学博士(早稲田大学)。’94年NTTデータに異動。NTTコミュニケーション科学基礎研究所を経て’03年より現職。ハイテクリサーチセンター長併任。
著作には『ネットワーク技術の基礎』(森北出版)『「コンピュータビジョン」技術評論と将来展望』(新技術コミュニケーションズ)がある(共著)。
武川先生が主宰する「インタラクション研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.imlab.sie.dendai.ac.jp

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楽しさ共有システムの実現めざす学際的コミュニケーション研究

武川研究室が入る「14号館」研究棟
千葉ニュータウンキャンパスの正門

広大な敷地に学舎建物が点在する東京電機大学千葉ニュータウンキャンパスは、学習・研究に打ち込むのに最適な、恵まれた環境にある。ここで学ぶのは、情報環境学部の学生と大学院研究科の院生たちだ。同学部と研究科の教授である武川直樹先生に、まずは情報環境学部(情報環境学科だけの単科学部)の特徴から伺った。

「従来の工学系の学問は、通信・コンピューターなどの技術を深め、その技術を使って新しいサービスを追究してきました。情報環境学部では、技術を深めることはもちろん、サービスを使う人の側に立って、使いやすさ(さらには楽しさ)を追究していくことを狙いとします」

このように、技術と人の両面から研究するコンセプトを明確にした学部は、全国でも非常に珍しく、特徴的な取り組みということである。さらに学びのシステムにおいてもこの学部には斬新さが目立つ。

例を挙げてみると、入学時に学生それぞれが自らの4年間の学習計画を立てることをはじめ、授業料の単位従量制、50分間の短時間授業、企業の研究開発テーマに共同で取り組むプロジェクト科目、学部3年春からの研究室配属――など、学ぶ側にとって「おいしい仕組み」がたくさん用意されている。

「このなかで高校生のみなさんに特にアピールしたいのは、3年次から研究室配属になることです。3年次から研究活動に参加することで、いま社会が求めているものにいち早く触れることができます」

与えられたものをこなすだけの受け身の学習態度は、たとえ良い成績をとれても社会では通用しない。研究室に3年次から配属されることで、自ら主体的に動くという一生モノの大事なマインドを鍛えることができる――そうメリットを強調する武川先生であった。

学部理念を具現化させるインタラクション研究

武川先生がセンター長を務める「ハイテクリサーチセンター
「映像会話システム」の評価

そんな武川先生自身の研究室は「インタラクション研究室」という名称だ。

「インタラクションというのは、人と人、あるいは人とロボット、ヒト型のCG(コンピューターグラフィック)キャラクターとのあいだで交わされる表情や視線・しぐさ・言葉などのやりとりを言います。人と人との気持ちの通じるインタラクションを、人間と機械の間で実現すること――これが目下の研究目標です」

21世紀のこの国は「高齢社会」からさらに「超高齢社会」へと向かっている。高齢者の生活ケアの必要性は、まさにニッポン喫緊の社会的課題となっている。

ここで武川先生たちの、画期的なインタラクション型介護システムの研究成果が期待されることとなる。まず第1段階では、独居高齢者が暮らす部屋と遠く離れた息子・娘家族の部屋をネットワークで結び、まるで隣室にいるように気配が伝わってくるような工夫を試みる。

「この段階では、お互いの部屋に置いたモニター画面に、部屋に人がいるときにだけヒト型のアバタを登場させます。その結果、互いに話すことがなくても側にいるという感じが伝わります。次の段階では、CGによる擬人化モニター画面に、相手の動きに応じて動く画面上のCGエージェントが表示され、相手が忙しそうなのか寛いでいるのかが分かるようになります。さらに話す必要があるときには、ネットワーク回線の映像を通じて遠隔地に住む現実の家族とリアルに会話することもできます」

確かに、これならお年寄りも安心できそうだ。このようなITシステムを組み上げるためには、実際の人の行動を細部にわたって分析し、その表情やしぐさを仮想アバタやエージェントに忠実に再現させる必要がある。

そのため本研究プロジェクトには、武川先生を中心にインターフェースや心理・音声処理を専門にする同学部の教員らが参集している。しかも研究室をまたいで大学院生も学部生も参加するという大掛かりなプロジェクトになっているのだ(研究テーマによっては他大学の教員や企業の参加もある)。

「文系と工学系双方の研究者に参加してもらって、まさしく学際的に人間科学を研究しながら、同時に工学的システムの構築をおこなっています。まわりの人がなんと言おうと、このようなやり方がこれからの社会を支える研究として大事だと私は信じています(笑い)」

まさに情報環境学部の理念を、武川先生みずから具現化していると言えよう。

このプロジェクトの研究において特に注目したいのは「遠隔共食における食事コミュニケーション」の研究である。その具体的な例として、地方に独居する高齢者が都会で暮らす子ども家族たちとモニター画面を介しながら、いっしょに食事をするようなケースがあげられる。こうしたシステムがあれば、独居高齢者ばかりでなく、多くの人に生きる楽しさを感じてもらえることだろう。

厳しさで定評の研究室で一生モノの自主性を育む

エージェントとの会話システム
ロボット・エージェントとの対話

さきの武川先生の話にもあったように、情報環境学部の学部生の研究室配属は3年次の春からとなる。ただし武川研究室は、学生たちの間では「厳しい研究室」という評判が立っているそうだ。

「3年生を研究室に受け入れるにあたり、大学院生とわたしとで面接をして選抜しています。まず、やる気があるかどうかが選抜の決め手になります。大学院生を面接に加えているのは、希望学生がうちの研究室できちんとやって行けるのかどうかを同世代の目で判断してもらいたいためです」

研究室に配属になると、まず3年次前期では、武川先生から与えられる課題で実験を重ね、さらに学生主体で専門分野の本や論文の輪講をおこなって実践的な技術力をつける。そして後期になると「プレ卒業研究」へと挑んでいく。

「研究室内には各プロジェクトが進行していますから、その中から研究テーマを設定し『プレ卒研』に挑んでもらいます。その結果がよい場合には、さらに研究を発展させて4年次の卒業研究につなげることになります」

あらためて学生・研究生たちへの指導方針については次のように語る。

「自主性をもった学生・技術者を育てたいという思いから、でき得る限り学生たちの意思を尊重しています。しかし、それでいつもうまくいくとは限りません。つまり、研究室の学生全員に同じやり方で接してもあまり効果的ではないのです。結局、それぞれの学生の個性に合わせた個別指導が大事だと思います」

自らのプロジェクトに注力しつつも、次世代を担う学生たちにいかにモチベーションを持たせるか心を配っていることが十分に伝わってきた。

事務部・学生ラウンジもある「1号館」

こんな生徒に来てほしい

まずは「野望をもった人」でしょうか。せっかくこの世に生をうけたからには、何かを成し遂げるんだというモチベーションをもってほしい。たとえそれが何かまだ分からないとしても、せめて「一生かけて何かをやるぞ」という気持ちだけは持ちましょう。
それから、自分だけ良ければいいという人はつまらないですね。自分はなにか社会の役に立てると信じられる人、そんな人が研究室に来てくれたら素晴らしいです。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。