早稲田塾
GOOD PROFESSOR

成蹊大学
経済学部

野島 美保 教授

のじま・みほ
東京生まれ。'95年東京大学経済学部卒。'95年朝日監査法人(現あずさ監査法人)入社。'02年東京大学大学院経済学研究科企業市場専攻博士課程単位取得退学。'02年成蹊大学経済学部専任講師。'05年同助教授。'07年准教授。'11年より現職。
主な著作に『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』(NTT出版)『オンラインゲームビジネスの基礎知識~産業構造とビジネスモデル』(共著・コンピュータエンターテインメイト協会)『フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来』(分担執筆・日本経済新聞社)などがある。

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電子ビジネスを経営学視点から読み解く

野島研究室が入る10号館「研究棟」
成蹊大学キャンパス正門プレート

成蹊大学経済学部の野島美保教授には、大学院生時代、研究室に寝袋を持ち込みながら泊まり込んでオンラインゲームに熱中し続けたというエピソードがある。

「ゲームに限らず受験勉強でも研究でもなんでも、いったん熱中すると我ながら一気にのめり込んでしまうタイプなのですね」

そう言って笑う野島先生だが、そうしたゲームへの熱中が現在の情報戦略の研究へと連綿とつながっていることに驚かされる。しかも、まだ誰もなし得ていない未踏の研究領域を切り開くことになっているのだ。

そんな野島先生のご専門は「情報戦略論」「経営情報論」である。その具体的な研究課題は、通販サイトやオンラインゲームなどインターネットの仮想世界を経営学の視点から読み解くという独特のものになっている。

「わたしがこの研究をする理由は、『インターネットは人々を幸福にするのか』を知るためです。便利な世の中にするために技術の進歩が目指されますが、社会科学の視点からみると、それが人々の幸福につながらないことも起きます。インターネットについても、技術面だけでなく、利用する私たちの行動や心理について分析する必要があります」

たとえば初期のオンライン上の電子商取引(Electronic Commerce=EC)では、その利便性は理解されながらも、一般に浸透するのには思いのほか時間がかかった。つまり技術的なインフラ環境が整っても、なかなか人々のライフスタイルを簡単に変えられるとは限らないのだ。しかし、ITデジタル革命や情報端末普及などの時流がいったん到来すると――

「ECが普及すると、インターネット通販と対比して、従来の実店舗での買い物行動について見直すことが出来るようになります。最近では、ゲームの仮想アイテムなど、他の用途のない実体のないものまで売られます。仮想アイテムがなぜ売れるのかを分析することで、『モノを買う・売るとはどういう行為なのか』をあらためて考えることができます。『便利・必要だから買う』のひと言で済ませていた今までの常識について再考するキッカケにもなるのです」

従来の商慣習を問い直すようなこうした現象から何が読み取れるのか――これこそが現在の野島先生の研究課題となる。経営学ばかりでなく学際的な知見をも総動員して、課題解明に取り組んでいる日々なのだ。

未だだれもが手がけたことのない新分野だけに、どんな結論が導き出されるのか興味は尽きない。

自由度の高い少人数ゼミ形式の経済学部プログラム

伝統ほこる成蹊学園本館建物
成蹊キャンパス点描

成蹊大学経済学部は経済経営学科だけの単科学部である。同学部は、(1)社会と環境(2)組織と人間(3)企業と戦略(4)金融と会計(5)地域と政策――の5つのコースからなる。それら各コースの特徴についても聞いてみた。

「本学経済学部には5コースが用意されていますが、コースに分かれて学ぶのは2年次からになります。1年次の1年間はいろんな科目をダイジェストで学んで、2年次から進むコースを絞り込んでもらいます。各コースとも定員を設けていませんので、学生さんは自分が進みたいコースを自由に選ぶことができます」

さらに2年次以降それぞれのコースに分かれてからも、コースの枠を越えて好きな科目を履修することもできる。その組み合わせによっては、経済関係と経営関係双方の科目履修も可能になる。いずれもが学生本位の制度で、当然ながら学生たちに大好評なのは言うまでもない。

ちなみに野島先生が所属担当するのは「企業と戦略コース」である。さらに、これら諸制度に加えて成蹊大学経済学部には2つの特別プログラムというのもある。

「5コースにおける学習とは別に、さらに上級のことを学びたい人のための特別プログラムで、『国際社会プログラム』と『情報分析プログラム』の2つが用意されています。こちらは定員のある選抜制です。いずれもその講義は少人数のゼミ形式でおこなわれ、実践型のカリキュラムになっています」

野島先生もこの特別プログラムにおいて「情報分析特殊講義」を指導担当している。

知識量よりも未来を見通す頭の柔らかさを育みたい

ブックセンター・食堂のある学生会館
成蹊学園100周年のフラッグ

成蹊大学経済学部のゼミ演習は、1年次から4年次まですべて用意されているのが特徴といえよう。1年次の「基礎演習」にはじまり、2年次がコース別の「コース演習」、3年次の「上級演習Ⅰ・Ⅱ」、4年次の「卒業演習」へと続いていく。

各教員がどの演習を担当するのかは年度ごとによる。ここでは、野島先生の「コース演習」と「上級演習Ⅰ・Ⅱ」から、後者の上級演習についてお話しいただこう。

「上級演習はⅠ・Ⅱ半期ずつで1年かけておこなわれますので、まず文献講読で基礎的知識を身につけてもらいます。そのあとeビジネスの企画立案のプロジェクトを立ち上げて、実践的な研究に入ります。最近はカジュアルなゲームを中心に、こんなゲームがあったら良いなというようなものを企画してもらっています。でき上がった企画はゲーム会社などにプレゼンテーションをして、担当プロデューサーの方からコメントもいただくようにしています」

プロによる第一線からのコメントが直接もらえることで学生たちの意欲も大いに上がるようだ。
あらためて学生たちへの指導で心掛けていることについては次のように語ってくれた。

「一般講義でも演習でも同じですが、自ら考えてオリジナルなプランを立てなさいと指導しています。わたしが目指しているのは、暗記による知識の量を競うものではありません。いま求められるのは、将来どうなるのか? どうすればいいのかを見通すための頭の柔らかさなのです」

しかし知識量を競っても――としながらも、かといって知識の引き出しが空っぽでは創造的ビジネスの場で意味をなし得ないのは言うまでもない。

「基礎的な知識を身につけながらも、それぞれ実際的なケースで自分だったらどうするのかを考えることが重要なのです。わたしの授業では、毎回前半で必要な知識についての講義をして、後半で学生さんそれぞれで自らが経営者・開発リーダーだったらどうするかなどを考えてもらうようにしています」

こんな生徒に来てほしい

じつは「こんな学生に来てほしい」と考えたことがないので、うまく答えられません。むしろ、教員として日々考えているのは、来てくれた学生さんをどう導いていくのかということです。強いて言えば一所懸命にやれる人ならうれしいです。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。