早稲田塾
GOOD PROFESSOR

明治大学
情報コミュニケーション学部

江下 雅之 教授

えした・まさゆき
1959年神奈川県生まれ。’83年東京大学理学部数学科卒。’83年三菱総合研究所入所。’93年仏エセック経済商科大学院大学修士情報システムマネージメント研究科修了。’94年仏パリ第1大学大学院修士数学・統計学・情報工学研究科中退。’95年仏パリ第3大学大学院修士情報コミュニケーション学研究科中退。’01年目白大学人文学部現代社会学科助教授。’07年同社会学部社会情報学科教授。’08年明治大学情報コミュニケーション学部准教授。’11年より現職。電気通信普及財団賞(テレコム社会科学賞、’01年)。
主な著作に『監視カメラ社会』(講談社)『レポートの作り方』『ネットワーク社会の深層構造―「薄口」の人間関係へ―』(前著ともに中央公論新社)などがある。
江下先生が主宰するWebサイトのURLアドレスはコチラ↓
http://www.eshita-labo.org/

  • mixiチェック

「革命」が止まらない情報コミュニケーション研究

研究室のコタツに入る江下先生
江下研究室が入る明治大「研究棟」

明治大学の情報コミュニケーション学部(情報コミュニケーション学科だけの単科学部)は、「高度情報社会で活躍する主体性を持った人材育成」を高らかに標榜している。この注目すべき学部の特徴について同学部教授の江下雅之先生は次のように語る。

「情報コミュニケーション学部の特徴は、学部名である『情報コミュニケーション』という切り口にあります。わが国の大学で、このキーワードを冠した学部をもつ大学は実は思いのほか少ないのです。しかし欧米の多くの大学では以前からこうした文理の枠を越えた学部が開設されて研究も盛んになされています」

情報コミュニケーションというと、人と人とが意思疎通を図るための単なる手段ツールなどと考えられがちだ。しかし江下先生は、もっと幅広くとらえることでその決定的な重要性が大いに高まるとも強調する。

「他人に影響を与える行動や現象全般――これがコミュニケーションと定義されます。たとえば人と人との会話はもちろん、教室での授業、読書や著述、映画やテレビの鑑賞・製作なども含まれます。そうしたコミュニケーションの原理やメカニズムの法則、あるいは与える影響などについて研究していく学部といえます」

さらに情報コミュニケーション研究の切り口には、メディアやジャーナリズムと社会のあり方、携帯電話・スマートフォンなどのモバイル端末、情報源ニュースソースをめぐる諸問題、さらにはブランド(企業)と人々(消費者)との関係など、いくらでも研究するテーマがあり得るということも説明してくれた。

「先験的ネットワーカー」世代は情報弱者にあらず

明治大学駿河台キャンパスの建物群

江下先生自身の専門分野は「社会学」そして「メディア社会論」「情報社会論」「社会ネットワーク論」だ。目下の研究課題はと問うと、「先験的ネットワーカーのネットワーク利用状況の変化」とすぐにこたえてくれた。

「インターネットを利用するのは若い人という風潮があり、それは統計データでも証明されています。しかし個人がネットを利用できるようになって25年ほどにもなり、当時若者だった人たちもいまや中高年に達しています。そうした4半世紀前に飛びついた新しいモノ好きの中高年ネットワーカーたちについて調査してみますと、彼らは今もって次々と新しいITツールに挑戦していることも分かってきました」

もはや単純に人を年代別に区切って、中高年だから「情報格差」(Digital Divide)上の弱者層などと簡単に規定することなど出来ない時代に突入しているということなのだろう。

このほか江下先生の研究成果には、「ネットオークションにおける入札行動の定量的分析」「ソーシャル・ネットワークの構造分析」などもある。さらに今後の研究課題については次の2点を挙げてくれた。

「まずは、ギャルメイクに茶髪といった格好をした母親達、いわゆる『ギャルママ』に注目して、彼女たちが助け合いのネットワークをつくる過程、とくに子育ての助け合いについて社会学的に追ってみたいと思っています」

このギャルママ研究は、中央大学の教授との共同で計画されているもので、いよいよ今年夏から本格始動する予定という。
さらに、もうひとつの研究テーマについては――

「こちらは、人々による一定のコミュニケーションの場所『たまり場』の変遷についてのメディア社会論的な研究です。江戸時代の髪結い・井戸端などから最先端の『SNS』(social networking service)までのコミュニケーションの変遷をたどりながら、日本と欧州等との比較や相互監視という視点からも調査しようと考えています。分野としてはメディア史に属することになりますね」

昔ながらの口コミが持つ庶民文化の豊かさと社会性・政治性、さらに、いまや「アラブの春」や「反格差・反原発デモ」など、世界共通の武器ツールとなった「facebook」や「twitter」など、それらを一体的に社会学的視座でとらえ直そうという試みらしい。いまから江下先生ならではの研究成果が大いに注目される。

ちなみに、古い雑誌の創刊号や名作漫画の初版単行本の収集家としても江下先生はつとに知られる存在でもある。ただ、その詳細に触れる余裕は今回ないのが少し残念だ。

企業への実戦的企画提案で得る一生モノのプレゼン経験

明治大学の新シンボル「リバティタワー」

明治大学情報コミュニケーション学部の専門ゼミ演習は、1年次の「基礎ゼミナール」を手始めに、2年次の「問題発見テーマ演習」、3年次の「問題分析ゼミ」、4年次の「問題解決ゼミ」へとつながっていく。

なお1年次から3年次のゼミは独立して募集されており、実質的には3~4年次のゼミが一貫した専門ゼミということになる。江下ゼミでは例年定員いっぱいの20人ものゼミ学生を受け入れているという。

「入ゼミ希望者が多い年は40人ほどにもなることもあり、いつもわたしが直接面接をして選抜します。選抜の基準は、グループ活動が主体のゼミですから、それぞれの役割分担に適した人材を確保するようにしています」

まず3年次「問題分析ゼミ」の活動は前・後期に分かれ、前期では毎年テーマを決めて専門書を輪読していく。ちなみに2011年度はずばり「ソーシャルメディア」が共通テーマであったという。

次いで3年次後期では、第一線の情報企業(IT関連・出版・広告代理店等)から実践的テーマを出してもらい、グループ別に企画を考えてゼミとしてプレゼンテーション活動を進めていく。

「これは各企業サービスのユーザビリティー(usability)について調査して、学生たちの視点から新たな企画提案をしているものです。今年度はある広告代理店に出した企画が注目され、そのグループの学生が実際のビジネスミーティングに招かれて説明までしています」

こうした一生モノの貴重な実践経験によりゼミ全体の士気が大いに上がることにも直結するのは想像に難くない。あらためて、こうしたゼミ生たちへの指導方針については次のようにも語る。

「簡単にはへこたれない学生を育てたいと思っています。うちのゼミは、拘束時間が長く作業量が膨大であるなど、かなり厳しいゼミとして学内でも定評があるみたいです(笑い)。苦労に苦労を日々重ねることで面白いことにたどり着く。それこそがウチの基本ですからね」

こうして毎週火曜日のゼミは、夜9時過ぎまでぶっ通しの濃密な演習内容となることも稀ではないらしい。

「情報総合型」方式導入など学部入試改革へ準備進む

学生が行き交うリバティタワー前広場

さて2004年の学部開設以来、各界からの注目のなか実績を積み上げてきた明治大学情報コミュニケーション学部。2013年度からは入試方式などを一部改革して、さらなる充実を図るプロジェクトが進行しているという。
そうした改革推進の中心人物でもある江下先生にこのあたりの最新事情をくわしく伺った。

「まず学部全体の定員400人を450人に増やします。増員分はいずれも入試枠で、内部推薦や特別入学枠での増員はありません。また、これまでの「一般選抜入学試験」は外国語(英語)・国語と、地理歴史・公民・数学から1科目選択の方式で選抜してきましたが、これを『A方式』としつつ、新たに定員20人枠の『B方式』を設けて導入する予定になっています」

注目のB方式の試験科目は外国語(英語)と数学・情報総合の3科目。このうち情報総合は高校の情報の授業に対応したものになる。こうした新入試方式導入の目的についてはこう説明してくれた。

「学部名に情報をうたっていますので、もっと情報自体に興味がある学生に入ってもらいたいということ。さらに数学を必修科目にすることで、データ分析や計量分析が得意という学生も求めたいということに尽きます。文理融合の学際的な学部として多様なタイプの学生を集めたいわけですが、従来それほど多いとはいえなかったタイプの学生を増やしたいという狙いもあるわけです」

さらに明治大学情報コミュニケーション学部では、この入試改革を第1弾として第2・第3の改革についても用意があるという。ますます魅力を増していく同学部からしばらく目が離せそうにない。

こんな生徒に来てほしい

この学部に向いているのは、まずフットワークの軽い人ですね。宿題などでいやいや始めた勉強課題であっても、自分で取り組んでいるうちに面白さに目覚めてしまうような人、言われてもいないことまでついでに調べてしまうような人も向いていると思いますよ。
私たち教員側も、前例がないからダメなどとは言わずに、自ら道を切りひらく勢いで学んでもらえるよう指導しているつもりです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。