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GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
大学院総合国際学研究院

斎藤弘子 教授

さいとう・ひろこ
東京生まれ。’85年東京外国語大学大学院外国語学研究科修士課程修了。’93年英ロンドン大学(UCL)音声学・言語学科大学院修士課程修了。’88年東京外国語大学外国語学部助手。’91年同講師。’96年助教授。’07年同准教授。’08年同教授。’09年より現職。
主な著作に『新装版英語音声学入門』(大修館書店)『大人の英語発音講座』(NHK生活人新書・前著ともに共著)『ライトハウス英和辞典第5版』(編集委員・研究社)などがある。
斎藤先生が主宰するWebサイトのURLはコチラ↓
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/Saito/saitozemi/index.html

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英語独特の音声・音韻の仕組みを研究

斎藤研究室が入る研究講義棟
正門を入ってすぐの「アライバルコート」

これまで東京外国語大学は外国語学部だけの単科大学であったが、今年度(2012年度)から「言語文化学部」と「国際社会学部」の2学部体制が敷かれてスタートした。これについて同大学総合国際学研究院の斎藤弘子教授に話を伺った。

「2学部制にはなりましたが、入学して2年次の途中まではそれぞれが選択した言語とその言語地域にかかわる基礎的な教養科目を履修します。ですから、そのあいだは同じ言語を選択した両学部の学生が同じ教室で同じ授業を受けることになります」

そして2年次の後半あたりから、学部ごとに専門科目の授業が始まる。

「言語文化学部は、世界で話されている言語を中心にして、その言語が使用されている地域の文化あるいは言語そのものについて学びます。国際社会学部は、ある地域の歴史や政治、社会の仕組みなどについて幅広く学ぶことになります」

両学部ともコース制を敷き、言語文化部が(1)言語・情報(2)グローバルコミュニケーション(3)総合文化、国際社会学部は(1)地域社会研究(2)現代世界論(3)国際関係の各3コースになっている。

ところで斎藤先生のご専門は「英語学」だ。学部全体1~2年次を対象にした英語指導と、2年次後半から始まる専門課程では、言語文化学部「言語・情報コース」での指導を担当する。

「東京外国語大学で英語を学ぶためには、高校の授業で教えられる英語を勉強しただけでは不足かもしれません。授業のほかにも、普段から英語で書かれた新聞や雑誌の記事を、ウェブサイトにアクセスするなどして読むくらいの努力は必要でしょうね」

といっても、帰国子女並みの英語力まで必要というわけではないそうだ。

非ネイティブ英語習得のための「音声学」研究

東京外国語大学キャンパス点描
「プロメテウスホール」の入る「アゴラ・グローバル」

斎藤先生がいま研究課題としているのは「英語音声学」と「音韻論」である。果たしてどんな学問分野なのか?

「人間の話すことばには『音声』があります。つまり発音のことで、英語の発音について研究するのが『英語音声学』です。その同じ英語でも、イギリス圏・北米圏・オセアニア圏では発音がずいぶん違いますし、同じ国内でも地方によって様々な方言が話されています。そうした発音の違いや変化について細かく研究しているわけです」

とくにイギリス本国では、その発音だけで貴族であるとか労働者階級であるとか、身分階級や出身地までも分かってしまうという。ところで、日本人には英語の発音を苦手とする人が多い。この問題について斎藤先生はこう解説してくれた。

「よく知られているのが、『V』と『B』の発音の区別が難しいという問題です。これは、日本語には『バビブベボ』の発音はありますが、唇と歯を組み合わせてする『V』の発音がないという事情があります。また『L』と『R』についてはどちらの発音も日本語にはありません」

そのため、「V」や「L」「R」が英単語のなかに出てくると、日本式の「バビブベボ」「ラリルレロ」でつい発音してしまうのだという。

「すると相手に、『VEST』が『BEST』に、『RIGHT』が『LIGHT』に聞こえてしまうことになります。母語にない言語の発音をマスターするのは大変な困難が伴うのです」

こうした英語が母語でない人たちの英語発音の特徴というのも、英語音声学の大事な研究テーマだという。もう一つの研究課題である音韻論については――

「音声学が発音の生理学的・物理学的な側面についての研究であるのに対して、音韻論はある言語の音声にあらわれるパターンを見いだしていく研究分野です。使われ方のルールとか、その現われ方のパターンなどを追究していきます」

ただし、これら音声学と音韻論は一体のものとして考えなければならないという。その研究対象たるや膨大な量にのぼり、しかも言語は刻々と常に変化している。気の遠くなりそうな研究分野でもあるのだ。

語学研究の奥深さと楽しさを体感するゼミ

昼休みの中央広場に憩う学生たち

前述したとおり、斎藤先生は言語文化学部言語・情報コースで「英語音声学」と「音韻論」を講じている。それと同時に、同じ音声学と音韻論をテーマにした専門ゼミ演習も主宰している。ゼミの対象は3~4年次の学生で、毎年各5~8人の受講生がいるという。

「3年次のゼミ生には、まず英語の発音記号を学んでもらいます。それも英語辞書に載っているようなものではなくて、かなり細かな専門的な発音記号です。それと併行して英語を聞きながら、それを発音記号で書き取り、アクセントやイントネーションについてもチェックしていきます。
これを半年間みっちりやることで、様々な英語の発音の特徴に気付いてもらうのです。後期は各人が音声について興味をもっていることを研究しリポートを書いてもらいます」

このリポートは、もちろん英語での執筆が義務づけられる。この提出結果がよいと、そのまま4年次の卒業論文の研究につながるケースもある。もちろん新たに仕切りなおして別テーマの卒論研究に向かう人もいる。あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「なにも知らない状態で入学してきた学生でも、この大学で4年間学ぶことで各分野の専門家に少しでも近づいてほしいと思って指導しています。そうはいっても知らないことは幾らでもあるわけで、そんな時にどうやって調べたらいいのか、その方法論をちゃんと身につけて欲しいですね」

東京外国語大学生といえば、語学について自信のある人が多いはず。その俊英たちの多くが斎藤先生の音声学・音韻論の教えを受けて目が開かれたようになるらしい。語学研究の奥深さと、言語を学ぶことの楽しさを改めて知るからであろう。そうした様子は、斎藤先生の研究室のホームページに寄せられたゼミ生たちのリポートで読むことができる。

こんな生徒に来てほしい

本学は世界の言語や文化を学ぶ大学ですので、言語に興味のある方が前提となります。外国の文化・社会についても、そこに住んで暮らしている人々への興味がある方々にぜひ来ていただきたい。
自らの周辺だけにしか関心を向けられないような人は向いていないかも知れません。広く世界に目を向けて、日本以外においても人々が長い歴史の中つくりあげてきたものに関心をもってほしいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。