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GOOD PROFESSOR

東京学芸大学
総合教育科学系 教育心理学講座

松尾 直博 准教授

まつお・なおひろ
1970年福岡県生まれ。’98年筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。’98年東京学芸大学総合教育科学系教育心理学講座助手。’00年同講師。’03年同助教授。’07年より現職。この間’05年米ジョージア大学教育学部カウンセリング・人間発達講座客員研究員。臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。
主な著作に『子どもの福祉―発達・臨床心理学の視点から』(福村出版)『教師のための学校カウンセリング』(有斐閣)『教育心理学 保育者をめざす人へ』(樹村房)などがある(著作はいずれも編著)。

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混沌を生きる世代に寄り添う臨床心理学

松尾研究室が入る人文社会科学系研究棟2号館
東京学芸大学キャンパスの正門

東京学芸大学教育学部は、教員の養成を主目的にした「教育系」と、教育に関する各分野の専門的なことを学ぶ「教養系」からなる。同大学総合教育科学系教育心理学講座に所属する松尾直博准教授は、主に教育系では「学校心理選修」、教養系では「カウンセリング専攻」の教壇に立つ。まずは、所属する総合教育科学系教育心理学講座について伺った。

「この講座には15人の教員が所属しており、さらに3人の教育実践研究支援センターの教員が学部教育に加わります。それぞれの専門領域は基礎から応用までと幅広く、乳幼児から高齢者までの心理学をおもに扱っています。この18人で学校心理選修20人・カウンセリング専攻30人(ともに1学年)の学生を指導していますが、教員の学生対比の面では非常に恵まれていると言えます」

教育系と教養系での指導の内容については次のように説明してくれた。まずは教育系について――

「学校心理選修で学ぶことにより、心理学の専門性を身につけた小学校教員になることができます。これによって児童や保護者へのカウンセリングが出来るようになりますし、授業においても子どもが理解しやすい教え方が可能になります。学習でつまずいている児童の発見も早くなって、そのつまずきへの対処ができるなどのメリットもあります」

一方、教養系の指導内容は――

「カウンセリング専攻で学ぶ学生の多くはカウンセラーをめざすことになります(正式にカウンセラーになるためには基本的に大学院の修了が必要)。こちらは児童や生徒ばかりでなく、成人や高齢者へのカウンセリングも視野に入れており、心理学を通して社会全般への貢献も可能になります」

このほか、地域の人々とふれ合ったり実際に困難を抱えている人たちに会ったりする機会も多いので、実践面で大きく鍛えられるのもこの講座の特徴だろうと語る。

答えを教えてくれるのは子ども自身

学芸大学小金井キャンパス点描

松尾先生の専門は「臨床心理学」「カウンセリング心理学」「学校心理学」だ。これら3つは先生のなかでは統合されているという。

「わたしが扱っていますのは、幼稚園児から高校生くらいまでを対象として、その発達とつまずきについての研究になります。わたし自身スクールカウンセラーをしていることもあって扱う範囲は広く、心身に障碍のある子、いじめの被害・加害、不登校、友人関係や家族の問題で悩んでいる子、ストレスや心身の不調が原因で苦しんでいる子など実に多様です」

ここで自ら語るように、松尾先生は東京学芸大附属の幼稚園と小・中学校でスクールカウンセラーもしている。

「いくら詳しく書かれた専門書を読むよりも、実際の子どもたちから教えられることのほうが多いですね。答えを教えてくれるのは、問題を抱えている子どもたちの方だというのが持論です」

そんな松尾先生のスクールカウンセリングの特徴は、相談予約によって個別のカウンセリングをすることもあるが、基本的には相談室をオープンルームにして誰でもが遊びの感覚で来られるようにしていることだという。

「スクールカウンセラーの役目は、問題が深刻化する前に発見して解決することにあります。ですからオープンルームで遊んでいる子どもたちを観察したり、わたしとの会話のなかから問題の芽を見つけ出したりして、深刻化する前に問題解決を図るように心掛けています」

まさに理想に近いスクールカウンセリングのかたちと言えよう。ただ、この方法を用いるには高度なカウンセリング技能が必要となる。

「わたしがカウンセリングで実感したものは、学生たちに伝えるようにしていますし、わたしのカウンセリング仲間にも、この方法を取り入れる人が増えています。ですから徐々にではありますが広まっていると思いますよ」

このほか、ある市全体の不登校状態にある子どもたちについて、教育委員会や地域と連携しながら支援するプロジェクトを進行させてもいるという。

多様な人にかかわってカウンセリング力を高める

いっせいに新緑芽吹くケヤキ並木

教育心理学講座の学部生の研究室配属は3年次の6月ごろとなる。配属先については、本人の希望を考慮しながら3年生の担任教員が決める。松尾研究室では例年4~6人の学生を受け入れている。なお学校心理選修とカウンセリング専攻の学生は、18人いる教員の研究室のどこでも配属希望ができる。

「うちの研究室では研究面と実践面の両面から取り組んでもらいます。まず研究では、それぞれが興味をもっている課題について夏休み中に調べて、後期に入ってそのプレゼンテーションをしてもらうことになります。その結果によって、学生によっては最初に決めたものと同じテーマで卒業研究を進めますし、新たな文献や資料から別のテーマを探す学生も出てきます」

一方、実践面については、大学院生によるオリエンテーションから始まり、大学院生や4年生が関わっている現場に徐々に参加し、経験を積んでいく。これにより何をするべきかが明確になって意欲の高まっていく学生が非常に多いということだ。
あらためて学生指導のうえで心掛けている点については次のように語る。

「まずは、自ら判断できる人になってほしいですね。教育の現場でもカウンセリングの現場でも、判断するのは自分しか基本的にいません。それが1人の子どもさんの人生に強い影響を与えるという意識をもってほしいですね。そのためにも、自分とは違う立場にいる多様な人々となるべく多く関わるようにして、コミュニケーション能力を育ててほしいとも思います」

じつは松尾先生について、同じ東京学芸大学教育心理学講座のある教授がこんなことばを寄せてくれた。

「教育相談・集団指導や児童との交流などに積極的に参加させて、実践的な高い能力を身に付けさせる指導力では群を抜いていた存在。授業のうまさも学内トップクラスです」

こんな生徒に来てほしい

いろいろと考えたり感じたり調べたりして自ら確かめようという気持ちのある人に来ていただきたい。教育や心理学系で注意しないといけないのは、先入観や思い込み・うわさなどに飲み込まれてしまう危険が常にあることです。
なんの課題についても「本当にそうなのか」という疑問を常にもっていてほしい。そうした姿勢が研究での新発見につながり、まわりの評価にとらわれない実のあるカウンセリングにもつながるとも思うからです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。