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GOOD PROFESSOR

電気通信大学
情報理工学研究科 情報・通信工学専攻

川端 勉 教授

かわばた・つとむ
1955年富山県生まれ。’80年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了。’80年総理府行政管理庁入庁。統計審査官室勤務。’82年電気通信大学電気通信学部助手。’94年同助教授。’02年同教授。’10年学部改組により現職。この間’87年米スタンフォード大学客員研究員。
主な論文として『The rate-distortion dimension of sets and measures』(IEEE Transactions on Information Theory)『Statistical composition of high-scoring segments from molecular sequences』(The Annals of Statistics)がある(いずれも共著)。
「川端研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.w-one.ice.uec.ac.jp/jp/kawabata/

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情報と通信の融合を支える情報理論研究

川端研究室が入る「東35号館」
新装なった調布キャンパス「本館」

電気通信大学は国立単科大学であり、学部は(1)総合情報学(2)情報・通信工学(3) 知能機械工学(4)先進理工学の4つの学科と先端工学基礎課程(夜間主)から構成される「情報理工学部」ひとつだけからなる。今回紹介する川端勉教授は同学部情報・通信工学科で教鞭を執る(所属は大学院情報理工学研究科)。
まずは、その電気通信大学情報・通信工学科の特長から話を伺おう。

「4学科のうち情報・通信工学科は本学の中心的な学科だともいえます。戦後に新制国立大学としてスタートするとき、アメリカの数学者N.ウィナー(Norbert Wiener 1894~1964年)が当時提唱していた、サイバネティクス(通信工学と制御工学・生理学・機械工学・システム工学などを統一的に扱う理論、英cybernetics)を大学の中心理念とし据えました。そこから発展したひとつが情報理論です」

伝統と歴史のなかにある電気通信大学情報・通信工学科だが、そこに流れる思想は常に革新的だとも強調する。

「歴史的に古いというより、革新的な流れを引き継いでいる学科だといえます。学科内のコースとして(1)情報通信システム(2)電子情報システム(3)情報数理工学(4)コンピュータサイエンスの4つがありまして、それぞれ3年次から各コースに分かれて学びます」

こう語る川端先生が担当所属しているのは「情報通信システムコース」だ。同コースに属する研究室からは、情報通信の分野において中心的に活躍する人材を続々と誕生させてきた。

川端先生のご専門は、「情報理論(Information Theory)」「情報源符号化(Source Coding)」「データ圧縮(Data Compression)」である。この分野ではわが国を代表する研究者とされる。

「通信とは、電報電話など、メッセージや話者などが発した信号を送信機や受信機を用いて変換することにより相手に伝えることが基本です。情報理論は原理的に通信が可能かどうかを判別したり、可能な場合にはそれを実現する方法を与えたりするための理論です」

巨大諸プロジェクトを基礎から支える世界初研究

初夏の電通大調布キャンパス点描
初夏の電通大調布キャンパス点描

この情報理論について、もう少し詳しい説明をお願いしてみると――

「通信における信号の変換を、スイッチなどの論理操作の組み合わせで実現する通信の方法のことを『デジタル通信』といいます。アメリカの電気工学者C.シャノン(Claude Elwood Shannon、1916~2001年)は、デジタル通信こそが最適な通信の方法であることを明らかにしました。彼が1948年の論文で述べた『通信の本質は情報である』というのは正にこのことを指します」この情報理論はじつに美しく力強い理論で、ネットワーク化する複雑な通信システムの有るべき姿を見通しよく理解させてくれるという。

川端先生の研究は、この「情報理論」の方法を用いて、 通信において信号に生じざるを得ない歪みの最小値を見積もることにあるという。

「通信において文書ファイルなどデジタル化しやすいものは問題ないのですが、音声や画像などアナログ的な情報は量が多いため、デジタル化したうえに縮約(圧縮)して送信しなければなりません。必然的に受信したときに歪みが生じます。それをいかに少なくするのか? これが私たちの研究テーマのひとつです」

ここで川端研究室での研究成果のいくつかについて教示・紹介していただいた。ちょっと列挙してみると……

・フラクタル信号を含む特異信号の族に対して、圧縮率歪み関係を決定する理論の発見。

・信号の歪みの研究で、これまで見捨ててきた2段階量子化方式を再発掘し、それを改善する試み。これが実現すると、これまで使われている標準方式が一変されるという。

いずれも世界初の画期的な研究ということだ。
「90年代にヒトゲノム(Human Genome)の全塩基配列の解読というのが盛んに研究されました。その解読にひろく使用されたプログラム『アライメント法=BLAST法(Basic Local Alignment Search Tool)』というのは、わたしが他の2人の研究者と共同で理論解析した配列類似性検索技術がベースになっているんですよ」

ヒトゲノムの塩基配列の解読計画は、90年代科学界にとどまらず世の耳目を集めた大ムーブメントであった。データ圧縮の解析技術を応用させた川端先生らの研究がそれら世界的プロジェクトを裏側から支え貢献していたのは驚きだ。

教科書を書き換えるほどの本質的研究をめざそう

図書館が入る電通大「東3号館」
大学前を通る国道20号(甲州街道)

電気通信大学情報・通信工学科の学部生の研究室配属は、3年次の12~1月に配属先の決定を経て、4年次4月から正式配属になる。川端研究室でも例年8~9人の学部生を受け入れている。国立大研究室にしては受け入れ学生が多いのは、川端先生をふくめ教員3人体制で応じているからでもある。

「わたしの研究室の特徴として、2つのゼミ演習を開講していることがあります。ひとつはC言語プログラムを学ぶゼミで、もうひとつは情報理論一般について学ぶゼミです。それぞれ約半数が大学院に進学しますので、進学を希望する人には大学院生向けのゼミにも参加してもらっています」

配属の学部生は川端研究室で1年間かけて卒業研究に挑むことになる。その卒研のテーマについては、学生との個別の面談を繰り返しながら先生のアドバイスを踏まえて決められるケースが多い。しかし中には「自分はこのテーマを研究したい」と決めて配属してくる学生もいるという。
あらためて学生指導の方針について聞くと次のように語ってくれた。

「まずは基礎を大切にする指導をしているつもりです。たとえば卒研テーマにしても、最先端のテーマばかりでなく、古いテーマであってもより本質的なテーマを提示して研究してもらうことがあります。本質的なことを基礎から再構築して研究することによって初めて、新たな視点や事実が見つかることもよくあるからです」

そうやって自ら新理論をつくって、それによって既存教科書を書き換えるくらいの気概をもって努力してほしいとも語る。こうして川端先生自らの人生を振り返ってみるとき、「若気の至りというか、いろいろ無謀なことをやってきた」とも感じるとも述懐する。


「ただ、上司・先輩には恵まれたのは幸運でした。当時は大学の雰囲気もおおらかだったというか、学位もない当時のわたしを2年間よくも自由にさせてくれました。振り返ってみると、人生には、多少無謀ではあっても挑戦してないといけないタイミングというものが幾度かあるようですね」

こんな生徒に来てほしい

いまや世の中のすべてが情報と通信とが融合している時代です。これを引き起こしている中心に情報理論があり、これは科学的な奥深さと広がりの双方を併せもった工学理論でもあります。この大学で扱っていく数理が面白いと思える人、基礎に基づいて通信の未来図を描いてみたいと思う人、そのような人が向いていると思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。