早稲田塾
GOOD PROFESSOR

一橋大学
経済学研究科

齊藤 誠 教授

さいとう・まこと
1960年愛知県生まれ。’83年京都大学経済学部卒。’83年住友信託銀行入行。’87年米スタンフォード大学経済学部客員研究員。’92年米マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了。’92年加ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部助教授。’95年京都大学経済学部助教授。’98年大阪大学大学院経済学研究科助教授。’01年より現職。石川賞受賞(日本経済学会’07年)。
主な著作に『競争の作法―いかに働き、投資するか』(ちくま新書)『原発危機の経済学―社会科学者として考えたこと』(日本評論社・石橋湛山賞受賞)『成長信仰の桎梏―消費重視のマクロ経済学』(勁草書房)などがある。
齊藤教授が主宰するWebサイトのURLアドレスはコチラ↓
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/index.html

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社会を生き抜くためのマクロ経済学

齊藤研究室が入る「磯野研究館」
オープンキャンパスに集う高校生たち

今週は、マクロ経済学の泰斗である齊藤誠・一橋大学大学院経済学研究科教授の登場である(学部は経済学部を担当)。その専門分野等についてお聞きする前に、まずは伝統ある一橋大学経済学部について伺おう。

「本学経済学部の研究内容は、驚くほどに多様性があります。いろいろな経済分野の最先端で活躍中の先生方がおられ、その研究スタイルも多様です。理論研究を中心にするところが多い国立大の経済学部ですが、実践的な応用研究や政策研究を専門にする研究者が多いことも特徴ですね」

さらに、学生側からみた学びのスタイルについては次のように語る。

「学びの制度として『5年一貫教育』というプログラムがあります。これは、5年間の一貫教育を受講することで、学士と修士の学位が取得できるというものです。このプログラムを受講すると、いわゆる学部3年次から始まる就職活動に煩わされることなく、学業に専念できるメリットがあります。他方、通常6年間かけて学ぶところを5年間で学ぶわけですから、それをやり遂げる覚悟と集中力が必要になります」

同プログラムを受講している5年間はほとんど学習浸けの状態になるようだ。

現役高校生のためのレクチャー「経済学とは何か」

一橋大学のシンボル「兼松講堂」
一橋大生の知を支える附属図書館

齊藤先生のご専門は「マクロ経済学」と「財政学・金融論」だ。マクロ経済学研究において多大な功績をあげながら、高校生に向けた経済学の教育指導に尽力していることでも広く知られる。そこで、あらためて高校生に向けた「マクロ経済学とは何か」についてレクチャーもお願いしてみた。

「マクロ経済学とは、経済全体の動きがどうなっているのかを解明して、国民の生活が良くなるような経済政策を考える研究分野です。つまり不景気の状態をなるべく短くして、国民の幸福度を向上させるにはどうしたら良いかを考えていくことになります」

ただし、このマクロ経済学というのは、その扱う範囲が思いのほか広く、質量ともに膨大な調査・分析を要する研究でもある。

「たとえば日本経済が1年間に稼ぎ出すGDP(国内総生産)は約500兆円にのぼります。これに対して個人が年間に稼げるのはせいぜい数百万円~1千万円程度でしょう。国の経済全体と個人の経済活動とは、比較しても仕方ないような一見無縁のように見えてしまいがちですが、じつは両者は緊密な関係にあるのです。
というのも、マクロ経済は個人の経済活動の集積だからです。ですから、個人1人ひとりが自分も国の経済活動に携わっているメンバーであるという自覚、日本経済に貢献したり恩恵を受けたりしている当事者であるという自覚、そうしたものが経済学を学んでいくには必要となるのです」

そういう意味でも、経済学とは、政治家や官僚・金融関係者・企業経営者だけに必要な学問分野ではあり得ない。一般の市民にも深くかかわる重要な学問なのだ。

「どんな人でも生涯にわたって経済問題から無縁な存在ではいられません。いま現役高校生の皆さんにとっては、3.11大震災後の厳しい経済状態を生き抜くための知識を与えてくれる学問のひとつが経済学ということにもなります。そんなイメージをもって経済学に取り組んでくれたらいいと思います」

齊藤先生が最近専攻研究しているテーマは、「マクロ的な視点からの資産市場の仕組みの理論的・実証的研究」と「不完備市場下の資産価格の形成の研究」だ。

一生モノの知力・精神力・人間性・体力を身につける

学生食堂が入る「面プラザ」
国立キャンパス点描

一橋大学経済学部の専門ゼミ演習は、3・4年次学部生が対象で必修である。齊藤先生のゼミでは例年、1学年当たり12~14人ほどのゼミ生を受け入れているが、その入ゼミの選抜方法がちょっと変わっている。

「わたしのゼミでは募集形式を厳しくして、経済学から英語・数学を含めた大量の課題を解いてもらいます。それに加えて、人生観や大学入学後の読書履歴のレポートも義務づけています。全体ではA4用紙14~15枚の分量になります。提出期限は2週間以内。それも解答は手書きが条件で、パソコン出力のものは認めません。これだけの条件を出しますと、応募してくる学生は12~14人くらいに自然になるんですね(笑い)」

言い換えれば、これだけの難条件でも応じようという学生たちは齊藤先生の薫陶を本気で受けたいと思っているともいえる。そのゼミでの研究テーマについては次のように語る。

「マクロ経済学を中心に学んでもらいますが、ただし、関心の範囲を極端に狭くしないためにも、資産価格や企業金融・ファイナンスなども取り上げるようにしています。あくまで学部生のためのゼミですから、特定の狭い知識を身につけるよりはバランスのとれた人に育ってほしいとも思いますしね」

そうしたゼミ生たちへの指導方針については――

「アメリカやカナダでのわたしの経験では、優秀とされる学生は知力・精神力・人間性・体力ともに優れた人が驚くほどいました。くらべて日本の学生たちはどうも体力に欠ける人が多い気がします。運動系のサークルに参加するなり自らの体力について意識する習慣をつけてほしいですね。わたしのゼミではこうしたことも教育目標のひとつに掲げています」

あらためて大学で学ぶ意味については――

「大学4年間で重要なことは、教育機能もさることながら、友人をつくり、師を見つけ、後輩を育てて、人間関係を切り開いていく――結局はそういうところだと思いますよ」

こんな生徒に来てほしい

いろんなことに好奇心をもつ人ですね。世の中のこと、家族のこと、友人のこと、自分自身のこと、こうした様々なことに好奇心をもつ人。なかでも自分自身に関心をもって、自分は何たるかを知ろうとする人など良いですね。
それともうひとつ、大学進学への事情はそれぞれ違います。第1目標として大学に入ってきた人、滑り止めで入ってきた人、1浪・2浪して入ってきた人――そうした諸事情は、入学時に一度リセットすべきです。
入学した大学は神様が与えてくれた場所であるくらいに考えて、その大学4年間の勉学をがんばって欲しいと思っています。とくにマイナス要因を抱えて入学した人は、ことさら前向きの気持ちに切り替えていかないと後悔することになりますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。