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GOOD PROFESSOR

東京理科大学
理学部 物理学科

本間 芳和 教授

ほんま・よしかず
1953年新潟県生まれ。'78年東北大学大学院理学研究科物理学修士課程修了。'78年日本電信電話公社電気通信研究所研究員。'85年日本電信電話株式会社(NTT)に民営化。'04年東京理科大学理学部教授。この間'03~'07年科学技術振興機構研究員。日本電子顕微鏡学会学会賞・瀬藤賞('02年)。日本表面科学会学会賞('09年)。応用物理学会フェロー('10年)ほか。
主な著作に『ナノテクノロジーのための走査電子顕微鏡』(丸善)『ナノエレクトロニクスを支える材料解析』(電子情報通信学会)『ナノカーボン 炭素材料の基礎と応用』(近代科学社)などがある(著作はいずれも共著)。
本間先生が主宰するURLのアドレスはコチラ↓
http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/homlab/

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次世代IT素材に迫る「ナノ構造物理学」

本間研究室が入る6号館建物
神楽坂キャンパスの建物群

理系大学の代表的存在である東京理科大学には、「物理」の名前を冠した学科が4つもある。なんと、それらに学ぶ学生数は1学年400人以上にもなる。これは世界的にも類例を見ない規模なのだ。

東京理科大学の前身は「東京物理学講習所」。その伝統を直接受け継いでいるのが理学部(第一部)物理学科といわれる。そこで本間芳和教授に理学部物理学科の特長から伺った。

「物理学科というのは、宇宙規模の現象から素粒子に至るまでの広範囲の物理現象を研究対象にしています。都心(神楽坂)にある関係から、キャンパスや研究室は狭いのですが、当学科もすべての物理分野をカバーする教育・研究をおこなっています。研究室内の人口密度が高いのが特徴で(笑い)、どの研究室も学生たちの活気であふれていますよ」

また東京理科大学といえば、1年次から2年次へと、3年次から4年次への進級時のハードルが高いことでもつとに知られる。

「これも前身校からの伝統でして、学生への実力主義の教育指導がおこなわれています。これによって東京理科大学を卒業した人は、きちんとした学力実力を身に付けていることが保証されるわけで、これは社会的にも認知されていることだと思います」

さらには、理学部全体の特長ともなるが、教員養成にも力を入れており、中学・高校課程の理科・数学の教員をめざしている人も多いという。

そんな本間教授の専門はといえば「ナノ構造物理学」。そして、目下の研究対象は「カーボンナノチューブ」(carbon nanotube 略称CNT)だ。

ナノテクノロジー(nanotechnology)とは、ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル、英nanometre)の単位スケールにおいて物質の設計や加工をしたり、新しい機能をもった材料や素子を開発したりする技術のことをいう。

「ナノというのは非常に微小な世界での話になります。原子や分子よりは大きいレベルで、比較的少数(十個~千個くらい)の原子や分子が集まってできている物質の研究です」

たとえば「グラフェン」(graphene)という炭素原子だけからなる、原子1個分の厚みしかないシート状の物質がある。

「厚みのないハチの巣のような六角格子構造がグラフェンの特徴です。これをクルッと筒に丸めると、原子1個分の厚みのチューブ状態になります。それが、わたしたちの研究材料である一次元物質のカーボンナノチューブ(CNT)なのです」

新素材カーボンナノチューブを解き明かす

東京理科大学1号館建物

いうまでもなく、世界中を席巻しつづけるITデジタル技術は半導体に支えられている。しかし現行のケイ素シリコン(silicon)による半導体素子の加工技術はすでに限界に達しているとも言われて久しい。そこに代わって期待がかかっている素子材料としてCNTがあるのだ。

「シリコンの加工は10~20ナノメートルが実用的な限界だとされますが、CNTは1本1ナノメートルという細さです。その性質を調べる研究をしています。そのひとつに、1本のCNTを微細な柱から柱に電線のように張り渡して固定し(架橋技術)、そこにレーザー光線を照射することにより光信号を検出して、そのCNTの性質を調べる研究があります」

この「架橋技術」を世界ではじめて完成したのが、本間教授の研究室である。さらに本間研究室の世界初はまだ他にもある。

「これまでグラフェンからできているCNTは疎水性であって、水は付着しないというのが一般的な考え方でした。だが、我々はCNTの外側に、水分子が一層だけ薄い濡れ層を形成することを発見しました。これも世界初の発見でした」

こうした第一線研究をいくつも繰り返して、大注目の新素材CNTの性質を解明していくこと――そのことが本間教授たちの基礎物理研究の目的になる。

「CNTは、炭素原子が平面的に並んでいて、ダイヤモンドと同じくらいに非常に強い物質です。将来的には航空機や自動車の構造材や次世代半導体の素子への活用が期待されています。またSFのような話になりますが、地球から宇宙軌道へと伸びる宇宙エレベーター構想の素材利用にも検討されるなど、その活用範囲は驚くほど広いのです」

ただし、そうした活用法について本格的に考えるのは、本間教授たち基礎物理の範疇を越えていて、それら応用については工学の研究者たちに託すことになるとも語る。

一生モノの成功体験を積み上げていこう

最寄り駅のひとつJR飯田橋駅

東京理科大学理学部物理学科の学部生が各教員主宰の研究室に配属になるのは、4年次の4月からとなる。本間教授の研究室にも例年定員いっぱいの10人前後が配属になる。

「学生の選抜はわたし自身が面接して決めています。受け入れの基準にしているのは研究に向かう意欲です。それにしても理科大の学生はまじめで熱心な人が多く、その判断は毎年悩ましいですね」

こうして4月に配属になった学生は、研究室で毎週開かれているゼミ演習に参加。ここでCNTの基本的なことを学び、それと同時に先輩の院生から研究室内での実地訓練(OJT)を受ける。

「ゼミでの学習とOJTが前期いっぱい続き、夏休み明けからいよいよ卒業研究に入ることになります。研究テーマは基本的にわたしの方で用意します。それぞれの学生の興味や人となり、さらに大学院への進学意向などを勘案しながら研究テーマを振り分けていきます」

あらためて学生指導で心掛けていることについては次のように話してくれた。

「自ら問題を解決する力を身につけて欲しいということに尽きます。結果が分かっていない課題テーマについて、自分なりに工夫して考えていく力ですね。いろいろ悩みながらも自分で解決策を見出し先に進む。そうした小さな成功体験を積み上げていってほしいと思います」

さらに本間教授は続けてこうも指摘する。

「3年次までの『学生実験』には必ず正解が用意されています。ところが、曲がりなりにも世界で初めてのテーマへの挑戦となる卒研では、正しい答えなど誰にも分かりません。研究の遂行には創意工夫と精神力が必要です。まだ習っていない未知の領域と聞くと不安になるかもしれませんが、1年が過ぎるころには皆それなりのことが出来るようになりますね」

こんな生徒に来てほしい

机上の学習はまじめにやってきても、道具を使ったことのない人や、ものに対する知識・経験のない人が多くなってきました。それでも、実験が好きであることが第一条件です。
学部の1~3年次のあいだに数々の物理実験を経験しますが、どれも先人たちが物理法則を発見した方法をたどる貴重な実験ばかり。そうした実験経験に感動や面白さを覚えるような人に、ぜひ来ていただきたいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。