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GOOD PROFESSOR

國學院大學
文学部 史学科

古山 正人 教授

ふるやま・まさと
1949年新潟県生まれ。’81年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。’85年電気通信大学電気通信学部助教授(一般教養担当)。’95年より現職。
主な著作に『岩波講座 世界歴史4 地中海世界と古代文明』(共編・岩波書店)『西洋古代史料集』(共著・共訳)『西洋古代史入門』(共著・前著ともに東京大学出版会)などがある。

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それほど特別ではなかった古代都市スパルタ

古山研究室が入る「若木タワー」
小雨けぶる渋谷キャンパス正門

國學院大學文学部史学科の古山正人教授が教鞭をとるのは西洋史学専攻。古山教授のご専門は「古代ギリシャ史」で、おもに研究課題にしているのは「古代スパルタ史」「社会経済史」「シュンポシオン論」だ。

じつは「古代スパルタ史」の研究者はわが国にはほとんどいない。つまり古山教授がほぼ唯一の研究者にしてオーソリティーでもあるのだ。その稀少な研究内容から聞いていこう。まずは「古代スパルタ史」から。

「スパルタは古代ギリシャのポリス(都市国家)のひとつです。いわゆる『スパルタ教育』で知られ、勇敢な戦士を育てるために幼児の男子を選別して教育訓練をしたとも言われてきました。ただし、後世の人々が伝説的につくりあげた話ではないかと疑念もあります。古代ポリスの中できわめて特殊な存在ではないという視点から、これまでのスパルタ観を変えることも出来るのではないかとも思っています」

ほかのポリスとスパルタの最大の違いといえば、長く王制を敷いていたことだが、それでも事実上の主権は市民の側にあったのだという。つぎに「古代ギリシャ時代の社会経済史」については――

「アテナイという例外的に大きな都市国家の商・手工業でいえば、市民はもちろん非市民(外国人)も同等の権利をもって関わっていました。当時のアテナイにおいて重要な問題は、市民および奴隷の食糧をいかに確保するかでした。アテナイの主産業は農業でしたが、それでも自国で生産される食糧だけでは輸入に頼らざるをえず、市民・非市民の商業活動によって経済が回っていたのです」

アテナイが農業都市国家だと聞いて意外に思う高校生も多いことだろう。さて、最後に残る「シュンポシオン論」とはいったい何のことなのだろう?

「シュンポシオン(Symposion)とはシンポジウム(symposium)の語源でして、饗宴(宴会)のことです。ポリスの成り立ちとして、以前は部族組織を基礎にしていたと考えられていました。しかしこの考え方に疑問が出され、権力基盤を探る基礎をいろんな人のつながりに求め、シュンポシオンを典型とした視点に注目しているわけです」


このほか國學院大學史学科には「日本における護符文化の研究」というプロジェクトがある。古山教授はそれに連動して、古代西欧におけるお守り・護符である「アミュレット」(amulet)の文化を中心とした、呪いや呪術についての研究も行っている。

西洋古代史専攻なら最低でも英語文献は駆使したい

新装なった「学術メディアセンター」
國學院大渋谷キャンパス点描

古山教授が在籍する國學院大學史学科および西洋史学専攻についても、その概要を語ってもらった。

「本学の史学科は、(1)日本史学(2)東洋史学(3)西洋史学(4)考古学(5)歴史地理学の5専攻からなっています。東洋史学と西洋史学の専任教員が各2人なのに対して、日本史学には7人の教員が配属されます。これは本学の成り立ちの関係で、特徴と言えるでしょう。史学科全体としては、実証主義を標榜し、史料を丹念に読み込んで自分で考える力を身につけることを方針にしています」

さらに自身が所属する「西洋史学専攻」については――

「西洋史学における史料といっても、日本で1次史料にあたるのは困難ですよね。ですから卒業論文の作成にあたっては、せめて英語文献を使用して作成するレベルまでは何とかもっていきたいという想いが、我々教員にあります」

西洋史学専攻で古山教授の講義を受講するのは各学年10人ほどだという。ちなみに、國學院大學史学科の専門ゼミ演習は2~4年次の学部生が対象である。古山教授のゼミについては、学部で講義を受講するのとほぼ同じメンバーがゼミ生として入ってくることになる。

これは、西洋古代史を学びたいと思っている者としては最高の教育環境ともいえよう。そのオーソリティーが学部の講義からゼミ・卒論に至るまでを一貫指導してくれることになるわけだ。

情報処理における一生モノのスキルは身に付けたい

國學院大渋谷キャンパス点描

次いで、2~3年次合同で運営するゼミの内容についての話である。

「2つの柱を立てています。まず英語文献を読みこなせるようになる。それから各自関心のある分野を見つけて、その分野の専門論文を読むこと。この専門論文を読むことで、それぞれの卒論のテーマを絞り込んでいきます。4年次にもゼミ授業はありますが、主体は卒論作成になります」

最近の学生に対し、自身で当初掲げた卒論のテーマへのモチベーションを最後まで維持できないような学生が目立つようになったとも嘆く。そんな学生たちへの指導方針については次のように話す。

「西洋史学を専攻したからには、最低限でも英語を読めるようになること。史学を学んだからには、情報を的確に処理できるようになること。これらは、社会人になってからも基本的なスキルとなります。ついでに、公式の場で自らの意見をきちんと話せるようにと指導しています」

公式の場における発言の前に、仲間同士で徹底的に議論を尽くすことを古山先生は薦める。多方面から議論して自らの論理と人格を肯定的に開放させておくことで、相手の懐に飛び込んで行きやすくなるという。まずは、そこから始める必要があると説く。最後に、史学を学ぶことの意義についても語ってくれた。

「ただただ歴史が好き――それだけの人だと史学科学生としては適当ではありませんね。現代社会に生きながら過去の歴史について考えるのが史学です。つまり、自分の生き方を歴史に学ぶことになります。単なる歴史好きの好事家であってはいけないのです」

こんな生徒に来てほしい

いま起きている様々な事柄にリアルな関心をもちながら、その関心をどう処理すれば良いのかを過去に尋ねていく。そんな意識をもった若い人に来てほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。