早稲田塾
GOOD PROFESSOR

成蹊大学
文学部 英米文学科

小野尚美 教授

おの・なおみ
九州小倉生まれ東京都育ち。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。’87年米国州立インディアナ大学大学院修士課程言語学部応用言語学科修了(M.A.取得)。’92年同大学院博士課程教育学部言語教育学科修了(Ph.D取得)。’93年昭和女子短期大学部英語英文学科専任講師。’98年同助教授。’04年より現職。
主な著作に『ビジネスに成功する「英文レターの書式と文例」』(日興企画)英語の「授業力」を高めるために―授業分析からの提言』(三省堂・前著ともに共著)『Reading as Inquiry:A New Horizon for ESL Learners』(リーベル出版社)などがある。
小野先生が主宰する「小野ゼミ研究室」のURLアドレスはコチラ↓
https://sites.google.com/site/creamnono2/

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「RRプログラム」がニッポン英語を救う

小野研究室が入る10号館
ケヤキ並木側から本館建物を眺める

今週紹介する一生モノのプロフェッサーは成蹊大学文学部英米文学科の小野尚美教授である。英語の読み書きに関するリテラシー教育の研究者として広く知られる小野先生。その専門分野について聞く前に、成蹊大学英米文学科の特長からお話いただいた。

「この学科には『米文学』『英文学』『言語学』『英語教育』それに『通訳・翻訳論』を専門にする先生方も設備もそろっています。その教育の基本として、CALL(Computer-Assisted Language Learning)特別教室を活用して4技能(話す・聞く・読む・書く)の強化と実践的な英語力アップを目指しています。とくに必修科目となるAcademic Reading/Academic Writingの語学クラスはすべて英語のみで教えられています。」

だからといって、必要以上に構えることもないと語る。さらに小野先生は、成蹊大学英米文学科の特筆すべきこととして授業の休講が少ないことも挙げる。

「休講はほとんどありません。わたし自身もこれまで自分の都合で休講したことは一度もありません。海外研修等でやむを得ず休講するときでも、学期最終週に組み入れてもらうなどして、講義内容に支障が出ないようにしています。」

このことは英米文学科のみならず他の学部学科でも同様と聞く。つまりは成蹊大学全体の特長でもあるということだ。

「なにより成蹊大学はワンキャンパスの中規模校でして、それがとても居心地のよい校風になっているんですよ。」

フィンランドのように、早期に文字を取り入れて

2006年開館の「情報図書館」
学食・ブックセンターが入る「学生会館」

小野先生の専門カテゴリーは「言語教育(英語学習者の読み書き教育)」である。具体的には「認知過程の分析に基づく言語処理能力の研究」「第二言語習得論」「早期英語教育」などが研究テーマ。2011年度から実質的に小学校課程に英語授業が導入されたこともあり、小学校での英語指導法とモデル教材開発が今の研究課題である。

「中学校英語への架け橋となる早期英語教育の指導法について研究しています。とくに英語圏の国々で効果をあげている、読み書き回復のための訓練法であるリーディング・リカバリー・プログラム(Reading Recovery Program、以下RRプログラム)に注目しています。わが国の早期英語教育における、特に文字を取り入れた指導法とRRプログラムとの関係を分析研究して、中学校英語へ連携した新たな英語指導法の開発を目指しています。」

言語教育指導で重要なのは文字を取り入れること――これが小野先生の信念のようだ。かつて海外研修中に客員研究員として滞在したフィンランドでのこんな話もしてくれた。

「フィンランドでは、大半の人が母国語(ウラルアルタイ語系)と英語を話します。テレビ番組はフィンランド語か英語かのどちらかで放送されますが、しばしばフィンランド語か英語の字幕が付いています。こうして幼児期から音と文字の両面から2つの言語を獲得しているのです。」

小野先生の持論として、第二言語学習は早期に始めるほど良いのだという。母語と並行して学習することによる相乗効果によって、双方の習得が早くなるというのだ。もしかすると、OECD各国で実施する国際学力調査で連続して学力世界一を獲得しているフィンランド教育の秘密がこのあたりに隠れているのかも知れない。
それでは、かの国のような理想的な語学教育環境が一般的ではないわが国で、第二言語を習得するためにはどのようにすれば合理的なのだろうか?

「なにより繰り返し学習し、自動化させることが習得につながります。ここでいう自動化とは、無意識のうちに出来るようになることです。若いうちは集中できますから、繰り返し集中して学習することで早く自動化され、新たな言語の習得に効果的となるはずです。さらには若いうちに様々な言語の基礎的なことだけでも集中して覚えておくと、年齢を重ねてから改めて習得しようというときにも便利ですね。若いころに覚えたことはいつまでも忘れませんから。」

国際語として一生モノのリテラシーを身につけよう

晩秋の成蹊大学キャンパス点描

成蹊大学英米文学科のゼミ演習は1~4年次となり、小野先生は全学年でゼミ授業を担当している。こちらに懸ける小野先生の情熱にも熱いものがある。

「1年次の導入ゼミと2年次のゼミでは、英語教育を学ぶための基礎と予備知識を身に付けることを目的にしています。わたしのゼミでは、1年次から『国際語としての英語を考える』というトピックで文化・言語・人間についての講義を行います。原書の輪読をしながら本の内容についてディスカッションし、プレゼンテーションの仕方やレジメ報告書の書き方を学んでいます。」

「2年次ゼミでは『言語の性質、音声、統語、意味、脳科学、社会言語学、心理言語学といった分野から英語について考える』というトピックで、いろいろな観点から英語について考察しています。2年次でも、原書の輪読やディスカッション、プレゼンテーションを行って知識を深めていきます。そうして多くの英語に関する情報を広く提示して、学生たちの興味を3年次ゼミへつないでおくわけです。」

同学科の専門ゼミは3~4年次学生が対象で、小野ゼミでは例年10~13人の希望者全員を受け入れている。ゼミ授業そのものは3・4年次合同の20数名で行われる。

「3年次のゼミ生は、英文で書かれた『第二言語習得論』の輪読から始めるのを恒例にしています。4年次生には、毎年度テーマを与えて、それに沿ったテキストを読んで発表してもらい、全員で質疑応答をしていくスタイルです。ちなみに今年度のテーマは『英語の読み書き教育について考える』でした。」

このほか各年の前期と後期に小論文の提出が義務づけられ、さらに後期にはテーマを決めたシンポジウムが催される。また、4年次学生にはゼミとは別に卒業論文があり、こちらはチューター制(教授の個別指導)である。
あらためて学生たちへの指導方針についてはこう語る。

「優秀でまじめな学生は数多いですが、とくに優等生を育てるというよりも、いろいろなことに興味をもち、挑戦してみるという気持ちの強い学生に育ってほしいと思っています。優秀だが定型な論文しか書けない人より、自ら何か面白いことをやってみるというような人のほうが良いですね。なにより指導する側としても、そのほうが楽しいですから(笑い)。」

こんな生徒に来てほしい

「大学に入ったらぜひやり遂げたいものがある」というような人ですね。といっても、漠然としたほのかな希望でも構いません。ただ、そういう意識はもっていて欲しいですね。先ほども述べましたが、都市近郊ワンキャンパスで教員と学生の距離が近い成蹊大学では、マンモス校のように個人が埋もれてしまう事態はまずありません。こうして非常に居心地のいい学園環境であることも付け加えておきたいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。