早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京大学
大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻

石川 正俊 教授

石川 正俊(いしかわ・まさとし)
1954年茨城県生まれ。79年東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修了。同年通産省工業技術院入所。89年東京大学工学部計数工学科助教授。95年同大学院助教授。99年同教授。2001年より現職。主な著作に『センサフュージョン』(編著・コロナ社)、『脳と意識』(共著・朝倉書店)などがある。 先生の研究室のホームページ  http://www.k2.t.u-tokyo.ac.jp/

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めざすは人間より性能の優れたロボット

実験に利用した指モジュール(2本指4自由度)

秒速4mのスピードでどんどん落下してくるボール。それをロボットの2本指が瞬時にキャッチ。人間の目では追えないほど高速な動作でポールをキャッチする「超高速ロボットハンド」がこのほど完成し、発表された。この研究開発の中心になったのが、東京大学教授の石川正俊先生である。

「単純な動作を繰り返すだけのロボットでしたら、いくらでも早くすることは可能で、現に実用化もされています。今回発表したロボットハンドは、任意に落下してくるボールをセンサーが感知し判断して、0.01秒でハンドが動作してキャッチします。ロボットの動きを制御しながら、これだけの高速化を実現したのは画期的といっていいでしょうね」と石川先生。  

こうしたロボットの開発は他に類例がなく、世界初の快挙である。このシステムを成功に導いたのは、1000分の1秒での画像処理を可能にした高速カメラと、ロボットハンドを制御しながら、高速回転が可能なサーボモーターの開発である。高速カメラの開発は、完成までに13年聞の日時を要したという。

「一般にロボットの開発といいますと、いかに人間の動作に近づけるかというのを主眼にしがちです。しかしそういうものを目指したのでは、レベルの低いところで止まってしまう。すでに機械の動作は人間の能力をはるかに超えています。今回はその機械の能力の限界への挑戦でもあったわけです」

石川先生たちの努力が超高速ロボットアームに結実したわけで、近い将来には実用化もされつつある。コンピュータをはじめ、医療や自動車・ロボット・バイオ・マイクロマシーン・セキュリティ・ゲームマシーンなど多方面への活用が期待され、それぞれスピード化が図れるだろうという。私たちの身の回りにも関係がありそうな、まさに世界的なロボット開発なのだ。

「超高速ロボットハンド」の決め手は総合力と独創力

石川先生の専門は、システム情報学である。今回のロボットアームでは、サーボモーターの開発や画像処理にコンピュータを介さないビジョンチップ(LSI)による処理などが、これまでにないアイディアとして盛り込まれている。

「学問分野としては新しいほうですね。システムというのは最終的に動いて役立つものでなければならないわけで、その目標に向かって問題点を一つずつ解決していくのですが、その過程が面白さであり、解決したときには喜びになるわけです。それに、いかに新しいアイディアを組み込んだシステムの構築ができるかというのも重要になります」

石川先生がシステム情報学を本格的に学ぶようになったのは、大学に入ってから。以後、今日までこの道の研究に専念してきた。

「はじめは人間の情報処理、特に脳の情報処理に興味をもちまして、人間の脳に類似した機械をつくれないかということでシステム情報学に取り組んできました。それで、これを追究していくとロボットに行き着くのですね。すると、ロボットの運動性能の方が人問より優れていることがわかってきます。それなら人間の機能を真似つつも、それより性能の優れたシステムを開発してみようということになったわけです」

ロボットアームの完成は、その一つの成果ということになる。また、ほかにも複数台のコンピュータをネットワーク化した並列演算の研究や、光コンピュータによる演算処理能力のスピード化なども石川先生の研究テーマとなる。

いま日本のロボット技術やLSI・半導体などの技術は世界のトップレベルにあるといわれている。石川研究室では、その最先端の技術が学べ、しかもここからシステム情報学のトップランナーとして世界に走り出していくことも可能だ。

システム情報学にまとまった教科書などない

そのトップを走るために大切なのは、総合力と独創性の二つだと石川先生は語る。まず、総合力の大切さについて……。

「システム情報をめざそうという人は、いろいろなことに興味をもつこと、幅広い知識をもつことが必要になります。たとえばモーターの研究だけをする人は、モーターだけを究めればいい。ところが、全体のシステムをやるには、コンピュータからロボット・センサー・LSI・半導体、ときには人体についての知識までが必要にもなるからです」

さらに、独創性については次のように語る。

「システムについてのまとまった教科書などないと思った方がいいですね。ですから、いつも学生には、『自分で考えろ』と言っています。自分ですべてを考えられないとやっていけない世界です。要は、どれだけの夢が描き切れるかということになります」  

そのために心がけなければならないのは、人の真似を絶対にしないことだという。

「システムを研究開発していく世界では、これまでにない新しいものをつくらないと意味がありません。つまり競争相手がいないものですね。他にすぱらしい研究開発をしている人がいるからといって、その後を追うようでは絶対に駄目です。特にこの世界では、他人の真似をすると途端につまらないものになってしまいます。ですから、いかに誰もやっていないシステムに取り組むか、極端にいえば評価が100点と0点の真っ二つに分かれるくらいのものの方が望ましいですね」

まだ誰も手がけていないシステムに挑むことが肝要だと説く。だが、独創的なアイディアなどなかなか生み出せるものではないような気もするが。

「学問によっては、教える側が段階を踏んで学生に道をつけてあげられる分野もあるでしょう。しかし、システムだけはそれができません。自分で見つけ、考え出さなければなりません。こればかりは私たちにも教えようがありませんから、向き不向きの要素は大きくなりますね」

進路選択にあたっては、そうした見極めも大切だという。そして、見極めた先には世界的科学者として活躍する、トップランナーへの道も開けている……。

こんな生徒に来てほしい

専門知識は大学に入ってから学べますから、特に必要ありません。むしろ高校時代には、受験勉強もたいへんでしょうが、他のいろいろなことに興味をもってほしいですね。大学の専門学科に入ってからでは学べないものがたくさんあります。ロボットシステムでしたら、生物をはじめ社会・通信・建築・医学などいろいろなことに興味をもって面白いことをたくさん知っているかどうかが勝負となります。むしろ、そのほうが夢の実現への近道だと思いますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。