早稲田塾
GOOD PROFESSOR

明治大学
商学部 商学科

村田 潔 教授

むらた・きよし
1957年静岡県生まれ。’87年筑波大学大学院社会科学研究科経済学専攻博士課程退学。’87年北海道女子短期大学経営情報学科専任講師。’90年駿河台大学経済学部助教授。’95年明治大学商学部助教授。’97年同商学部および大学院商学研究科教授。’03年英デュモンフォート大学CCSR客員研究員およびコンピューティング科学工学部名誉客員教授。
‘05年同大学CCSR国際研究員。現在、明治大学ビジネス情報倫理研究所所長。
おもな著作に『Ethical Issues and Social Dilemmas in Knowledge Management: Organizational Innovation』(共著、IGI Global)『経営情報論[新版]』(共著)『情報倫理:インターネット時代の人と組織』(編著・前著ともに有斐閣)などがある。
村田先生が主宰するURLのアドレスはコチラ↓
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ethicj/

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ICT情報倫理研究のパイオニア

村田研究室が入る駿河台「研究棟」
明大駿河台キャンパス建物群点描

明治大学商学部の村田潔教授は、「情報倫理」研究における世界的研究コミュニティーの主要メンバーのひとりにも数えられている。まずは、その研究分野の説明からしていただこう。

「この分野の研究が本格化したのは80年代半ばからです。研究対象としているのは、コンピューターやインターネットをはじめとするICT(情報通信技術、英Information and Communication Technology)の開発と利用が引き起こす人間と社会に関わる問題、たとえばプライバシーや知的財産権の侵害、ICTを利用した監視、ICT利用上のジェンダー問題、ICT関連のエンジニアの専門家としての倫理と社会的責任など多岐にわたります」

こうした研究に打ち込んでいるのは、ICT関係の研究者ばかりでなく、哲学や倫理・経済・社会・政治・心理などさまざまなバックグラウンドをもつ学際的な研究者たちだ。いま、これらの研究分野で論じられていることの一つに「デジタルアイデンティティの歪み」という難問があるという。

「高校生のみなさんの中にも、携帯電話やスマートフォン上のゲーム・アプリ、さらにSNS(Social Networking Service)やネット通販などを利用する人は多いことでしょう。これらは非常に便利な反面、じつはリスクも大きいのです。こうしたICTサービスには無料のものが多いのですが、表面的には無料でも、利用者は個人名や趣味などを登録することで、個人情報という対価を支払って利用しているといえます」

いまやネット上では、個人情報は貨幣と同じ価値をもって取り引きされているのが常識なのだ。さらに村田教授の話は続く。

「たとえばあなたがSNSなどで面白半分の書き込みをしたり、友だちがふざけて撮ったあなたの写真や映像を投稿したりすると、ネット上に本来のあなたとは違うアイデンティティーが出来上がることになります。これが『デジタルアイデンティティ(ネット上につくられる個人のイメージ)の歪み』です。これが多くの人の目に触れることで、あなたの人格が歪んだデジタルアイデンティティによって判断されるなど、個人にとって非常に深刻な問題が引き起こされることにもなり得るのです」

これらはまさにICT時代の新しい問題であり、人間存在に関わる哲学的ともいえる深遠なテーマを内包している問題でもある。さらに村田教授は、コンピューターによる監視社会の問題点なども豊富な実例をあげながら話してくれた。いずれも興味深い話であったが、残念ながらここに全てを紹介することはできない。

ゼミテーマは「企業における情報通信技術の活用」

明治大学「12号館」と「大学会館」
明治大学のシンボル「リバティタワー」

村田教授が在籍する明治大学商学部は商学科だけの単科学部である。同学部の特長について伺った。

「1学年定員が千人で、学生数の多い学部です。ただマスプロ教育の弊害に陥らないように、1~4年次まですべてで少人数教育のためのゼミ(演習)が用意されています。とくに2年次からのゼミはダブル・コア化されていて、学生は2系統(商学専門演習・総合学際演習)のゼミを同時並行的に履修できるようになっています」

ゼミのダブル・コア化は、商学部学生の自主的学習の尊重と、広い教養に裏付けられた専門的知識を有する人材を育成することを目的に導入されたもの。専門ゼミが2年次から始められることで、就職活動が始まるまでの1年半、じっくりとゼミを通して研究活動に取り組めるようにもなっている。

「外国語の履修も1~4年次まででき、学生のがんばりによっては2ヵ国語の修得も可能です。また学生数が多いぶん専任教員も多く百人を超えています。多様な学問的背景をもった教員が在籍しますから、学生たちの学習・研究についての興味や問題はほとんど学部内で解決されることにもなります」

このように、商学系学部への進学をめざす現役高校生にとって、屈指の伝統を誇る大規模学部でありながらも、アグレッシブなカリキュラムを特長とする明治大学商学部の動向は大いに注目すべきであろう。

前述のように明治大学商学部の専門ゼミ演習は2年次から始まる。ゼミはダブル・コア方式で、2系統のゼミを複数とって学ぶこともできる。定員は各ゼミとも15人まで。村田教授の担当は「商学専門演習」で、「企業における情報通信技術の活用」が中心テーマとなる。

「わたしのゼミでは、まず『良いテキスト」を輪読していきます。ここでいう『良いテキスト』とは、情報システムを活用した現代的なビジネスのあり方を十分に理解できるものという意味です。それをゼミ生とともに輪読していきます。さらに3年間のうちで1冊は英文のテキストを読むことにしていて、ビジネスの国際化にも対応できるようにしています」

若き日の失敗からの気づきが一生モノの財産となる

キャンパス前を走る「明大通り」

村田ゼミは輪読中心というが、その単調さを破る目的もあって、いくつかの「イベント」も用意されている。そのひとつに、ゼミの中で「アフィリエイト」などを利用して簡便なオンライン・ビジネスを立ち上げて運営することがある。

ここでアフィリエイト(Affiliate)とは、企業サイトへのリンクを張ったWebサイトやブログを運営し、サイトやブログの閲覧者がリンクをたどって企業サイトを訪れて商品購入することを促し、商品購入がなされれば、それに応じて企業側から報酬が支払われる仕組みのことを指す。

「ゼミ内でチームをつくって、学内・学外の各種コンテストに積極的に挑戦するよう推奨しています。今年度(12年度)は、明治大学学内における『eプレゼンコンテスト』で村田ゼミのチームが準優勝しました。また、他大学のゼミと協力して、ソーシャルメディアを利用した就活のためのガイドブックも作成中です。」

さらには、スペインの大学のゼミとネットを介して共同で課題に取り組む『バーチャル・キャンパス』の試みも始めている。来年度は、「バーチャルからリアルへ」を合言葉に、ゼミとしてスペインに行くことも計画している。こうして非常に活気のあるゼミになっているというが、まさに納得である。
あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。

「まずは自らやってみなさいということですね。学生のうちであれば失敗しても許されます。ですからこちらがキッチリお膳立てするのではなく、簡単な説明や動機づけだけで後は学生たちの判断に任せてやらせるようにしています。大切なことは自分で気づくこと。その気づきこそが一生モノの財産として残ることになります」

教えすぎないこと――それこそが村田教授の教育の基本方針といえる。

こんな生徒に来てほしい

若いうちは食わず嫌いをなくし、なんでも手を出してみる貪欲なほどの好奇心が大事となります。自らの心のなかに好奇心が湧いてきたら、それを満たすためにその場ですぐに行動にしてみるフットワークの軽さも持ち合わせてほしいですね。そのためにも、他人との話し合い・交渉を円滑にする礼儀も身に付けておくべきでしょう。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。