早稲田塾
GOOD PROFESSOR

芝浦工業大学
工学部 応用化学科

正留 隆 教授

まさどめ・たかし
1960年長崎県生まれ。’86年九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程。’94年国立有明工業高等専門学校物質工学科助教授。’04年芝浦工業大学工学部応用化学科助教授。’08年より現職。『フローインジェクション分析進歩賞』(’98年)『武田研究奨励賞優秀研究賞』(’01年)。
主な著作に『役に立つフローインジェクション分析』(医学評論社)『バイオセンサ・ケミカルセンサ事典』(テクノシステム)『機器分析ガイドブック』(丸善)などがある(著作はいずれも共著)。
正留先生が主宰する「環境分析化学研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.sic.shibaura-it.ac.jp/~masadome/

  • mixiチェック

環境分析化学こそが地球を守る

正留研究室が入る豊洲「研究棟」
芝浦工大豊洲キャンパスの全景

「本学科の教育は、化学をベースに幅広い視野と柔軟な思考力をもった新世代のリーダーたる人材の育成を目的としています。いま独創的な仕事ができる技術者が求められています。そのような時代のニーズに応えるため、化学の基礎知識だけでなく、問題発見能力や問題解決能力の習得にも力を入れています」

取材の冒頭、芝浦工業大学工学部応用化学科の正留隆教授は、同学科の教育方針を教えてくれた。さらに、正留教授は続ける。

「本学科の特徴として、1年次から実験授業を多く取り入れていることがあります。とくに2年次からの分析化学実験では、試薬溶液を自らつくり出すところから始めます。そのため朝開始しても夜までかかってしまう学生も出てきます。こうした地道な実験スタイルは本学の特徴で、他大学ではあまり見られないのではないでしょうか」

これは「自ら手を動かして体験することで初めて化学知識は身につく」という指導理念によるもの。こうして応用化学科からは確かな化学的センスをもった学生たちが次々と巣立っていくことになる。

ちなみに、同学科のカリキュラムはJABEE(日本技術者認定機構、英Japan Accreditation Board for Engineering Education)によって認定されたもの。カリキュラム内容が社会の要求水準や国際水準を満たすことから、修了した学生たちは技術士資格の1次試験が免除される。就職活動時には、採用する企業側から有利に判断されることもあるのだという。

汚染物質分析の決定版「化学センサ」を開発

豊洲キャンパス点描
コンピューターが並ぶ「PC実習室」

正留教授の専門は「分析化学」「環境分析化学」だ。どんな研究分野なのか解説してもらった。

「分析化学(analytical chemistry)というのは、環境はじめ生体領域・食品などの多分野についての分析法を開発する化学の一分野になります。そのうち環境分析化学(Environmental Analytical Chemistry)とは、環境分野についての分析法開発です」

これまでダイオキシン(Dioxins)や環境ホルモン(Endocrine Disrupting Chemicals)・重金属イオン(heavy metal ion)など、環境汚染化学物質類を分析するためには、「ガスクロマトグラフィー質量分析法」「ICP発光分析法」など、大掛かりな分析機器が用いられてきた。

「こうした現行の分析方法は大型で、非常に高価な装置が必要となります。分析操作もとても複雑で熟練を要するなどの問題点をもっています」

これらの諸問題を解決するために、正留教授は「化学センサ」(chemical sensor)という新たな分析装置を開発中だ。

「わたしたちが開発している化学センサは、装置が小型軽量化され、そのうえ計測が簡単。試料溶液中にセンサを浸せば、そのなかの物質濃度が簡便に測定できます。しかも、高感度の分析結果がリアルタイムで得られるという装置になります」

宇宙船地球号の生態系バランスを崩す環境汚染問題の国境を越えた広がりが懸念されるなか、まさに画期的な解決ツールともなり得る新分析法・化学センサの研究開発といえる。

そして、いま教授が力を入れて研究しているのが、次の3つの分析法による装置の開発なのだという。
(1)環境水中の硝酸イオン、あるいは界面活性剤(洗剤)を迅速に自動分析するマイクロ流体チップの開発
(2)環境水中の汚染度を色で識別する光センサの開発
(3)抗原抗体反応を利用して環境ホルモンを自動分析する装置

いずれの分析装置も関係者のみならず待望されるものばかりで、早期の完成が待たれる。

めげない「ウエットな心」の持ち主よ来たれ!

研究の場である「応用化学実験室」
研究の場である「応用化学実験室」

芝浦工業大学応用化学科の学部生の研究室配属は、3年次11月からだが、108単位以上を取得している学生は本配属で、108未満95単位以上取得の学生は「仮配属」という身分となる。仮配属の学生は4年次になるまでに108単位取得しないと本配属されないというのが決まりだ。

毎年度、正留研究室では8~9人ほどの学部生が配属になる。配属希望者がこれより多いときには成績順の選抜になる。

「11月に配属になった学部生には、まず実験器具の洗浄や純水のつくり方など基本的なことから覚えてもらいます。これに並行して、過去の文献の調べ方なども指導していきます。化学研究においては、過去にどんな研究実績があるのか、その先行研究を知ることが大事です。学部生の卒業研究といえども、先例のある研究に挑んでも無意味なのが原則だからです」

学部生各自の卒研テーマについては、正留教授がいくつか用意した中から学部生とディスカッションして決められる。研究を始めるのは先輩たちが卒研や修士論文の発表を終えた2月ごろから。それらの研究を引き継ぐ意味合いもある。
あらためて学生指導で心掛けていることについては次のように語る。

「なんといっても研究に向かう意欲ですね。やる気があって素直な学生を育てたいと思っています。そうした学生がやはり伸びるからですね。わたしが指導したことを自分なりに解釈し読みこなして、研究実践に移していけるような人に育ってくれたら素晴らしいですね」

最後に、受験に立ち向かおうとしている現役高校生にこんなメッセージをおくってくれた。

「わたしが日ごろ言うのは『ウエットな人間になれ』ということです。ここでウエットとは、よい意味でのしつこさのこと。化学の実験や研究はうまく進まないことの方が多い。10回の実験研究で9回失敗し、成功は1回だけというのは常にあることです。失敗してもめげずにトライしていくウエットな心が必要になります。ちょっとした失敗や挫折で簡単に諦めてしまうような『ドライな心』では向いてないですね」

こんな生徒に来てほしい

受験を突破するためだけでなく、文理すべて各科目の基本的なことは知っておく必要があると思います。とくに今の時代で重要なのは英語ですね。研究室へ配属になると、英語論文を読むのは当たり前なことになります。
本学は理工系の大学ですが、入試配点で英語は理科・数学ともに均等配点になっています。大学側もそれだけ英語を重視しているということですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。