早稲田塾
GOOD PROFESSOR

工学院大学
工学部電気システム工学科

坂本 哲夫 教授

さかもと・てつお
1968年静岡県生まれ。'92年横浜国立大学工学部物質工学科卒。'94年東京大学大学院工学系研究科化学エネルギー工学専攻修士課程修了。'97年同研究科応用化学専攻博士課程修了(博士の学位を取得)。'97年日本学術振興会特別研究員。'99年東京大学環境安全研究センター助教授。'04年同生産技術研究所助教授。'04年工学院大学工学部電子工学科助教授。'06年学科改組により工学部電気システム工学科助教授。'07年同准教授。'12年より現職。'07年「榊奨励賞」(日本学術振興会マイクロビームアナリシス第141委員会)。

著作に『環境分析ガイドブック』『ごみの百科事典』(前著ともに丸善出版)『ナノテクノロジーハンドブック』(オーム社)がある(著作はいずれも分担執筆)。

 坂本教授が主宰する「ナノエレクトロニクス研究室」のURLアドレスはコチラ
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwc1045/

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坂本研究室が入る八王子16号館
春を迎えた八王子キャンパス南門

PM2.5汚染をも救う新型顕微鏡の開発者

工学院大学工学部電気システム工学科の坂本哲夫教授は、ナノテクノロジー (nanotechnology)を駆使して、従来の電子顕微鏡よりもさらに高性能な新型顕微鏡の開発技術を完成させた研究チームを率いる。
「従来の電子顕微鏡は分解能(精度)は高いのですが、白黒の画像が見えるだけで、それがどんな物質でできているのかはわかりませんでした。私たちの新型顕微鏡『FIBナノサンプリングREMPI』の分解能は、成分がわかる顕微鏡としては世界最高値の40ナノメートルです。新開発した集束イオンビーム(FIB、英Focused Ion Beam)を照射することで、画像を見ながら小さな粒子の組成分析をしたり、特定の場所を微細加工して粒子内部を探ったりすることもできます」

さらに、短パルスレーザーによる『共鳴イオン化質量分析法』(REMPI、英Resonance-Enhanced Multi-Photon Ionization)を駆使することにより、複雑な混合物試料でも物質の特定ができるという。まさに夢のような顕微鏡が開発されたのである。しかも、すでに実用化への道筋もついて着々と準備中なのだ。

この新型顕微鏡開発の目的のひとつとして坂本教授がずっと組成分析を進めてきたのが、いまや大気汚染物質として注目を浴びる微小粒子状物質(Particulate Matter)の「PM2.5」でもある。
「これまでは微細な粒子の成分を調べるには粒子をたくさん集め、すべて溶かしてから調べる方法だけでした。ところが新型顕微鏡で分析すると、粒子を1個ずつそのまま分析できます。たとえばPM2.5の表面は塩化カルシウム、内部は硝酸ナトリウムなどで組成されていることが手にとるようにわかります。これにより汚染対策や人体への影響の研究が今後大きく前進することも期待されます」

こうした分析データが収集されて当初の計画目標に達したため、新型顕微鏡の基礎研究は一応の完成とされ、いま実用化に向けて進むことになったのだ。今後もその精度や性能の向上をめざし改良していきたいと坂本教授は意欲を語る。

新装なった1号館「総合教育棟」
18号館「スチューデントセンター」

「有機EL」の新製作技術など異なる分野にも取り組む

もうひとつ。坂本教授らの研究には、次世代ディスプレーの素材として注目される「有機EL」(Organic Electro-Luminescence)の製作技術開発がある。有機EL技術にはさまざまな方式があるが、坂本教授らは「静電気スプレー式噴霧法」を提案して実験研究を進める。

これも成功すると先の新型顕微鏡同様に世界的な開発になる。つまりは分野が異なる(しかも世界的な)2つの研究に同時に取り組んでいるのである。

そんな坂本教授が所属するのは、工学部電気システム工学科である。次に同学科では、どんなことが学べるのかを伺った。

「従来は、発電や送電など『大電力』分野について扱うのが電気工学科、コンピューターやICを中心に『小電力』を扱うのが電子工学科という棲み分けがありました。ところが、すでに大電力の発電や送電もコンピューターで制御されるようになっています。つまり電気工学と電子工学の複合化によって、安全性や省エネ効果の向上が図られているわけです。それら複合化したものをカリキュラムに組み入れたのが電気システム工学科ということになります」

そのため電気工学を専門とする教員をはじめ、制御や計測などの教員、さらには医療系の教員もバランスよく配置されているのが工学院大学電気システム工学科なのだ。また同学科の教育目標のひとつに挙げているのが、「電気主任技術者」など電気関係資格の取得をめざすにあることも注目に値するだろう。

「建築学科で学ぶ多くの人が建築士資格を取りにいくのと同じで、電気に関する学科で学ぶからには電気関係の国家資格をめざすことになります。本学科のカリキュラムもそうした受験資格を満たすように組まれています」

新型顕微鏡の横で坂本教授
スプレー式噴霧法による有機EL製作イメージ

悩むぐらいなら自らの手でまず実践してみよう

工学院大学電気システム工学科の学部生の研究室配属は、まず3年次12月に仮配属されて、翌4年次4月から本配属になる。坂本教授の研究室には例年8~10人ほどの学部生が配属される。配属学生の割り振りは、学生の希望研究室を勘案しながら、決められたルールに従って割り振られることになるそうだ。

「3年次12月に仮配属になった学生には、まず研究の具体的内容を見てもらいます。その説明役は4年次や大学院生の先輩学生にほぼ任せています。後輩にきちんと説明するには、それなりに理解が必要になりますから、それも教育の一環と考えているわけです」

さらに3年次の各学生には、卒業研究に向けての課題と読んでおくべきテキストが坂本教授から各自に示される。そして4年次4月の本配属を迎え、それぞれ卒研に取り組むことになる。それぞれの研究テーマについては、教授からいくつか提示されるなかで、学生同士で話し合って決めるという。あらためて研究生たちへの指導方針については次のように語る。

「失敗するか成功するか、その結果よりも、自らの手で実践することの方がはるかに重要です。まずは実際にやってみること。それで失敗しても、学生のうちは許されますしね。さらには、研究は地道な積み重ねの世界であるということ。よく偶然に発見されたアイデアとか新発想のように言われることがありますが、それも地味な研究の積み重ねがあってのことなのです」

最後に、大学現役合格をめざす高校生にこんなアドバイスも寄せてくれた。

「たしかに進学を控えて偏差値など自分のレベルを知ることも必要です。ただし、たとえば電気について大学で学びたいというのが希望ならば、各大学の電気系の学科で何が学べるのか、その特徴は何なのかをよく調べることがより大事となります。自ら納得できる大学・学部を選択することが大切なのです」

こんな学生に来てほしい

大学に入ってから、自ら進むべき道のことで悩んで動きのとれないような人が結構います。そんなふうに悩むぐらいなら、まず自分が興味のあること1つひとつを次々と調べてみたら良いのです。いろいろ試行錯誤はあるかもしれませんが、真剣に取り組んでいくと、自然に自らの進むべき道が見えてくるはずです。そのためにも、ふだんから新聞・雑誌やテレビ・インターネットなどから流れてくる情報を広く理解し吸収する姿勢が必要だと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。