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GOOD PROFESSOR

明治学院大学
経済学部 経営学科

鳥居 宏史 教授

とりい・ひろし
1953年愛知県生まれ。’77年横浜国立大学経営学部卒。’82年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得。明治学院大学経済学部で助手・専任講師・助教授をへて、’92年より現職。この間’89年米イリノイ大学客員研究員。’02年豪アデレード大学客員研究員。’07年米ホープ・カレッジ交換教授。これまで公認会計士試験委員を6回務める。
主な著作に『レレバンス・ロスト―管理会計の盛衰』(訳・白桃書房)『入門管理会計(第2版)』(中央経済社)『事業部制の業績評価』(共監訳・東洋経済新報社)などがある。

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鳥居研究室が入る明治学院本館
明治学院大正門脇のサインボード

経営意思決定に資する「管理会計論」研究

今週の一生モノのプロフェッサーは、明治学院大学経済学部経営学科の鳥居宏史教授である。まずは、学部と学科について話してもらった。

「本学の経済学部は(1)経済(2)経営(3)国際経営――の3学科からなります。各学科の専門科目はありますが、何学科であっても学部内他学科の履修はできますし、ゼミも学科の枠を越えてとることが可能です」

つづいて、所属する経営学科の特長については次のように語る。

「履修する専門科目に必修の縛りなどはありません。1年次に入門科目(3科目)を必ず学んで経営学分野における興味のある方向性を把握したうえで、2年次からは自ら好きな科目をどんどん学んでいきます。極端に片寄った科目ばかり履修しないように、大きな枠組みは設けていますが、基本的に自由です」

学生たるもの、自分で科目を選択して何について学ぶのかを絞り込んで決めるのは当然の権利であり、チャンスでもあろう。そこにこそ各自の主体性が問われる。

なお経済学部の学生は通常、1~2年次は横浜キャンパスで学び、3年次から白金キャンパスに移って学ぶ。ところが経営学科の学生だけは、1年次のうちに明治学院大学共通科目(教養科目)の所定のものを履修してしまえば、2年次からずっと白金キャンパスで学ぶことすらも可能なのだ。

これらは誰からも強制される制度などではなく、すべては自身の努力と決断次第となる。このほかにも徹底した「少人数制教育」、学部3年次から大学院への「飛び級制度」など、明治学院大学らしいユニークな教育カリキュラムが軒並みそろう。

創立150周年記念「パレットゾーン白金」
白金キャンパス建物群脇に続く歩廊

会計データは大事だが判断材料の一部にすぎない

鳥居教授の専門はずばり「会計学」。なかでも「管理会計論」を研究テーマにしている。

「一般的に企業の会計には、外部に向けて公表する『財務会計』(financial accounting)と、経営者を中心に企業内部で使用するデータをまとめた『管理会計』(management accounting)との2つがあります。つまり、経営者サイドが意思決定をするときに必要として求められる会計情報、それが管理会計です」

管理会計分野のなかで鳥居教授が最近とくに力を入れているのは、「多角化戦略」についての分析研究だという。

「企業の経営トップが、多角化した各事業部(および部長)の評価をどのようにしているのか、これが研究テーマとなります。近年のグローバル企業においては、海外法人トップの評価についても見なければいけません。いまや企業業績の評価は、管理会計における数字が大きな要素になっているのです」

管理会計内の数字をどう読んで判断していくか、これこそが新世紀型の企業経営の要になってきたというわけだ。ただ、会計上の数字が大事とはいえ、それに拘泥しすぎると、経営判断を誤る要素ともなり得るというのが鳥居教授の持論でもある。

「管理会計の数字ばかりに縛られ過ぎると、会計数字の悪い事業部はすぐに廃止してしまうなど短絡的な判断をしてしまいがちになります。あくまで会計数字は経営データの一部にすぎませんから、企業トップはさまざまな要素を加味して、正しい経営の意思決定をしなければなりません」

ときには短期的に採算性の悪い事業部を存続させることもあり得る。中長期的視点に立って「会計数字+アルファ」を読み取る力があるかどうか、これによって企業トップの裁量能力が試される。この裁量能力を培うためには――いかに現場の声を聞き、現場について熟知しているか――そのことに尽きると鳥居教授は指摘する。

さらに、鳥居教授は代表的な世界企業「トヨタ自動車」が、いかにして海外の系列企業にニッポン式指導法を持ち込んで成功したのか、いくつか興味深い事例を挙げながら説明してくれた。

春の明学大白金キャンパス点描
春の明学大白金キャンパス点描

「厳しいゼミ」で一生モノの国家資格を目指してみては

明治学院大学経済学部の専門ゼミ演習は、3年次学部生からが対象で、前述のように学科の枠を越えて選択することができる。鳥居教授のゼミでは、例年10人前後のゼミ生を受け入れている。

「入ゼミ希望者が10人を超えると選抜になります。その選抜のポイントは、規定の学習単位を取得しているかどうか、さらに日商簿記検定2級以上を取得していればなお結構といった判断になります」

当然のことながら、鳥居ゼミの研究テーマは「管理会計」。管理会計分野の専門書を輪読しつつ、毎回の分担担当を決めて討議を重ねていくというスタイルがゼミの基本となる。

ところで鳥居ゼミのおきてとして、ゼミに遅刻した人と、ゼミ授業中に一度も発言しなかった者から罰金を徴収する制度がある。さらに夏合宿では、連日のように過密な学習浸けになることで、とにかく「厳しめのゼミ」という評判が学生のあいだに定着しているらしい。
しかしその一方で、多くのゼミOB・OGたちが残した鳥居教授の人物評はと言えば、「親身に考えてくれる」「ていねいな指導」「やさしく温厚な人柄」「豊富な知識」「面白い先生」などというものばかり。どうやら学部学科内のうわさと実像とには大きな落差があるようだ。

ちなみに徴収した罰金は、もっぱらゼミ内の懇親会費用に充てられる。なお、明治学院大学経済学部では卒業論文が必修ではないが、鳥居ゼミの学生たちの大半は挑むという(卒論提出は単位にも認定される)。あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語る。

「ゼミのモットーは――わずか10人前後の仲間だけで学ぶんだから楽しくやろう――に尽きます。またゼミ運営のポリシーとしては『自分の意見を述べよう』で、なんでも良いから全員で話し議論することが大切であると指導しています」

最後に、国の公認会計士試験委員を長く務めてきた鳥居教授ならではの資格取得に向けた一生モノのアドバイスをお届けしてインタビューを締めくくりたい。

「この資格試験は決して楽な試験ではありませんが、合格すれば待遇の良くなる企業が多いですし、なにより本人の自信にもつながります。高校生のみなさんも『大学に入ったら遊ぼう』というばかりではなく、公認会計士はじめ税理士などの難関資格取得を目標にチャレンジしてみるのも、意義ある学生生活にするための1つの選択になると思いますよ」

こんな学生に来てほしい

もっと積極的に大学を利用すべきですし、せっかく苦労して入って活用しないのは非常に惜しいと思いますね。いま一通りの情報の入手は、検索サイト頼みという学生ばかりという淋しい状況もありますが、たまには大学図書館で本を探して1日過ごして、一生モノの豊かな時間を楽しんで欲しいですね。
これは効率だけでみると時間の無駄のように思うかもしれませんが、広く情報と知識を探る喜びが味わえますし、ときに一生を左右するような「巨大な本」に巡り合う可能性すらもあり得ます。大学生活というのは、そういう「無駄な時間」を楽しめる唯一の時期でもあると思いますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。