早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京経済大学
コミュニケーション学部

柴内 康文 教授

しばない・やすふみ
1970年千葉県生まれ。’99年東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻博士課程単位修得退学。’99年同志社大学文学部社会学科新聞学専攻専任講師。’02年同助教授。’05年学部改組により社会学部メディア学科助教授。’07年同准教授。’12年東京経済大学コミュニケーション学部教授。主な著作に『孤独なボウリング:米国コミュニティの崩壊と再生』(訳書・柏書房)『ソーシャル・キャピタルのフロンティア』(共著・ミネルヴァ書房)『ソフト・パワーのメディア文化政策』(共編著・新曜社)などがある。

柴内教授が主宰する「柴内康文@東京経済大学」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.tku.ac.jp/~shibanai/

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柴内研究室が入る「6号館」
東京経済大キャンパス学生会館

社会関係資本としてのコミュニケーション研究

東京経済大学には「コミュニケーション学部」という学部がある(コミュニケーション学科だけの単科学部)。この学部開設は’95年で、この種の社会情報系の学部としては日本初の開設で、当時おおいに話題になった。

その教育目標に掲げているのは「メディアリテラシーの向上」。これは必要な情報を探索し、入手した情報を分析・解釈するために必要な機器操作能力や判断力を含む総合的な情報処理能力の向上を図ることとされる。まずは東京経済大学コミュニケーション学部の内容について、今週の一生モノのプロフェッサー・柴内康文教授に話してもらおう。

「先駆けとなったところだけに、教員スタッフの充実ぶりがみごとです。ユニークで特徴的な研究をしている教員が多く、それが他大学にはない卓越した特長になっています。そうしたスタッフといっしょの環境にいられるだけでも私など幸せを感じてしまいますね」

なお東京経済大学コミュニケーション学部は、(1)メディアコミュニケーション(2)企業コミュニケーション(3)現代文化(4)コミュニケーション表現――の4専攻で構成される。

ところで柴内教授の専門は、「メディア論」「コミュニケーション論」「社会心理学」だ。

「学生時代から社会心理学(social psychology)を専門としておりまして、その手法を用いてメディアとコミュニケーションについての応用研究をしています。わたしがこの研究を始めたころは、まだインターネットサービスが本格化する前で、いわゆる『パソコン通信』の時代でした」

始まったばかりのパソコン通信は、その通信容量と速度に制約も多く、一部マニアックな人たちの間の特殊なる閉じた世界といった評価しか受けていなかった。メディア研究の対象としては海のものとも山のものともつかない時代で、それを研究テーマに選ぶこと自体に反対の声もあるほどであった。

だが、あえて柴内教授はそんな風潮を押し切って研究を進めてきたのだ。「ある種の賭けでした」とも語る柴内教授だが、その研究を励ましたのは、数は少ないながらも確実にいた同学の道を志す先輩や仲間たちの存在だったという。

「初期の研究では、パソコン通信上でのコミュニケーションや人間関係のつくられ方には、どんな特徴的な性質や意味があるのかをテーマとしていました。そのうちにインターネット通信が始まり、それらメディア・コミュニケーションが社会や文化にどのように影響を与える可能性があるのかを研究するようになりました」

いまやブロードバンドや無線通信回線、そしてパソコンのみならず携帯端末の普及もあいまって「ネット文化」は百花繚乱の様相を呈している。柴内教授の先見性が証明されたことにもなろう。

建設が進む東京経大「新図書館棟」
春を迎えた国分寺キャンパス点描

コミュニケーションはネット世界でどう機能する

現下のネット文化全盛の社会的状況について、柴内教授はどのように考えるのだろうか。

「新しいメディアがいくつも登場することによって、人と人のつながりが重視されるようになっています。そのなかで広く社会学の範疇でもソーシャル・キャピタル(社会関係資本、英Social capital)論の見地から、人間関係や絆などについてとらえ直そうという動きが盛んになっています。人間関係の豊かな人は、プラス(利益)になるものが多く生み出されるという考え方ですね」

こうした学説によれば、人間関係の豊かな人(地域)は、そうでない人・地域よりも健康・長寿で、子どもたちの学力も高く、経済的にも潤っているという結果が出てくることとなるらしい。

「社会的コミュニケーションが豊かということは、いろんな価値を社会的に生み出すきっかけになるということです。3.11大震災のあと『絆』が国民的キーワードとなったのも、人間関係の重要さが改めて認識されたからという一面もあると思いますね」

そうした社会関係資本としてのコミュニケーションが、ますます多様化を遂げるネットの世界でどう機能していくのか――これらを追究するのが現在の柴内教授の研究テーマなのだ。

ところで柴内教授が東京経済大学に赴任したのは、昨年(12年度)の4月のこと。このコミュニケーション学部には、大学院生時代に同じような志で研究に携わっていた先輩や仲間たちの幾人かが教授職に就いているのだそうだ。

春を迎えた国分寺キャンパス点描
新緑が見事な大イチョウ樹

良い問題と結論を導き出す一生モノの研究作法

東京経済大学コミュニケーション学部のゼミ演習は2年次から始まる。各ゼミとも1学年の定員は15人。柴内教授の今年度のゼミは、2年次ゼミ生が定員いっぱいの15人で、3~4年次はそれぞれ10人ほどだそうだ。

「2年次のゼミでは、テキストの輪読を中心にしながら、大学で学ぶための作法(レジュメのまとめ方や発表の方法など)の基礎力を身につけてもらいます。専門的な本をしっかり読み込むのも、2年次のうちに必ず経験してもらうようにしています」

そして3年次については――

「ここでは卒業論文を念頭に置き、自ら問題を立てて調査・思考し、結論を導き出していく――そのための訓練期間に充てています。ここで重要なのは、自分で問題を立てるところです。ここからこそが大学ならでは醍醐味であり、それはまた卒業後にも必要なスキルになりますからね」

そして、4年次は卒論作成の本番となる。あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語る。

「自ら問題を立てて、その結論も自力で導き出せるような力をもった人を育てたいと思っています。できるなら、なるべく良い問題テーマと良い結論であってほしい。良い問題や結論とは何かというと、他の人々にも『それは面白そうだ、知りたい』『なるほど、そうだろうな』と納得してもらえるようなものであることかと思います」

ちなみに柴内教授は自身のURLのなかに、柴内ゼミに「向いている人」と「向いていない人」なるものについて記述しているので参照してほしい。それだけを読むと厳しい指導をする先生のように思われそうだが――

「本気で学ぼうという学生に来てもらいたいから書いてみただけのことです。それを読んで実際に集まる学生の多くは素直ですから、こちらが特別に厳しくすることなどほとんどせずにすみますね。こちらも楽しくやりたいですし」

といって笑う。

こんな学生に来てほしい

いろいろな社会的なことに関心があって、流行に敏感な人に来てもらえれば良いですね。その一方で最近は、世の中のことにあまり関心を示さずに、自らの狭い視野のなかで生活している人も多くいます。何もまじめ一方な政治経済のことでなくても、社会風俗のちょっとしたことでも構わないので、意識的に目を向けて敏感になってほしい。コミュニケーション学部で学ぶためには、それが一番大切になると思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。