早稲田塾
GOOD PROFESSOR

埼玉工業大学
人間社会学部 情報社会学科

高橋 広治 教授

たかはし・こうじ

1965年愛媛県生まれ。’93年京都大学大学院理学研究科宇宙物理学専攻博士後期課程修了。’94年日本学術振興会特別研究員。’97年東京大学大学院総合文化研究科リサーチアソシエイト(宇宙地球科学教室)。’99年同大学院理学系研究科リサーチアソシエイト(天文学専攻)。’02年埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科助教授。’07年同准教授。’13年より現職。

高橋教授が主宰する「高橋広治研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.sit.ac.jp/user/tkoji/

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高橋研究室の入る30号館「人間社会学部棟」
21号館「図書館・事務局合併棟」

計算科学で迫る宇宙恒星系の秘密

今回登壇ねがう一生モノのプロフェッサーは、埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科の高橋広治教授である。まずは、その所属する情報社会学科のことから伺った。

「多彩なことが学べる学科です。基本的には文系学科で文系の教養を広く学びながら、情報・コンピュータやコミュニケーションの知識も身につけられます」

埼玉工業大学情報社会学科には(1)ネットワーク社会(2)ディジタル表現(3)文化コミュニケーション――の3コースが用意されている。

「このうち『ネットワーク社会コース』では、経済・経営・法律など社会科学系の知識と情報・コンピュータの技術的なことが学べます。『ディジタル表現コース』はCG・コンピュータ音楽について、また『文化コミュニケーションコース』は哲学・宗教・語学などを学びながらコミュニケーション能力を高めていくことを目的にしています」

それぞれのコースに分かれて学ぶのは2年次からだが、コースによる縛りは緩やかで、他コースの科目履修も比較的に容易だという。つまり、IT情報系をめぐる多彩な研究分野を一気に学べる非常に魅力的な学科だと言える。

「他コースの科目も含めた幅広い教養やIT技術について学びながら、自分が属するコースの専門とするところを究めてほしいというのが学科のねらいです」

そう言い切る高橋教授は「ネットワーク社会コース」において、「計算科学」講座でおもに教鞭を執る。

「アカデミックな計算科学というよりも、コンピュータを中心にした『情報学』の基礎について指導しています。具体的には、1年次の『コンピュータ・リテラシー』や『数理基礎』、2年次の『データ解析法』などで、確率・統計などビジネスで使われる数学の話、表計算ソフト・エクセルなどを使った各種データの解析法について教えています」

9号館「学生ホール棟」
埼玉工大キャンパス点描

球状星団の動きをITシミュレーション研究

埼玉工業大学情報社会学科で情報学基礎(計算科学)について指導担当する高橋教授だが、「宇宙物理学(天文学)」を専門としている。こちらの研究内容についても話してもらおう。

「天文学には『理論天文学』と『観測天文学』とがあります。わたしが専門にしているのは理論天文学のほうで、コンピュータ・シミュレーションに基づいた理論的な研究をしています」

とくに最近の研究分野は「恒星系力学」(stellar dynamics)だという。

「多くの星が球形に集まってできた『球状星団』(Globular Cluster)と呼ばれる天体がありますが、典型的な球状星団は数十万~数百万個の星からできていて、我々が住む銀河系でも約150個の球状星団がすでに確認されています。これらの星団が誕生したのは100~130億年前といわれ、その誕生から現在までの宇宙構造の変化や力学的な進化の過程をコンピュータでシミュレーションして研究しています」

この球状星団も、時の経過とともに星は離脱していき、やがては消滅してしまうと考えられている。

「現在も観測される球体星団の質量の変化とともに、すでに消滅してしまった星団について、その数はどのくらいあって、その消滅の原因は何であったか? これらについて探る作業を続けています」

これらの研究はオーストラリアの大学に勤務するドイツ人研究者との共同によるもので、頻繁にE-mailで情報交換しながらシミュレーションを重ねつつ理論研究を進めている。なお高橋教授は、1年次学部生を対象にした教養科目のなかで「宇宙の科学」も講じている。

「畑違いの学科であっても中には『宇宙が好き』とか『星が好き』という人も一定数はいますから、そうした学生を対象にあまり専門的にならないように注意しつつ、日常的な天体現象である星の運行や太陽と地球の関係などについて講義しています」

田園風景のなかに立地する学舎
「埼工大通り」のプレート

一生モノの研究プロセスを身につけてほしい

埼玉工業大学情報社会学科のゼミ演習は、1~4年次の全学年にわたってある。1年次が「基礎ゼミ」、2年次が「中間ゼミ」、3年次から「専門ゼミ」で、4年次の卒業研究まで原則ひとりの教員による指導となる。

高橋教授は、3~4年次を対象にした「専門ゼミ」も担当している。先生のゼミに入ゼミを希望する人は毎年7~8人ほどで、その全員を原則として受け入れるようにしているという。

「わたしのゼミでは、卒研においてコンピュータ・プログラミングによる成果を各自に義務づけています。そのため3年次のゼミでは、まずプログラミングの基礎を学んでもらいます。これまでは広く使われているコンピュータ言語のひとつである『Java』の習得が中心でしたが、今年度からWebアプリ言語である『HTML』(HyperText Markup Language)と『JavaScript』の学習に変更しました」

これは、最近の学生の傾向としてパソコン以外のスマートフォンやタブレット端末を使用するケースも多く、それらへの応用対応を考えての変更だという。Webアプリならば、パソコン以外のツールからでも実行可能になるという配慮なのだ。

3年次の1年間をかけてWebアプリの基礎を習得し、4年次は卒業研究のプログラミングという流れとなる。最近は、オリジナルゲームの製作に挑む人が多いのだという。

「最初は高度な内容のゲームをみんな意気込んで始めるんですが、なかなか難しいのは当たり前のことです。結局は『テトリス』とか『インベーダーゲーム』『ブロック崩し』など定番的なゲームをベースにして、自分なりの工夫を加えるという人が多いのが実際なのですが(笑い)」

あらためてゼミ生たちへの指導方針についても語っていただいた。

「ここでプログラミングを学んでも、それを将来の職業にそのまま生かせる人は少ないだろうと思います。ですから卒研を通して、研究目標を自ら設定し、それに向けた計画を立てて修正しつつ実行していく。そのプロセスを身につけてほしいですね。社会に出ると自らやり遂げなければならない事ばかりですから、そうした姿勢を一生モノの習慣にしてもらいたいと願っております」

こんな学生に来てほしい

明確に学びたいものが定まっている人は、それはそれで結構です。しかし実は大半の人は何となくこの方面に興味がある程度で入ってくることの方が多いんですね(笑い)。
実際、文系なら文系のこうした方面というくらいでも構わないとも思います。自らの専門として何を学ぶのか―こんな大事なことを高校生レベルの経験のなかで決めろというのは酷なことです。大学に入ってから慎重に決めるぐらいでも遅くはないと思いますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。