早稲田塾
GOOD PROFESSOR

専修大学
文学部 歴史学科

樋口 映美 教授

ひぐち・はゆみ
三重県生まれ。’73年東京女子大学文理学部英米文学科卒。’76年成蹊大学大学院文学研究科修士課程西洋文化専攻修了。’81年米ノースキャロライナ大学チャペルヒル校歴史学研究博士課程中退。’81年ノースキャロライナ大学チャペルヒル校講師。’90年共立女子大学国際文化学部専任講師。’94年同助教授。’01年同教授。’03年より現職。アメリカ学会清水博賞(’98年)。

主な著作に『アメリカ黒人と北部産業』『流動する〈黒人〉コミュニティ』(編著)『歴史のなかの「アメリカ」』(共編著)『奴隷制の記憶―サマセットへの里帰り』(訳書)『貧困と怒りの南部―公民権運動への25年』(訳書・著作はいずれも彩流社刊)などがある。

樋口教授とゼミ生が主宰する「樋口研究室・樋口ゼミ」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thb0668/top.html

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樋口研究室が入る9号館「120年記念館」
生田キャンパス「9号館」への案内標

アメリカに生きる人々を知る

今週登場ねがう一生モノのプロフェッサーは、専修大学文学部歴史学科で教鞭を執る樋口映美教授である。まずは所属する歴史学科の特色から伺おう。

「本学の歴史学科は専攻が日本史とか西洋史とかで区分されていません。在籍する14人の教員がそれぞれの得意分野で、特徴を発揮しながら講義をし、各ゼミを担当しています。教員は個性的な先生が多く、学生さん一人ひとりと向き合うように指導しています」

教員と学生との距離が近いのが専修大学歴史学科の大きな特長といえそうだ。さらに、教えられる側である学生にとってもユニークな制度があるという。

「学生は入学して1年間は広くいろいろな分野について学んでから、2年次以降の専門を絞ることができます。つまり日本史で受験をした人であっても、ヨーロッパ史やアメリカ史やアジアの歴史などを自由に選択して学ぶことができます」

自らが学ぶ専門分野を決めるのに、入学してから半年以上の猶予が与えられるのは学生にとってはありがたい制度ともいえよう。さらに歴史学科の教員たちはとても仲が良く、それが学科全体の雰囲気にもなっているということだ。
樋口教授のご専門は「アメリカ合衆国(以下、アメリカ)におけるアフリカ系の人々(以下、黒人)」だ。

「わたしの研究については、単純に『アメリカ黒人史』のように括りたくないと思っています。これまでの研究で主眼に置いてきたのは、19世紀末から第二次世界大戦ころまでのアメリカ黒人とアメリカ社会との関係です」

2012沖縄合宿において首里城前にて
初夏の専修大生田キャンパス点描

アメリカ公民権運動「犠牲」の事実を掘り起こす

19世紀末から1950年代にかけては、悪名高いジム・クロウ法(アメリカ黒人を対象に公共施設などの利用制限を定めた南北戦争以降の法律、英Jim Crow law)がアメリカ南部諸州で施行されていた。いわば人種差別が常態化していた時代であった。

「それは、はっきりと白人優位・黒人劣位が徹底されていた時代でした。そんな時代にあっても、自分たちも人間として平等の権利を行使すべきと主張して活動する黒人たちもおりました。そうした意識改革や雇用差別撤廃を訴えた活動が組織だってきた時代、そのあたりを中心に調べてきました」

さらに、アメリカ国内で出版された諸研究書の翻訳も樋口教授の研究テーマのひとつでもある。その翻訳書の一部を挙げていただくと――

「たとえば最近では、奴隷制の過去が現代社会に生きる人々にどんな問題を投げかけているのかを問うた『奴隷制の記憶』ですとか、あるいは第二次世界大戦後にアメリカ南部で公民権運動にかかわった人物の体験記『貧困と怒りの南部』などの翻訳出版があります」

ここで「公民権運動」(Civil Rights Movement)というのは、アメリカ黒人の権利擁護と人種差別撤廃を訴えた運動で、たとえば1964年成立の公民権法(Civil Rights Act)もその産物のひとつである。さらに樋口教授は、アメリカ南部の現地に赴いて聞き取り調査もしてきた。

「アメリカ南部ミシシッピ州を訪れて、かつて公民権運動に参加した人や、現在の運動に参加して活動している人たちの話を聞いて、普通の人々が生活の中からどのように運動に参加していったのかを研究しています。ミシシッピ州というのはジム・クロウ時代とくに人種差別の激しかったところで、この公民権をめぐる活動では多大な犠牲が払われました。その記憶を消してはならないという想いからですね」

初夏の専修大生田キャンパス点描
大学と向ヶ丘遊園駅とを結ぶ小田急バス

自らに深くかかわる超大国の歴史を知らずして

専修大学歴史学科における本ゼミ(専門ゼミ)は2年次から始まり、4年次の卒業論文作成まで同じ教員のもとで学ぶ。樋口教授のゼミは2~4年次合同でなされ、現在のメンバーは4年次が13人、3年次が6人、2年次が5人だという。

「4月新年度のゼミ演習はアメリカ史関連の論文の講読から始めます。論文は全員が読んできますが、ゼミ生に報告担当者を割り振って内容と考察を発表してもらい、全員でディスカッションします。新人の2年次ゼミ生には、先輩がサポート役でつくようにしています。後期のゼミでは、アメリカ史に関する原典史料をみんなで翻訳して、それを専修大学歴史学科の学会誌『専修史学』に掲載発表しています」

こんなことができるのも学部生は、専修大学歴史学会のメンバーとして参加が許されているからなのだ。また樋口ゼミの合宿は夏と春の2回が恒例となる。このうち夏はゼミ生たちが相談してそのつど行き先を変え、春は沖縄に行くのが決まりだそうだ。そして4年次ゼミ生は必修の卒業論文に集中する。

ちなみに樋口教授の研究室は、教授が大学構内にいるあいだはゼミ生に開放される。たとえ講義で研究室を不在にするときでも、部屋はゼミ生に開放されたまま。自由に出入りし、そこで史料を調べたり、リポートを作成したりも出来るという。

あらためて研究生・ゼミ生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。
「ゼミを通して論文や史料の読み方を身につけてほしい。自分で考える癖をつけてほしいですね。そうすることで独自の視点による卒論に仕上がっていきます。他人の論文を引用してページ数を埋めただけでは論文になりません。原史料を読み込んで、多少つたなくても自らの視点で考察した独自の論文を書いてほしいですね」

こんな学生に来てほしい

わたしのところでやっているのはアメリカ史が中心ですので、英語を読むことを厭わないでほしいですね。来てほしいのは、自らの知らないことにチャレンジする気持ちのある人です。じつはアメリカ史というのは、現在の日本と深くかかわっている大国の歴史ですが、高校までほとんど扱われません。あえてそこにチャレンジしてみたいという人に期待したいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。