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GOOD PROFESSOR

城西大学
理学部 化学科

若林 英嗣 教授(学科主任)

わかばやし・ひでつぐ
1956年長野県生まれ。’78年城西大学理学部卒。理学博士(1989年東北大学)。’78年城西大学理学部助手。’93年同講師。’04年同助教授。’07年同准教授(名称変更)。’10年より現職。学科主任。

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若林研究室が入る1号館「理学部棟」
城西大坂戸キャンパスの正門

想定外が失敗と限らない有機合成化学

今週紹介する一生モノのプロフェッサーには、城西大学理学部化学科の学科主任でもある若林英嗣教授に登場していただいた。まずは、その所属する同化学科の特色から聞いていこう。

「本学化学科では、若い教員8人が新たに着任し、教員の平均年齢が一気に若返りました。着任教員はいずれも最先端のナノテクノロジー・先端材料・新エネルギー分野の研究に携われておられ、学科全体が非常に活気に満ちたものになりました。まずは、これが本学科のトップニュースですね」

城西大学化学科の指導ポリシーについては次のように語る。

「大学で最先端の化学について学んだからといって、将来も引き続き同じ研究に就けるとは限りません。しかし、ここで学んだ勉強法や化学実験の方法、あるいは壁にぶつかったときの乗り越え方、コミュニケーション能力などは、将来かならず役立つだろうと思います。我々教員もそれを念頭に置いて指導しておりますし、学生諸君もその心構えで学んでほしいと思っております」

とくに同学科の1年次では、最先端の、想像を超える科学の面白さや、大学と高校の橋渡し的な授業により大学での学び方に慣れてもらう試みもなされている。ただし大学理系学科の授業レベルに戸惑って留年しそうになる学生も出てくることもあり得るが、そうしたことへの対策にも抜かりはないという。

「留年しそうだったり不登校気味だったりする学生には、定期的に担任が相談に乗るようにしています。精神的に悩む学生にも専門カウンセラーによる対応が用意されています」

さらに2年次からは、入試制度の多様化により多方面に進路を希望する学生が増えていることから、(1)物質・情報科学(2)合成化学(3)生命化学(4)一般化学の4つのコース制を設け、先端分野の研究を通してきめ細かな教育をおこない、進みたい各自の進路を教員一丸となって応援していく。

このほか1~3年次全体において実験科目の授業を多くしており、基礎的な実験技術を習得できるようにしていること、さらに近年の傾向として教員をめざす人が増えて、教員試験に合格して教壇に立つ人が多いことなども話してくれた。

ケヤキ並木が美しい坂戸キャンパス
大学本部が入る「清光会館」

「アズレン」有機化合物から探る新薬効成分

若林教授のご専門は「有機化学」だ。

「炭素をふくむ天然由来のものを化学的に合成するのが研究テーマで『有機合成化学』(Synthetic organic chemistry)ともいわれます。いわゆる『合成屋』ですね。そうした研究がなんの役に立つのか、よくそんな質問を受けますが、私たちは基礎化学の研究者であり、すぐに最新の技術として応用できるわけではありません。しかし、将来実用化できると信じて研究を進めています。ただ、実用化のためには多くの別の専門家の方との共同研究と年月が必要です」

そんな若林教授がいま取り組んでいるのが代表的な非ベンゼン系芳香族化合物である「アズレン」(azulene)だ。

「アズレン類は、自然界においてハーブのカモミール精油やヨモギなどに含まれています。これらの薬理効果は数百年前から知られていましたが、その構造が解明されたのは最近のこと(1937年)でして、非常に興味深い構造をしていることでも知られます」

若林教授は、その構造への興味とともにアズレンの色にも魅せられた。

「アズレンは分子式『C10H8』で表され、本来無色なものが多い化合物のなかで、非常にきれいな青色をしていて惹かれます。このアズレン類には抗炎症作用の効果があって、うがい薬や目薬とか十二指腸潰瘍などの薬に使われています。目薬が青色をしていたら、まずアズレンが入っていると思っていいくらいです」

若林教授がこうした研究に取り組むようになって、すでに10年ほどになるという。

「アズレン骨格をもつ化合物を合成して、その新化合物に薬としての作用が探し出せないかなど調べています。ただ、なかなか面白いものが合成されないなどのジレンマも多く、研究者が少なくなっているのが残念なところです。わたしとしては、アズレンと別の物質を反応させて違う世界に広げられたらと考え日々研究に向かっています」

アズレンなど芳香族化学化合物の例
研究室内で学生たちとともに

一生モノのコミュニケーション能力も鍛える

城西大学化学科の学部生が研究室の配属になるのは3年次の3月からで、新学期までの約1ヵ月のあいだに先輩4年生との引き継ぎ作業を進めることになる。若林教授の研究室に配属になる学部生は例年5人前後。ただし人気のある研究室だけに配属を希望する学生は多い。予備投票をしてできるだけ希望どおりの研究室に配属できるようにしているが、それでも定員をオーバーしたときは成績順の選抜になるという。

「4年次に進級しますとほぼ卒業研究づけの毎日になります。その研究テーマについては、こちらからアズレンに関するテーマをいくつか用意して提示し、学生はその中から自ら興味のあるテーマを選んで研究するという方法をとっています」

なお城西大学には、研究室の機器のほかに最新設備を備えた「機器分析センター」があり、大学院生や化学科4年次の学生はここで機器操作などに習熟していく。

「ここには質量分析計や核磁気共鳴装置(NMR)など、大型の最新機器が設置されています。こうした機器の原理や解析方法などを輪講で学びます。この輪講では、教員と学生が区別なく自由に意見を出し合って理解を深めることを目的にしています」

あらためて研究生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。

「化学実験では予想外の反応が起こることがしばしばです。むしろ、すんなり成功するほうが少ないくらいです。しかし予想外の反応が起きたからといって、それが失敗だということではありません。そこから新しいものが生まれる可能性があると考えるのが化学なのです」

このことを学生にはよく言って聞かせるという。さらには一生モノのリテラシー対策にも対応しているという。

「以前とくらべ生身のコミュニケーション能力に欠ける人が増えている気がします。その能力をつけるためにゼミのなかで月例報告をさせるなど、自ら意見をまとめて発表する機会を多くしています。卒業生からの要望が多いのもこの点でして、わたしもこの指導にはとくに力を入れております」

こんな生徒に来てほしい

大学には夢をもって来てほしい。夢や目的をもっていれば、いま自分がしなければならないことが自ずとわかってくるはずです。そうすれば自然に前へ前へと人生を進むことができます。さらに受験生のみなさんに望みたいことは、化学と英語の基礎ぐらいはしっかり学んできてほしいということですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。