早稲田塾
GOOD PROFESSOR

武蔵大学
経済学部 経営学科

高橋 徳行 教授

たかはし・のりゆき
1956年北海道生まれ。’80年慶應義塾大学経済学部卒。’80年国民金融公庫(現日本政策金融公庫)入庫。’98年米バブソン大学経営学修士課程修了(MBA取得)。’02年国民生活金融公庫総合研究所主席研究員。’03年より現職。

著作は『地域が元気になるために本当に必要なこと』(編著・同友館)『新・起業学入門』(経済産業調査会)『起業学の基礎‐ アントレプレナーシップとは何か』(勁草書房)など多数。

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高橋研究室が入る「教授研究棟」
武蔵大学キャンパスの正門

アントレプレナーシップ研究の第一人者

今週の一生モノのプロフェッサーは、武蔵大学経済学部経営学科の高橋徳行教授である。高橋教授はアントレプレナーシップ(起業家活動)研究における日本のトップリーダーとしてつとに知られる。まずは、その所属する武蔵大学経済学部(経済学科・経営学科・金融学科の3学科から構成)について語ってもらおう。

「経済学科・経営学科・金融学科それぞれコース制を敷いていて、経済学部学生ならどの学科どのコースの授業でも自由に履修できます。ゼミ演習も学科の枠を越えて自由に選択できます。履修しはじめてから本当に学びたいことが別の学科やコースにあった場合には、2年生からのゼミを学びたいコースの中から選ぶことで、経済学部のどのコースにも進むことができるのです」

新入生にとっては、経済学科と経営学科・金融学科との違いがなかなかわかりづらい面もあろう。こうしたフレキシブルな制度を活用する学生は多いという。

「ゼミも1~4年次まであって必修です。毎年12月にゼミ大会が開催され、ほとんどのゼミが参加して1年間の研究成果が発表されます。その審査は外部の審査員にお願いし、一般企業の方も聴きに来られて、経済学部を挙げての一大イベントになっています」

それぞれゼミでは夏休みあたりから準備を始め、12月の本番に向け学部全体で大いに盛り上がるのだそうだ。

昨秋完成した武蔵大「新1号館」
格調高い雰囲気のある「大講堂」

社会問題の解決にも役立つビジネス起業とは

高橋教授のご専門は「ベンチャー企業論」で、研究テーマが「アントレプレナーシップ研究」(起業学、英entrepreneurship studies)だ。アントレプレナーシップというのは、新しいビジネスや新しい組織をつくってスタートする活動のことをいう。アメリカの有名な起業家教育者・研究者が著した『アントレプレナーシップ』(日経BP社)を翻訳(共訳)して、体系的な起業家教育をわが国にいち早く紹介したのは高橋教授である。

「研究の柱は2つあります。雇用を創り出すためには、起業が重要な役割を果たしており、そこで起業が活発化するためには、どんな環境が求められているのかというのが研究の第1の柱です」

もう一つは、起業のために必要な知識・経験・ノウハウということになる。

「新しいビジネスの考え方から、起業への手順、資金調達や従業員確保はどうするのか、マーケティングも既存の企業とは違う方法になるはずです。そうしたことを研究するのが第2の柱になります」

IT社会の到来等もあって、最近の起業や組織の立ち上げのノウハウは旧来のものから大きく様変わりしているとも語る。

「たとえば資金調達もネットを利用して集められるようになっています。またマーケティングも、大掛かりな調査やマスメディアを頼らずにネットの検索サービスやSNSなどを活用すれば、ほぼ無料で対象を絞り込んで告知なり宣伝なりができます。初期投資をいかに抑えてハードルを低くするか、それは工夫次第ということですね」

極端にいえば携帯電話やスマホが1台あれば、オフィスも電話番の従業員もなしでの起業が可能な時代になった。起業する人それぞれのニーズに合った最適な方策を探って提言すること、さらにそれが社会問題の解決に広がっていけば、それこそがアントレプレナーシップの発露した姿であるという。

緑陰涼しい武蔵大キャンパス点描
最寄り駅のひとつ西武池袋線「江古田駅」

無から有を生む一生モノのリテラシー

武蔵大学経済学部のゼミ演習は1~4年次まであると先述したが、専門ゼミについては2~4年次までの学部生が対象である。高橋教授のゼミでは例年15~18人ほどのゼミ生を受け入れている。人気のゼミだけに希望者は多く、例年選抜になるという。

「入ゼミ生の選抜はわたしが面接をして決めています。面接のポイントは、新しいビジネスを立ち上げることに興味があるかどうか。あるいは、新しいビジネスが社会に果たす意義について理解しているかどうかですね」

つまりは、無から有を生み出す発想力のある人、もしくはそのような人を尊敬できるかということ。既存ビジネスの発展だけに興味があるような人にはあまり向かないだろうという。そんな高橋教授のゼミは学年別となる。

「2年次のゼミでは、民間の学童保育の施設、障害者の自立を支援する施設、乳幼児を抱える母親専用の漫画ルームなど、身近な問題を解決しようとしている起業家から経営上の課題をもらって、それについてグループで解決策を考えて提言する活動をしています」

ここでは現実の起業家から出された課題だけに、ゼミ生たちも意欲的に取り組み提言プラン作成にも熱がこもることになる。

さらに3年次ゼミ生については今年度から新たな取り組みを始めている。3年次ゼミ生を4チームに分けて、(1)老舗はなぜ老舗になれたのか(2)若者の起業意識を高めるには(3)私たちが働きたくなるような魅力ある中小企業とは(4)中小企業が大企業に負けないためには――というテーマで研究している。

「実はこの同じ4テーマについて、東洋大学経済学部・安田武彦教授のゼミのチームでも研究してもらっています。前期の後半には合同でゼミを開いて、そこで発表会をします。ここまではよくあることですが、新機軸は後期のゼミで同じテーマを研究する別々の大学のチームがいっしょになって研究を進め、さらに深化した結論を導き出す試みを実施することです。11月末の発表会には政府系金融機関や官庁の政策担当者などにも参加してもらう予定です」

こうした合同ゼミの試みは全国でもあまり例がないことで、ゼミ生諸君も張り切らざるを得ないことだろう(ちなみに東洋大学の安田武彦教授については次回以降に本欄で取り上げる予定)。

インタビューの最後にあらためてゼミ生たちへの指導方針について語ってくれた。

「自ら新たなビジネスを考え、その設計図が描けるようになってほしいですね。これからの時代は、ますます新たな発想をすることが求められます。それを実現するためにも自ら考え抜く一生モノの力をつけてほしいと思っています」

こんな学生に来てほしい

既存の看板にぶら下がるのではなく、看板を背負うような気概のある人が良いですね。つまり、有名な会社に就職するのを目指すのではなく、自ら就職した会社を有名にするような気持ちのある人ですね。小さな会社ほど大きくなる可能性があります。さらに独力で起業することも、人生の選択肢の一つとして考えてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。