早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東洋大学
経済学部 経済学科

安田 武彦 教授

やすだ・たけひこ
1958年東京生まれ。’83年東京大学経済学部卒。’83年通商産業省(現経済産業省)入省。中小企業庁調査課勤務。’95年米スタンフォード大学APARC客員研究員。’98年信州大学経済学部助教授。’99年同教授。’01年中小企業庁調査室長。’04年東洋大学経済学部教授。’05年「中小企業研究奨励賞」(商工総合研究所)。

主な著作に『テキスト ライフサイクルから見た中小企業論』(同友館)『企業の一生の経済学』(ナカニシヤ出版)『日本の新規開業企業』(白桃書房)などがある(著作はいずれも共著)。

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安田研究室が入る白山キャンパス2号館
正門から白山キャンパスへのアプローチ

ライフサイクルから見た中小企業研究

今回登場願うのは東洋大学経済学部の安田武彦教授。じつは前回本欄で紹介した武蔵大学経済学部の高橋徳行教授から他大学ゼミとの共同研究の話があったが、そのゼミ指導教授が安田教授だ。まずは安田教授に東洋大学経済学部のことから話してもらおう。

「本学経済学部は、(1)経済(2)国際経済(3)総合政策の3学科からなり、それぞれに特徴的です。わたしが所属する経済学科は、理論と実証から生きた経済学を教育目標に掲げています。きちんと経済学を学ぶことで世の中の見え方が違ってくるということ、そしてそうした見方のできる学生を育てるべく指導しています」

さらに東洋大学経済学部では外国語教育にも力を入れている。必修の英語のほかドイツ語やフランス語・中国語が選択で学べるようになっている。またゼミ履修は1~4年次にわたってあり、1年次が基礎ゼミで、2年次以降が専門ゼミになる。

安田教授のご専門は「中小企業論」。前職時代は『中小企業白書』の執筆に携わり、とくに02~04年度の白書作成では中心的役割を担った。

「02~04年度というのは、小泉自公政権が誕生した最初の3年間にあたり、失われた10年を経ていたものの、多少とも経済界に活気がありました。その活気は小泉構造改革がもたらしたものとされ、改革の中心は大幅な規制緩和と企業創業の促進でした。ですから白書の作成も面白くやりがいがありました」

その小泉構造改革だが、大胆な改革を含んでいたという評価がある一方で、その後の「リーマンショック」「3.11東日本大震災」などを経た今では、その評価も相半ばする。これについて安田教授の見解はこうだ。

「改革には、うまくいく面とそうでない両面があるのは否めません。経済を動かすという観点から評価しますと、小泉改革について、わたしはうまくいった方だと思います。たしかに格差拡大など弊害面も目立ちますが、それは制度的な問題なのですから、だんだんと良い方向に向けて修正していけば良いはずなのです」

新装なった「8号館」(125周年記念館)
東洋大「井上円了記念博物館」

中小企業の誕生から成長・退出までを見守る

次いで、安田教授の研究専門分野である「中小企業論」について一体どんなことを研究しているのかについて説明をお願いした。

「わたしが研究しているのは、いわば『企業の一生』についての経済学です。人間に誕生する瞬間があるように、企業にも起業する瞬間があります。そこには当然ながら産みの苦しみがあります。人が成長するにつれて悩みが増えるように、企業も販路拡大や他企業との連携・競争などの諸課題を抱えることになります」

どうやら企業のあり方を人間の一生になぞらえながら、その誕生から幼年期・青年期・壮年期・衰退期について経済学の視点でメスを入れていくということのようだ。

「このほか、中小企業政策について統計学的観点からの分析研究もしています。99年に中小企業基本法が改正され、企業の創業が容易にできるようになりました。そうした改革が中小企業政策の流れをどう変えていくのか、そうしたことを定量的に分析してきました」

さらにアメリカ発のグローバリズムが席巻する21世紀に立ち向かう、日本の中小企業の今後については次のように語る。

「長引く大不況のなか中小企業の数は減っています。しかし逆にいえば、いま生き残る中小企業は質が高いともいえ、その総体的な質は上がっているといえます。そうした中小企業が、日本経済を支える基盤になっていくだろうと期待しています」

初夏迎えた白山キャンパス点描
初夏迎えた白山キャンパス点描

あらゆる研究手法にふれる一生モノのゼミ

先述のように東洋大学経済学部の専門ゼミ演習は2~4年次の学部生が対象だ。安田教授のゼミでは例年20人ほどのゼミ生を受け入れているが、入ゼミを希望する学生は多く毎年のように選抜になるという。

「選抜については3年次の先輩ゼミ生による面接に任せています。それにより異世代間交流にもなること、さらに先輩ゼミ生には自らで選んだ後輩の指導に責任をもつこと、などを期待してのことです」

その具体的なゼミ活動は学年ごとに進められる。

「2年次のゼミはインタビューが中心で、起業をした人、中小企業の経営者、行政で中小企業を担当している係官などの意見を聞いてまわっています。このフィールドワークを経験することで質問力がつき、何事についても『なぜ?』と疑問をもって考えられるようになればと思っています」

3年次のゼミでは、その年に発表された『中小企業白書』の要約版をつくるという、一転してデスクワーク型の共同作業が中心となる。安田教授ならではと言えよう。

「白書要約の作成は前期にやります。この要約版は市販しますが、例年完売します。大学ゼミで毎年冊子を発行し市販するのは全国的に例がないのではないでしょうか。3年次後期は、インターネット等を使ったアンケート調査をやっており、その質問は年度によって内容を変えて実施しています。これによって、(1)質問を考える(2)アンケート調査をする(3)結果を文章にまとめる――という研究プロセスの訓練になればと思っています」

なお3年次ゼミ生には2013年度から、先に掲載した武蔵大学経済学部高橋ゼミとのジョイント研究が新たに加わる。(1)老舗企業の老舗たる理由(2)若手社員の企業意識を高める(3)魅力ある中小企業とは(4)中小企業が大企業に負けないためには――という4テーマごとにチーム研究を進めていく。2つの大学のゼミが同一テーマについて共同で研究するという画期的な試みとなる。

「果たしてどういう結果になるんでしょうかねぇ(笑い)」

なお、4年次ゼミ生には卒業論文の作成が待っている。最後にあらためてゼミ生たちへの指導方針についてこう語ってくれた。

「自ら動ける人を育てることですね。教員はそのための場づくりをする者と考えています。ゼミ合宿も日程はわたしが決めますが、あとはすべてゼミ生たちが自主的にやってくれます。一生モノの交友関係をつくるための場としてもゼミはあるということですね」

こんな学生に来てほしい

「何かをやってやろう」などと野心をもっている学生さんがいいですね。大学4年間でなすべき「何か」と「やり方」については、わたしも一緒になって考えてあげられると思いますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。