早稲田塾
GOOD PROFESSOR

駒澤大学
グローバル・メディア・スタディーズ学部

白水 繁彦 教授

しらみず・しげひこ

佐賀県出身。社会学博士(立教大学より授与)。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程中退。高千穂大学教授・武蔵大学社会学部教授をへて、’08年より現職。この間に米グレースランド大学・米ハワイ大学の客員教員や東京大学客員教授・CNN「デイブレイク」メインキャスター・神奈川県広報ビデオ審査委員・放送番組国際交流センター(JAMCO)番組選考委員などを務める。

著作は『イノベーション社会学』『多文化社会ハワイのリアリティー:民族間交渉と文化創生』(編著。前著ともに御茶の水書房)『エスニック・メディア研究:越境・多文化・アイデンティティ』(明石書房)など多数。

白水教授が主宰する「白水繁彦のホームページ 」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.zd.em-net.ne.jp/~shige/

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白水研究室が入る第1研究館
駒澤大学正門横の大学名プレート

「多文化こそが望ましい」―エスニシティの社会学

「生年月日は公表していません。研究に向かう気持ちは大学院生のころとまったく変わっていませんしね」

冒頭そう語るのは、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部(GMS学部はグローバル・メディア学科だけの単科学部)の白水繁彦教授である。その語るほどに古今東西あらゆる事物への博覧強記さがますます際立つ。自らの専門のこと、ゼミのこと、学生教育のこと等について詳しく語っていただいた。そこで今回はいつもと趣向を変えて、以下、白水教授の口から語られた語録形式で記事を構成してみた。

――まずは、専門分野である「エスニシティの社会学」については?

「長くメディア論を専門にしていましたが、80年代にハワイで沖縄系の移民集団リーダーと知り合ったことが私にとって契機となりました。その活動と人物にひかれ、エスニシティ(出自や文化を共有するマイノリティ集団、英ethnicity)の社会学、そしてそのアイデンティティ(自己同一性、英identity)の問題について研究するようになるわけです」

「その人、故・佐喜眞彰(サキマ・アキラ)さんは沖縄系二世。つまり沖縄からの移民であるご両親からハワイで生まれました。非常に顔が広く、また他人の面倒もよくみる人でした。彼はずっと労働者の住む地域に住み、先住ハワイ系をふくめた貧しい人々を助けながら、30数年間ハワイ州の下院議員を務めた方です。そうしながらも、いっさい見返りを求めずに利益誘導などもしない方で、人々の信頼の厚い人でした。沖縄系のエスニック・リーダーの先鞭をつけた人と言っていいでしょうね」

「佐喜眞さんとの出会いを通して、沖縄系エスニシティ集団がつくられていく様子やリーダーの志向や戦略・戦術などについて社会学的に研究することになります。やがてその研究フィールドはハワイから北米・南米へと広がりました」

「ハワイ移民の沖縄3世の若者たちに、すばらしい伝統文化をもつ沖縄人の子孫の意味を教え、自信と誇りをもてるように沖縄系のリーダーたちを手助けしたのはハワイ大学の先生たちでした。それにより日系人という漠然とした認識から、沖縄移民の子孫「オキナワン」(Okinawan)というアイデンティティが確立されました。自信と誇りをもつことで、将来への目標ができ、不良化や非行化などへ道を誤ることもなくなるはず――というのがリーダーたちの信念です。社会教育(エスニシティ教育)が果たす役割の大きさを感じます」

「文化はできるだけ多様であることが望ましい――というのがわたしの考え方です。だから、いかにして沖縄系や日系・中国系などマイノリティの人々が自分たちの文化を継承発展させているのか? それらも、エスニシティの社会学の重要なテーマのひとつです

「ハワイでは毎年夏に『オキナワン・フェスティバル』(Okinawan Festival)が盛大に開かれ、わたしも毎年希望するゼミ生を連れてボランティア参加しています。1週間余の短い滞在ですが、英語が飛び交うなかでアンダーギー(沖縄ドーナツ)をつくり、一段落したら英語でインタビューをする。こうした活動を通してゼミ生のなかには一皮も二皮もむけて逞しくなる人が出てきますよ」

駒澤キャンパス内の大学図書館
初夏を迎えた駒澤大キャンパス点描

「発言なしは許さない」という白水ゼミのルール

――つづいて、自らの専門ゼミの内容については?

「GMS学部の専門ゼミ演習は、2年次からで4年次までの3年間続きます。わたしは1学年15~20人ほどのゼミ生を受け入れています。入ゼミ希望者はその倍ほどもあって、例年のように選抜になっています」

「選抜はわたしが面接をして決めています。ゼミではフィールド調査が中心になりますから、自律的に行動できるかどうかが第一のポイントです。調査は海外にも及びますので、英語力も重要なポイントです。さらに歴史や国語力の素養も必要となります」

「ゼミにおける研究テーマは、(1)新製品や新しい流行などがどのようにして広まるのかを研究する『イノべーション社会学』(2)在外日系人(あるいは在日外国人)が自国の文化をどのようにして維持または変容させているのかを調査する『エスニック文化研究』(3)祭りの創生や地場産品のブランド化などを調査する『地域の活性化の研究』――この3つからなります」

「それぞれ調査の結果はゼミの時間に発表することになりますが、その発表の前にわたしの前で発表練習をしに来る学生がたくさんいます。ここで問題点を修正してあげることができます」

「全員必ずその日に一回は発言することをゼミのルールにしています。なにかを発言することで、自分の頭の中も整理されるし、その発言が他のメンバーを刺激し議論を生み出すというわけです」

初夏を迎えた駒澤大キャンパス点描
「駒沢オリンピック公園」から眺む

自らのプライドからモチベーションはやって来る

――最後に、学生たちへの教育指導方針については?

「わたしはゼミのほか『イノベーション社会学』などの授業(講義)も持っています。ここでは原則として出欠を取りません。どんなに時代が変わろうと、心ある学生はおります。教育する側としてはその心を刺激できるかどうかが勝負です。じっさい大多数の学生が毎回出席してくれています」

「教育とは、知識の多い学生を育てるのではなく、『自分ではこうしたいと思うのですが、どうでしょうか?』などと自ら進んで言えるような学生を育てることにこそ意味があります。これからの社会では、そういう人こそが求められると思うのです」

「20歳前後の若者というのは、大脳における細胞分裂がいちばん活発な時期ですから、教えていて面白いですよね。私がしてやれることは、人間が生まれ変わって一皮も二皮もむける―その皮むきを手伝ってやることですね」

「自らのプライドからモチベーションはやって来る――これがわたしの持論です。自分のレベルはこんなものではないはず――ということに気付かせてあげることですね」

「一番もったいないのは、試験では良い成績をとるのに、授業やゼミで発言する勇気をもたない学生ですね。マインド(大脳)は良いのに、ハート(心)が弱い。いかにハートを鍛えてあげられるか。強いマインドとハートがそろえば、社会に出てから有能な人材として活躍できるはずなのです」

「ここでいう『社会』とは「世界の舞台』でということです。わたしも外国をいろいろ歩いてみて、強く感じるのは日本人一般の消極性です。やはりハートを鍛えないと世界で貢献はできません」

以上、白水教授の骨太な肉声の数々は現役高校生のみなさんに届いただろうか? これら一生モノの指導方針のもと、たくましくも成長した卒業生たちが多数輩出しつづけていることを改めて実感するインタビューともなった。

こんな学生に来てほしい

『当事者意識』をもった人ですね。ここで当事者意識というのは、何事も他人任せにしないで(傍観者にならないで)、つねに「その役割は自分が引き受けられるのではないか」、事情でそれができない場合でも「自分ならどうするか」をつねに考えている人のことです。こういう人はボンヤリしている暇がありませんから、大脳がものすごく発達します。そういう人、あるいはそういう人を目指している方に来ていただきたいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。