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GOOD PROFESSOR

立教大学
理学部 化学科

常盤 広明 教授

ときわ・ひろあき
1961年神奈川県生まれ。’89年静岡薬科大学(現・静岡県立大学)大学院薬学研究科薬品物理化学専攻博士課程中退。’89年星薬科大学薬学部物理学教室助手。’91年静岡理工科大学理工学部物質科学科助手。’95年立教大学理学部化学科専任講師。’00年同助教授。’08年より現職。この間ノーベル賞候補の呼び声高い諸熊奎治先生の下へ3回留学。博士(理学)。

常盤教授の研究内容のうち「食品中に含まれる化学成分を利用した新薬開発」の一部については、『えのき茶ダイエット』(小学館)『干しえのき・えのきだけ 20倍健康法』(永岡書店)などで詳しく紹介されている。

常盤教授が主宰する「理論創薬・分子設計研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www2.rikkyo.ac.jp/~tokiwa/

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常盤研究室などが入る「4号館」
立教大キャンパス「4号館」入り口

コンピューター創薬のパイオニア

コンピューターを使って人類発の新たな医薬品を創出する――立教大学理学部化学科の常盤広明教授がこうした研究分野に携わって25年になる。当初は携わる研究者の数も少なかったそうで、常盤教授はそのパイオニアの一人でもある。

「学生時代から薬品物理化学を専攻していまして、当時から創薬における分子レベルの理論的アプローチには関心をもっていました。ただ、そのころはコンピューターの計算能力もまだ低く、小さな分子の計算が精いっぱいで、ダイオキシンなど環境ホルモンの解析をする程度のことしか出来ませんでした(当時としては世界に先駆けての研究でしたが)。2013年のノーベル化学賞がまさにそうでしたが、IT技術などの目覚ましい発展を背景に理論的手法も改良され、いまやコンピューターでの創薬が本格的に可能になりました」

そもそものコンピューターを用いた創薬のメリットについても常盤教授から説明していただこう。

「毒性のある化学物質でも危険を伴わずに実験シミュレーションができますし、自然環境に負荷をかけることもありません。さらには地球上に存在しない医薬物質をつくったり、遠く離れた宇宙空間を想定した実験をしたりすることさえも可能です。これまで一つの薬をつくるには数十万~数万もの化合物合成を繰り返して、それら一つひとつに対して効果と副作用をチェックしなければなりませんでしたが、その手間が大幅に軽減されます」

こうした画期的手法で常盤教授の研究室がいま取り組む主な研究は、(1)食品中に含まれる化学成分を利用した新薬の開発 (2)治療薬やワクチンのないウイルス感染症用の新薬の開発 (3)生活習慣病ターゲット核内受容体の高次複合体解析に基づく新薬の開発――の3点だ。

「我々は小さな研究室ですので、これだけスケールの大きな問題を丸ごと抱え込むことには無理があります。ですから、現場の医師をはじめ様々な分野の専門家の方と協力しつつ創薬研究を進めています。そうした態勢のなかで、我々は主にコンピューター・シミュレーション部門のパートを担当しています」

さらに常盤教授は研究者のプライドとしてこうも付け加える。

「コンピューター創薬というと、すべてコンピューターに任せているイメージを持たれがちですが、そのようなことは全くありません。データを逐一入力するのも、コンピューターから弾き出されたアウトプットを判断していくのも人間なのです。まだまだコンピューターは決して万能ではありませんからね」

歴史を感じさせる立教大本部(1号館)
図書館が入る18号館「ロイドホール」

仮想実験ふくめた実験重視のカリキュラム

次いで常盤教授が所属する立教大学化学科についても話してもらおう。

「正直いって本学科において、化学のすべての分野を手厚くカバーするようなことはできません。しかし基本である有機化学・無機化学・分析化学・物理化学について、その基礎から応用まで学ぶことは十分できます。学科の規模は大きくありませんが、そのぶん個々の学生に目が行き届き、キメの細かな指導もできております」

また立教大学化学科では実験科目が多く組まれていることも挙げなくてはならない。

「それもグループによる実験ではなく、すべて学生自身が一人で行うようにしています。実験リポートも個々で書き上げ、それをはさんで教員との個人面談でブラッシュアップしていくスタイルをとっています」

文字どおりキメ細かな親身の指導がなされているのだ。なお常盤教授の実験といえばコンピューター内での仮想実験が中心となるが、これらを大学授業に取り入れたのは日本では最も早いほうだったという。

理学部の前を通る「鈴懸の並木道」
晩夏の立教大池袋キャンパス点描

自由な視点で自ら動く一生モノの研究手法

立教大学化学科の学部生が、各教員主宰の各研究室に配属になるのは3年次の後期からだ。常盤教授の研究室でも例年5~6人の学部生を受け入れてきた。配属希望者が定員を超えると選抜は成績順になるそうで、そこは恨みっこなしということらしい。

「大学院生から学部生までがいっしょになってグループで研究を進めています。この異世代混在によるグループワークは、研究にも教育にも非常に良い効果を上げています。さらには院生と学部生の双方にとっても効果的だと思っています」

とくに常盤教授は学部生の指導に力を入れているということで、4年次から積極的に学会参加し、学部生でも研究成果を挙げた人には、国内学会だけでなく国際会議でも研究発表が可能という。すでに幾人もの学部生が複数の学会で発表をしているそうだ。

「わたしなりの経験を伝えることも大事ですが、それが逆に弊害になって新しい発想が生まれにくくなることもあります。学生らの発想や意見のなかには、思いもしないフレッシュな視点も大いにあり得るので、よく耳を傾けるようにしているつもりです」

多くの研究成果を残してきた名プロフェッサーほど若い学生・研究者の声に耳を傾けるというが、常盤教授もそれを実践しているのだ。さらに研究生たちの研究テーマの決め方についても先生らしいこだわりがあるそうだ。

「世の多くの大学研究室では卒業研究の研究テーマもトップダウンで決められてしまうことが多いのですが、うちは教員一人の小さな研究室ですし、個々の学生たちとよく話し合って、でき得るかぎり彼らの希望していることを汲み上げるようにしています」

こうした学生本位の配慮ができるのも、ここでの研究内容がコンピューターを活用したものだけということもあるという。あらためて研究生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。

「人が本当に好きなことは、寝るのも食べることも忘れて集中することが出来るものだと思います。だれかに言われるまでもなく自らすすんでやっていく。研究にかぎらず人生においても、これこそが一番重要なことです」

こんな学生に来てほしい

なにより化学が好きであること――それに尽きますね。高校における「基礎化学」を学んで、もっと深く化学にふれたいという人。資源に乏しい日本では化学技術で国を立ち上げていくのも一つの道で、創薬により社会還元をしたいと考えている人。そうした人たちが来てくれれば素晴らしいと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。