早稲田塾
GOOD PROFESSOR

芝浦工業大学
システム理工学部 生命科学科

須原 義智 教授

すはら・よしとも
1967年岐阜県生まれ。’95年静岡県立大学大学院薬学研究科博士後期課程修了。’98年帝京大学薬学部助手。’02年神戸薬科大学薬学部講師。’09年横浜薬科大学薬学部准教授。’12年より現職。博士(薬学)。

主な著作としては『Design,Synthesis,and Biological Studies of the A-Ring-Modified 1,25-Dihydroxyvitamin D3 Analogs』(共著・ドイツで出版)『ビタミンKの新しい分子機構』『脂溶性ビタミンを構成するイソプレン化合物の抗がん作用』(前著ともにビタミン)などがある。

  • mixiチェック
須原研究室が入る大宮「6号館」
大宮キャンパス大学図書館の内部

世界的新薬開発のための基礎研究

芝浦工業大学システム理工学部の生命科学科は「生命科学コース」と「生命医工学コース」からなる。今週紹介する須原義智教授は前者の生命科学コースに所属する。まずは同コースのことから聞いていこう。

「本コースは、生命科学に関するさまざまな分野を研究する教員で構成されています。具体的には、(1)生体高分子(2)食品栄養(3)生体調節(4)生化学(5)生理化学(6)環境科学(7)創薬――の7つの分野がそろっております。このうち創薬(有機化学)をわたしは研究しています」

生命科学コースの学生はこれら諸分野の一つに特化して学ぶこともできれば、生命科学の基礎的なことを広く学ぶこともできる態勢にあるという。

「7分野に分かれて研究する生命科学コースですが、各研究室に共通する研究テーマがあります。それが老化(高齢者)問題になります。この共通テーマについて各分野から研究しているのです」

芝浦工業大学というと工学や電気に強いというイメージもあるが、生命科学の分野を背負って立つ人材の育成にも力を入れている――そのことをもっと知ってほしいとも語る。

そんな須原教授の専門は「創薬化学(medicinal chemistry)」「有機合成化学(synthetic chemistry)」「生物有機化学(bioorganic chemistry)」。わかりやすくいえば医療用新薬開発のための基礎研究ということになる。

「わたしの研究の基本は、あらたに化合物を合成してその生理活性を調べていくということにあります。ここで化合物の合成というのは、自然界に存在する天然物質の構造の一部を構造変換させて、より強い生物活性をもった新たなものをつくり出すことです」

また、ここでいう生理活性(physiological activity, biological activity)というのは、ヒトを含む生物体内の機能の低下した個所を活性化させるはたらきのことだ。

大宮キャンパス第一学生クラブハウス
新装なった芝浦工大「国際学生寮」

アルツハイマー病変した脳神経の再生化を目指す

さて、須原教授の研究テーマは大きく2つある。

「まずは、認知症の一つとされるアルツハイマー病(Alzheimer's disease)ですが、その治療については現在のところ病気の原因となっている物質を排除することで、病気の進行を遅らせるという方法がとられてきました。つまり、根本的な治療法はまだ確立されていないのです」

この難病は脳内の神経が死滅することが原因とされる。須原教授が挑んでいるのは、その死滅した脳神経の再生化ということになる。

「ヒトの脳内には神経の元になる幹細胞があり、それが分化して各神経になっていきます。私たちの研究はその幹細胞にはたらきかけて、神経への分化を強力に促す化合物を見つけ出すことです。それによって死滅した神経を再生しようという試みです。いまのところ、はたらきかけの効果はまだ弱いのですが、候補になる化合物はいくつか見つけています」

難病との闘いに苦しむ全世界の人々が待望する貴重な研究といえよう。この研究が芝浦工業大学生命科学コースにおける共通の課題である、老化問題にくみした研究であることは言うまでもない。

もう一つの須原教授のテーマは「人工コラーゲン」の開発研究である。コラーゲン(Collagen)自体は、これまで医療分野においては皮膚の再生治療などに用いられてきた。

「ここでの私たちの研究は、天然のコラーゲンより安定した人工コラーゲンの開発が目的となります。天然のコラーゲンは主に『α-アミノ酸』から出来ています。それを、天然にはあまりない『β-アミノ酸』に置き換えて人工的に合成しようと試みています」

実はこの研究は、近く芝浦工業大学生命医工学コースの研究室との共同研究に移行する予定ともなっている。人工皮膚や血管組織の研究に向けて、その足場づくりへの応用を目指すことになっているのだという。いずれも世界中の患者に福音をもたらす研究であり、早期の完成を祈りたい。

実験指導をする須原教授と学生たち
晩秋の芝浦工大大宮キャンパス点描

自主的研究のためのグッドコミュニケーション

次いで研究室の話に移ろう。芝浦工業大学生命科学科の学部生が、各教員主宰の研究室に配属になるのは3年次の12月から。須原教授の研究室では毎年度7人前後の学部生を受け入れている。同コース内で1~2を争うほどの人気があり、成績順による選抜で配属学生を決めているという。

「12月に配属になった3年次の学生さんには、まず総合研究(卒業研究)のテーマを決めてもらいます。そのためにも、この研究室の研究内容を説明し、その中からそれぞれの学生さんの希望を聞いていきます。そうして研究テーマが偏らないように調整しながら、なるべく学生さんの希望に添うかたちで決めていきます」

研究内容はひとり1テーマが原則で、共同研究は基本的に認めない。研究テーマが各自決まったところで、4年次学生のうち同分野のテーマを研究する先輩学生から、実験の基本的なやり方や注意事項などのレクチャーを受けて引き継ぎをする。

そして新年度4年次に進級したところで実験研究に入っていく。なお、それぞれの学生には指導役として大学院生もついてくれる。これらに並行して研究室では毎週1回ゼミも開かれていく。

「ゼミは学部生から大学院生まで、研究室のメンバー全員参加で開いています。毎回2人ずつの交替で、それぞれ研究進捗状況の報告、それに自分の研究テーマに関係する英語の文献の紹介を義務づけています」

このほか「井のなかの蛙」状態にならないように、学会参加や他大学との合同ゼミも積極的に実施されているという。
あらためて研究室内での指導方針については以下のように語ってくれた。

「学生がベースになって自主的に研究がやれるようにするのが理想です。こちらから『こうやりなさい』と指示するのではなく、自ら考えて『こうすれば面白いものが出来そうです』などとわたしに言ってくるようになってほしい。そのために常にわたしからも密にコミュニケーションをとるようにしているつもりです」

そのため、研究室の行動目標として、常にあいさつを欠かさないことを掲げているという。

こんな学生に来てほしい

できるだけ「これをやってみたい」という何か方向性をもって大学に来てほしいですね。その強い信念と意欲ですね。ただ、一生の方向性を17歳や18歳で決めなさいというのは少し酷なところもあるでしょう。大学で学びながら方向を定めるのも一つの方法かと思っています。実はわたし自身もそうでしたからね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。