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GOOD PROFESSOR

法政大学
現代福祉学部 福祉コミュニティ学科

保井 美樹 教授

やすい・みき
1969年福岡県生まれ。’91年早稲田大学政治経済学部政治学科卒。’97年米ニューヨーク大学大学院公共政策大学院都市計画専攻修士課程修了。’98年(財)東京市政調査会研究員。’99年米ニューヨーク行政研究所客員研究員。’00年世界銀行コンサルタント。’01年東京大学先端科学技術研究センター特任助手。’04年法政大学現代福祉学部専任講師。’05年同大学院人間社会研究科准教授。’13年より現職。この間’10年英ロンドン大学大学院地理環境研究科客員研究員。博士(工学)。論文奨励賞(’02年 日本計画行政学会)。

主な著作に『欧米のまちづくり・都市計画制度』(ぎょうせい)『シリーズ自治体の設計 第2巻 都市再生のデザイン』(有斐閣)『大都市圏再編への構想』(東京大学出版会)などがある(著作はいずれも分担執筆)。

保井ゼミの活動を紹介するサイト「Searching for Community Innovation」のURLアドレスはコチラ↓

http://yasuilab.ws.hosei.ac.jp/wp/

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保井研究室が入る17号館「現代福祉学部棟」
初冬を迎えた法大多摩キャンパス正門

成熟期ニッポンにおける地域づくり

法政大学現代福祉学部は福祉コミュニティ学科と臨床心理学科からなる。今回訪ねたのは福祉コミュニティ学科の保井美樹教授。まずは同学部同学科のことから話してもらった。

「本学部は、高齢者など限られた人を対象にした狭い意味での社会福祉ではなく、すべての人々のWell-Being(健康で幸せな暮らし)を実現する社会の実現をめざしています。このうち福祉コミュニティ学科では対人援助としての社会福祉と、新しい社会システムを構築する地域づくりを研究しています」

なかでも保井教授は法政大学福祉コミュニティ学科の特長として実践教育をあげる。

「社会福祉も地域づくりも実学そのものであり、フィールドに出て学ぶことが重要になります。そのため全ての学生に実習の履修を推奨しています。ソーシャルワーカーの資格取得をめざす人には、国家資格につながる実習があるのは他の社会福祉系学部と同じかもしれませんが、地域づくりを学ぶ学生たちにも『コミュニティスタディ』という実習を用意しているのは、この学科の大きな特長です」

この「コミュニティスタディ」とは、地域の課題発見や課題解決について現地で学ぶというユニークな実習のこと。これが、なかなかに魅力的な内容らしい。

「全国13の自治体と協定を結んでいまして、学生は3年次の夏休みに最短で2週間、各自治体が用意してくれた現場に入ります。ある人は農家で農作業を体験したり、ある人は地元産品の直売所で運営の実際を経験したりと、福祉の枠に収まらない地域コミュニティづくりを体験し、自ら地域の課題に働きかける方法を考えてもらいます」

これら13の自治体はいずれも地域づくりの先進地とされるところ。そこでの体験をして帰ってきた学生たちは、一回りも二回りも大きく成長した姿を見せくれるという。まさに一生モノの貴重な体験になるのだ。

法政大学多摩キャンパス点描
多摩17号館1階の「学生ラウンジ」

超高齢化先進国らしい街づくりで世界へ発信

保井教授の専門は「都市政策」。プロフィールを見てもらえばわかるとおり、じつに多彩な経験を積んできた。それらの経験が、またさらに都市政策や地域づくりの研究内容に次々と生かされていく。いま最も力を注ぐのは「コミュニティマネジメント」だという。

「これまでの都市政策は、人口が増加し都市が成長することを前提に整備されてきました。しかし今後は、人口減少などを見据えて今ある施設や制度の質をいかに高めていくか、あるいは都市空間をいかに活用するか、こうした姿勢に考え方を変えていかなければなりません」

これまでニッポン的な都市政策・都市計画においては、人口増加を前提として施設や制度をつくることで、古い文化や伝統を壊してきたきらいがある。21世紀はそれらを失わないだけでなく、新たな文化伝統をつくり出し育むようにしていかなければならない。

そこで保井教授ご自身も各地の現場に入って、試行錯誤しながら新しい仕組みについて考えてきた。海外での経験も豊富な教授は、そこでの人脈を通して、日本の地域づくりを海外に発信する試みも手がけている。

「欧米やアジア各国の人々と交流し、それぞれの地域づくりの情報交換をしています。そこで言われるのは、日本人はよく視察に来て情報の入手に積極的なのに、自らの情報を発信するのは苦手なようで、日本からの情報が少ないということ。そこで、現在は、こうした日本のすばらしい街づくりの実践を海外に伝え、実践家間の交流を進めようと、仲間たちと準備をしています」

具体的には、日本の地域づくりに関する情報を英語で発信するWebサイトの開設や、海外向けシンポジウムの開催などが準備されている。これらの活動の中心になっているのがまさに保井教授だ。

「この国の街づくり・地域づくりのゆくえは、いま人口減少・超高齢社会における持続可能な最先進国モデルとして世界中から注目されています。なかでもアジア各国からの注目度が高いですから、きちんとした形として情報発信をしないといけないと考えています」

このほか保井教授が研究中の課題は幅広く、「都市におけるガバナンス」「公共空間をめぐる公民連携」「広域・自治体域・狭域間での連携と役割分担」等々についても手掛けているという。

秋色のなかの多摩「法政V字橋」
3~4年次合同ゼミと保井教授

震災被災地ふくめコミュニティーの現場を歩く

法政大学福祉コミュニティ学科における専門ゼミ演習は、2~4年次学部生が対象となる。保井教授のゼミは「コミュニティ・イノベーションの現場から」が毎年のテーマ。ゼミ生は各学年12人ほどだが、人気のゼミだけに例年選抜になっている。その選抜方法は保井教授と先輩ゼミ生による面接で決めているそうだ。

「ゼミ授業は2年次が単独、3~4年次は合同でやっています。2年次は『プロジェクトゼミ』と呼んで、さまざまな地域づくりの現場に入って地域づくりの現場を学ぶことから始めます。現場にこだわるのは、それを知ってからの方が文献や理論の理解もスムーズで効果的だと思うからです」

「近年は、東日本大震災の被災地で、地域の皆さんと学生たちが一緒になって農園づくりをしています。これは、某子ども服メーカーの支援を得て始まったもので、『ガレキの街に花を咲かせ、色のある街にしたい』という地域の方々の想いにもつながっています」

このプロジェクトは、震災被災地に咲かせた花から染料を採って、布やローソクなど工芸品を染めて商品化しようという試み。いまでは保井教授からの指示がなくても、学生たちが自主的に東北各地の被災地に入って活動するまでになっているという。

「3年次のゼミ生は、前期は2年次ゼミ生の指導をし、後期は各自の卒業論文のテーマを絞る作業へとシフトしていきます。ゼミ運営方法は、それそれが考えている問題意識をゼミの場で取り上げ、全員で徹底的にディスカッションするスタイルです。そのためにファシリテイター(議論の促し役、英facilitator)を置いて、活発な議論になるようにしています」

そうしたゼミ内における熱き議論で鍛えられた後、4年次は卒業論文作成にあてられることになる。あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語る。

「わたしが学生によく言うのは『前例にとらわれないように』ということです。本に書いてあることや現場で聞いた言葉をただ信じるのではなく、視点を変えて裏側からも考えてみなさいと言っています。地域づくりや都市計画というのは一様にできるものではありませんから、そうした視点が重要になるわけです」

成功体験をふくめて前例をただ踏襲しないということは、地域づくり研究に学生指導にと常に工夫をこらす保井教授の姿勢そのものでもあろう。

こんな学生に来てほしい

いま高校生のみなさんが大学生活を終えて社会に出るころには、いったい何が花形職業になっているのか予想などできません。ですから、単に現時点での人気企業への就職を目標にしているような人ではなく、いま社会で何が起きているのかを知り、社会の問題にどうしたら取り組んでいけるのかを考えてみたいという好奇心旺盛な人に来てほしいです。企業、福祉の現場、行政、学生、住民などをつないで新しいコトを起こしていく、そんなことをしてみたい人を積極的に受け入れます。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。