早稲田塾
GOOD PROFESSOR

國學院大學
法学部

苅田 真司 教授

かりた・しんじ
1966年島根県生まれ。93年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。93年東京大学社会科学研究所助手。97年國學院大學法学部専任講師。98年同助教授。07年同准教授。08年より現職。

主な著作に『デモクラシーの政治学』(分担執筆・東京大学出版会)『宗教概念の彼方へ』(共訳・法蔵館)『自爆テロ』(翻訳・青土社)などがある。

先生が主宰する「苅田真司のホームページ」のURLアドレスはコチラ↓
http://www2.kokugakuin.ac.jp/~karita/

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苅田研究室が入る「若木タワー」
印象的なモニュメント「翔」

政治の現場を知るために

國學院大學法学部は(1)法律専門職専攻(2)法律専攻(3)政治専攻――の3専攻から成る。今回ご登壇ねがう苅田真司教授は政治専攻の所属である。まずは同専攻のことから聞いていこう。

「政治専攻では、政治の歴史や現在の政治状況などの知識、あるいは政治を分析するための理論なども学びますが、こうした知識・理論については、他大学の政治学科などでも同じような講義があります。ここでの特徴といえば、そうした知識や理論を学ぶ講義が、現実の政治活動を体験できる『政治インターンシップ』と連動しているところでしょう」

政治インターンシップとは、政治家の秘書業務はじめ官公庁・マスコミ・NPOなどで研修生として一定期間実習をして、そのリポートを提出すると大学単位に認定されるという國學院独特のユニークなカリキュラムだ。

「ある国会議員の秘書業務のインターンシップをした学生は、資料集めとフリップボードづくりをやらせてもらったところ、予算委員会における首相への質疑にその資料とボードが使われたという貴重な体験もしています」

このインターンシップ制度によって國學院大學政治専攻は非常に活気があるということだが、さもありなんである。同専攻のURLでは「将来政治の現場に関わってみたい人」を専攻で受け入れる学生の第一条件に挙げる。
「教科書を学ぶだけでは得られない政治や社会の現実をインターンシップで知ることにもなります。学生のなかには単位認定に必要な時間を終えたあとも、さらにボランティアとして活動を続ける人もいます」

インターンシップを経験した学生は、学生気分を払拭して社会人の顔になって帰ってくるのだという。政治学系の学科・専攻志望の現役高校生は要チェックだ。

サークル部室が入る「若木会館」
國學院大渋谷キャンパス点描

「社会科学」から「政治と宗教」まで

さて、苅田教授の専門はといえば「西洋政治思想史」。これまでは主に「1930年代の米国社会科学論」を研究テーマとしてきた。

「30年代のアメリカはまさに大恐慌の時代でして、そこから如何にして脱却するかということで様々な〝実験〟が繰り広げられました。F・ルーズベルト大統領(Franklin Delano Roosevelt)のニューディール政策などもその一つになります。他方この時期は大戦争へと向かう時期でもありました。39年にはヨーロッパで戦端が開かれ、アメリカ国内ではこれにどう関わるべきかが盛んに議論されていました」

ここで苅田教授の研究は当時のアメリカにおける社会科学全般にまで広がることになる。

「当初の社会科学は、現実社会を科学的に分析することにより、より良い社会に改造したり、より効果のある政策を打ち出したりする現実的な学問分野でした。それが次第に現実を分析するだけの傍観者的な学問という側面だけが強調されるようになってきます。しかし、30年代の大恐慌時代に至ると、再びただ傍観しているだけでは許されない事態になっていくのです」

未曾有の世界大恐慌というパニック化した現実を前に、当時の研究者たちは世界大戦前夜の事態をどう収拾し立て直していくのかを考えるようになった。

「そこで、個別の問題について積極的に応答していこうとする姿勢が鮮明になっていきます。そのなかで社会科学とは何であるかという問い直しもなされるようになり、実践的な課題に連動しながら分析するという社会科学の姿が再び鮮明に現れてくるのです」

この時期のアメリカにおける社会科学理論に次いで、いま苅田教授が力を入れているのは現代における「政治と宗教」についての研究である。

「米ソ冷戦時代が終わって21世紀に入り、宗教の存在感が相対的に増すようになりました。宗教を政治がどう受け止めるのかが世界的な問題になっています。いままで主流の政治理念であるリベラリズムでは、宗教は政治と切り離されて、その外に置かれる存在でした。ところが近年になって、政・教を完全に画することは不可能であるし望ましくもないという議論が、現実への応答としても理論的にも現われてきました。それでは、宗教を政治のどこに位置付けるのか、あるいは政治の場で宗教間の対立があったときにどう解決すべきか――こうした問題に再び取り組む必要が生じてきているのです」

すでに苅田教授のなかでは抽象的ながらも、この難問への「解」への道筋が見え始めているとも語る。このほかにも社会科学と米国プラグマティズム(実用主義、英pragmatism)の関係などについても研究を進めているという。

大学のホームタウンは「ザ・渋谷」

長文読解・自己表現できる力を養おう

國學院大學法学部政治専攻における専門ゼミ演習は、2~3年次学部生が必修で、4年次および卒業論文は選択となる。さらに、これに法律専攻の3~4年次学部生が選択でゼミに加わってくるという、少し複雑なシステムになっている。

苅田教授のゼミには、政治専攻・法律専攻ともに各学年4~5人の参加がある。そして総勢20人ほどのメンバーにより合同で開講されているという。

「政治専攻の学生は必修ですが、法律専攻は選択ですので、本当に学びたい人が受講してくれています。ですから彼らの参加がゼミ全体に非常に良い刺激になっています」

ゼミは文献講読が中心で、時々の話題になっている新書を読んでいく。新書といっても1年で6冊以上を読破し、年度末には1万2千字以上のゼミ論文の提出が必修で義務づけられる。さらに、苅田ゼミではゼミのなかで一度も発言をしないとその回は欠席扱いになるそうだ。
あらためてゼミ生たちへの指導方針については――

「1回のゼミで新書60ページ分ほどを扱います。かなりの分量になりますが、このくらいの長い文章を読み込んで、それに対する自らの考えを表現できる力を養ってほしいと思い、あえてやや高めの要求を課しています」

最後に、大学進学をめざす現役中・高生に向けて、苅田教授からのメッセージである。

「政治とは、観客として喜怒哀楽するものではなく、自ら主権者として積極的に参加すべきものです。若者世代の選挙投票率の低さが問題になって久しいですが、それより政治参加の方法が投票しかないと一般に信じられていることの方が問題でしょう。政治に参加して社会を動かすための方法は多種多様にあります。そうしたことを、政治学を通して学んでいただけたらと思いますね」

こんな学生に来てほしい

ここは政治専攻ですので、政治(政治学)について知りたいという人に来て欲しいというのは当然ですが、とくに現実の政治を自らの身体で体験してみたいという人や、自分で政治や社会を動かしてみたいという人に来ていただきたいですね。また、政治の中心は言葉ですから、議論によって他人を説得してみようという熱意のある方も大歓迎します。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。