早稲田塾
GOOD PROFESSOR

専修大学
人間科学部

金井 雅之 教授

かない・まさゆき
71年東京生まれ。2000年東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。95年日本学術振興会特別研究員。01年山形大学教育学部講師。04年同助教授。05年同地域教育文化学部助教授。07年同准教授。10年より現職。博士(学術・東京大学)。

主な著作に『社会調査の応用―量的調査編:社会調査士E・G科目対応』(共編・弘文堂)『社会を〈モデル〉でみる―数理社会学への招待』(分担執筆・勁草書房)『進化的意思決定』(共著・朝倉書店)などがある。

金井教授が主宰するWebサイトのURLアドレスはコチラ↓
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thh0808/index.html

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金井研究室の入る生田キャンパス4号館
学食などが入る専修大学「生田会館」

実証に基づく「社会関係資本」研究

専修大学人間科学部は心理学科と社会学科の2学科からなる。今回ご登壇願う金井雅之教授は、社会学科に所属する先生だ。まずは同学科のことから聞いていこう。

「この学科のいちばんの特長は『実証研究』(empirical research)を重視するところです。データや事実に基づいて議論を組み立てていくことで、そこから基本的なコンセプトを構築して研究を進めるようにしています。一方で実証をあまり重視しない社会学とは何かというと、社会思想・社会哲学などの包括的な社会学ということになります」

こうして日本における社会学研究が2つの潮流に至ったのは、この学問が西洋からの輸入学問としてスタートしたために、日本人研究者の解釈の違いによって分派したことにあると金井教授は喝破する。じつは専修大学社会学科では伝統的に、社会調査研究に力を入れてきた。まさに実証に基づく社会学研究の証しといえよう。

「社会調査を基にきちんとデータを取り、その実証データを使って研究を進め、卒業論文としてまとめていくというのが基本となります」

社会調査(social research)とは、「社会的な問題意識に基づいてデータを収集し、収集したデータを使って、社会について考え、その結果を公表する一連の過程」(大谷信介ほか編『新・社会調査へのアプローチ』)のこと。こうした能力を身につけた「調査の専門家」に与えられる資格に、一般社団法人社会調査協会が認定する「社会調査士」というものがある。

専修大学社会学科では、所定のカリキュラムを履修すると、この社会調査士の資格が取得できる。これは将来的に有利な一生モノのスキルともいえよう。

初冬の専修大学生田キャンパス点描

ネットワークの視点で探る地域活性化モデル

さて金井教授の専門は、「社会関係資本」(social capital)だ。どのような研究分野であるのか、まずは説明してもらった。

「社会関係資本とは、人と人のつながり、つまり社会的ネットワークについて研究する分野をいいます。あるネットワークに参加している人たちにどんなメリットやデメリットがあるのかを調査研究していくものです」

数ある社会関係資本の研究のなかでも、いま金井教授は2つの研究課題を抱えている。まず一つは「観光まちづくり」についての研究だという。

「『観光まちづくり』について、社会関係資本の視点でとらえてみるとどうなるかという研究です。具体的には温泉地を例にして、旅館やホテルを活性化するためには何が必要かを考えています。その温泉地全体での地域が協力して景観を整えたりプロモーション活動をしたりして、観光客を誘致するというのが一般的な流れになります」

温泉地の活性化において地元全体の協力は必要不可欠だが、じつは個々の旅館やホテルは潜在的にライバル同士という関係でもある。こうした商売上のライバル同士がどう協力し合えるのか――これこそがこの種の活性化の重要なポイントになるという。これを社会関係資本の視点から具体的に考えていくと――

「地域活性化には段階があって、まず協力して何かをやろうという気運を盛り上げることが第一段階で、それには集団内部のネットワークの力が重要になります。その次の段階は、他の先進温泉地とか専門のコンサルタント・大学研究室などの外部ネットワークの活用になります。つまり内外のネットワークを状況に応じて使い分けることで、やがて活性化が図られていくわけです」

金井教授はこれを、山形・長野・群馬・新潟の各温泉地において実証調査を進めてきた。そのうえで導き出した結論だからこその説得力をもつ。
さてもう一つの研究テーマとして「子育ての地域間格差の問題」もある。

「この国における子育ての地域間格差問題については、核家族化・少子化が進むなかで子育てのサポート資源があるかないかが、子どもを産む産まないに大きな影響を与えます。こうした地域格差を解消するために自治体による保育所の拡充や子育て支援制度制定などが図られますが、これも各自治体の財政力によって差があるのが現実なのです」

そこで自治体による対策の充実度と個人のもつサポート資源の相関関係について、金井教授は東京と長野において調査を重ねてきた。そこで行き着いた結論は、自治体の対策が充実していれば、たとえ個人のサポート資源が少なくても子育ては大いに可能だというものだという。

「これは見方を変えて考えますと、自治体の支援が行き届いているところでは、それこそが個人のサポート資源を弱めている可能性も大きいということにもなります。それが新たな問題提起にもなりました」

今後の研究について金井教授は、これら2つの「社会関係資本」調査研究をさらに深めていきたいと抱負を語ってくれた。

初冬の専修大学生田キャンパス点描

調査分析から理論へとつなげる一生モノの力

専修大学社会学科の専門ゼミ演習は3年次から始まる。金井教授のゼミで学ぶのは、3~4年次の各6~7人ほどの学部生。ゼミのテーマは『量的社会調査(アンケート調査)データの統計分析』だ。

「3年次のゼミ生には量的調査・統計分析についての再学習、先行論文の輪読などから始めてもらいます。その学習を通して解釈や理論の組み立て方を学び、実際に統計分析を進めていきます。そして3年次の終わりまでに『習作論文』にまとめることを義務づけています」

この習作論文は卒業論文の半分程度の分量だが、その作成を経験することで自ら反省点などが明確になっていく。それが4年次の卒論作成においてパワーアップへとつながるのだという。
あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語る。

「わたしのゼミでは、研究論文の内容はもちろんですが、その書式や体裁について口やかましく指導しています。いくら内容のある論文でも書式のルールから外れていたら、読者は読む気になってくれません。文書やプレゼンテーションは他人に自らの考えを伝えることが最大の目的ですので、これでは意味がありませんね」

このあたり将来社会に出てからも役に立つ一生モノのリテラシーともなることだろう。

「さらに学問的には、統計調査による分析結果を社会学的に解釈できる力を身につけてほしい。つまり、ある分析結果から社会学的な理論を導き出し、それをきちんとした文章として構築できる能力を養ってほしいということですね」

つね日ごろから論文などの書式について厳しく指導しているという金井教授。じつは教授のURLには、学生に向けて論文・リポートの執筆に始まり、卒論執筆・研究発表などの手引き、さらには文献の集め方までが網羅されている。

これがじつに微に入り細をうがつ行き届いた内容なのだ。皆さんもぜひ一度アクセスしてみてほしい。大学において学ぶことの意味、その一端が見えてくるはずである。

こんな学生に来てほしい

わたしのゼミでいえば「数学を怖がらないで来てほしい」ということになりますか。統計分析など研究で扱う数学は、高校までに学ぶ数学とはだいぶ違います。数学は論理的推論過程を他者に正確に伝えるための効率的な伝達手段であり、異なる母語をもつ古今東西のあらゆる人とのコミュニケーションを可能にしてくれる、グローバル時代における世界共通言語ともいえます。
簡単に自分は文系人間だからと能力を限定するのはもったいない話です。まさに一生モノの数学的・理系的思考に一度ふれてみようというぐらいの気持ちで来てくれればと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。