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GOOD PROFESSOR

明治学院大学
社会学部 社会福祉学科

新保 美香 教授

しんぼ・みか
大阪生まれ。明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。東京都内の高齢者ケアセンター・福祉事務所(高齢者・生活保護担当)に勤務。97年明治学院大学社会学部助手。同講師・助教授・准教授をへて、09年より現職。この間04年国立シンガポール大学特別研究員。

主な著作に『社会福祉学習双書 2013公的扶助論―低所得者に対する支援と生活保護制度』(全国社会福祉協議会)『新・社会福祉士養成講座 第16巻 低所得者に対する支援と生活保護制度(公的扶助論)』(前著ともに共著・中央法規出版)『生活保護スーパービジョン基礎講座』(全国社会福祉協議会)などがある。

新保先生が主宰する「新保美香研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.meijigakuin.ac.jp/~mika/

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新保研究室が入る7号館「ヘボン館」
明治学院大正門前を登校する学生たち

理論と実践を踏まえた公的扶助論研究

――今回登場ねがう一生モノのプロフェッサーは、明治学院大学社会学部社会福祉学科の新保美香教授である。まずは同社会福祉学科のことから話していただいた。

社会福祉を教える学科としては歴史が古く、たくさんの実践家や研究者を育ててきました。本学科では、民間・公的機関の社会福祉の実践フィールドばかりでなく、一般企業や行政・学校など社会のあらゆる分野に社会福祉学を身につけた人材を送り出しています。

――そもそも社会福祉とは、特別な実践家・研究者だけの学問ではない。社会福祉について良識を備えた人材を一般社会にたくさん輩出していること自体に、大きな意義と誇りを感じていているとも新保教授は語る。明治学院大学社会福祉学科には、将来ソーシャルワーカーをめざす人のための「ソーシャルワークコース」と、社会福祉マインドを学んで公務員や一般企業人をめざす人々のための「福祉開発コース」が設けられている。

本学科には社会福祉に関するあらゆる専門の教員がそろっています。社会福祉も領域ごとに専門化する傾向にありまして、それぞれの領域の教員同士が刺激し合い影響し合って、とても良い関係がつくられています。わたし自身もそうした先生方から多くを学ばせてもらっています。

図書館も入る明治学院大学「本館」
「ヴォーリス広場」

貧困から国民を守るケースワーカー

――このほかに少人数教育を実施していること、教員と学生がアットホームで親密な関係であることなど、数ある同学科の特長についても挙げてくれた。そんな新保教授の専門は「公的扶助論」。つぎに公的扶助論とは何であるのかを説明してもらった。

これはさまざまな事情によって、日々の生活が困難な人に、国がその責任において生活の保障をする仕組みのことです。つまり、生活の困難な人を社会で支えていく制度のことで、その代表的なものが「生活保護制度」になります。

――そうした生活保護制度のうち新保教授はケースワーカー(caseworker)のあり方について研究している。

この制度運用のなかで生活困窮者の相談や援助にあたっているのが、ケースワーカーという専門職員です。わたしの研究は、どうすればケースワーカーがより良い援助ができるのかを考えることになります。

――かつて新保教授もケースワーカーとして現場で働いていたことがあるそうで、そうした現場との太いパイプがいまでも残る。さらに政府や自治体の専門委員などに就く機会も多く、それらがまた研究や学生指導にも生かされているという。先生がいま感じているこの国の生活保護制度の問題点について語ってくれた。

生活保護という制度があることは高校生のみなさんもご存知だと思います。でも、その内容まで知っている人はほとんどいないのが実情ではないでしょうか。一般の人たちが内容を知らないことから起こる受給者へのバッシング、その無知なことにつけ込んでくる貧困ビジネスの横行などが問題になっています。そのために本当に支援の必要な人が窓口に来られないということも起こっています。

――そもそも生活保護とは、憲法第25条に規定された国民の生存権を保障するもの。保護が必要な人はだれでもが申請できることが原則となっている。

生活が困窮することは誰にでも起こり得ることですし、貧困であることは恥ずかしいことではありません。しかし、そうしたことに理解がないために生まれる偏見が当事者たちを追い込むことになっています。

――そのため行政サイドに頼り切りになるのでなく、民間の支援者たちがこの制度の内容を広く啓蒙していく必要があるとも話す。これこそが新保教授が現場での実践で得た教訓なのだろう。

支援するにあたって援助をしたいという気持ちだけが先行してもダメ。理論を熟知しながら理論と実践を行き来することが出来るようになることが大切です。

「公的扶助論B」を講じる新保教授
3人一組で「援助技法」を学ぶ

自ら挑戦しつつ自らに固執しない

――明治学院大学社会福祉学科の専門ゼミ演習は3年次の秋学期から始まる。これを同学科では「ソーシャルワーク演習」と呼ぶ。新保教授のゼミ演習では各学年13~14人の学部生を受け入れている。そのテーマはずばり「公的扶助」である。

3年次の演習では、まずソーシャルワーカーになるための基本姿勢や倫理から学んでもらいます。これは4年次の実習の準備にもなります。その演習の内容は『ケースワークの原則』という理論書から一つの原則を選び追求するものです。学生たちはチームごとにその原則の意味を考え、発表のときには1チーム15分以内で発表してもらいます。

――その発表は「原則を知らない1年生でもわかるようにする」ことが求められる。ゆえに、プレゼンソフトを活用したものや、ムービーや演劇形式によるものすらあるという。これらは単なる文献講読式の演習よりはるかに身につく効果は大きいというのも合点である。なお、ケースワークで重要な原則には「自己決定」「秘密保持」「個別化」などがあるという。

社会福祉の専門職は人と関わることが仕事になりますから、チームを組んで何かをする経験が重要になります。いろいろな考え方の人とやっていく面白さ、あるいは難しさを学んでもらえたらと思っています。

――4年次には実習と卒業論文の作成があり、卒論のテーマは各自の実習に絡めたものが多いそうだ。あらためてゼミ生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。

失敗を恐れずにいろんなことに挑戦してほしいですね。公的扶助を学ぶうえでは、自分の考えに固執しないで、先人たちが残した研究成果や文献に学ぶことも忘れないでほしい。援助の方法は、経験だけで得られるものではなく、きちんとした考え方が身についていなければなりませんから。

――毎年新保ゼミの卒業生の6割ぐらいが公務員になり、その大半が生活保護関連の仕事に就いているという。公務員以外には、民間の社会福祉法人・一般企業などに就職していて、その就職率は例年好調ということだ。

こんな学生に来てほしい

社会福祉というのは他人にやさしくなれる人がするものだから自分には関係ない――そう思っている人にこそ社会福祉学を学んでいただきたいですね。社会福祉というのは特別な人が特別な人に何かをすることではなく、だれもが幸せに生きられる社会について追究するものです。そのために何ができるのかを考える学問になります。やりたいこと・できることが必ず見つかります。自分の持ち味を生かして何かやりたい!――そう思っている人に、ぜひ来ていただきたいです。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。