早稲田塾
GOOD PROFESSOR

亜細亜大学
国際関係学部 多文化コミュニケーション学科

栗原 孝 教授(副学長)

くりはら・たかし
1952年東京生まれ。74年早稲田大学第一文学部社会学専攻卒。74年日本リサーチセンター入社。79年法政大学大学院社会学研究科修士課程修了。84年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。以後、亜細亜大学経済学部国際関係学科専任講師・同助教授・同国際関係学部国際関係学科教授をへて、12年より現職。09年より副学長。この間89~90年独フランクフルト大学客員研究員。

主な著作に『情報社会と生活世界』(編著・福村書店)『社会学理論の<可能性>を読む』(共著・状況出版)『子どもと偏見』(共訳・ハーベスト社)などがある。

「栗原研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www2.asia-u.ac.jp/~kuri/

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栗原研究室の入る総合研究会館
亜細亜大武蔵野キャンパス正門

ハイブリッド文化社会をめぐる社会学的研究

――今週登壇ねがう一生モノのプロフェッサー・栗原孝教授は、亜細亜大学の副学長も兼任する。まずは亜細亜大学のことからお聞きしよう。

大学理念としましては、アジアの平和と繁栄に貢献できる人材の育成を掲げています。ただ正直なところ、若者は欧米志向が強いのが実情ですし、とくにアメリカとの関係は重要です。そのため本学では、25年以上にわたって希望者全員がアメリカに半年間留学できる制度を採用していまして、すでに1万3000人の学生が留学しています。

そして興味深いのは、この留学を経験した学生たちが次に向かうのがアジア諸国という流れです。これは多文化社会アメリカに滞在することで、自らがアジア人の一員であることを強く意識す
る結果ではないでしょうか。アジアに目を向けるのは、亜細亜大学の理念に沿った動きとも受け止めています。

――亜細亜大学には「アジア夢カレッジ」という魅力的なプログラムがあるという。

10年ほど前からわたし自身が責任者の一人として展開してきたプログラムです。これは中国の大連市に5ヵ月間滞在して、現地で中国語の習得をしながら、同市の企業で1ヵ月間のインターンシップを体験してくるというものです。滞在中は現地の寮に入寮して、現地の若者と相部屋で生活します。他大学にはないプログラムで、これを経験した学生はみんな大きく成長して帰ってきますね。このプログラムの蓄積は「グローバル人材育成推進事業」の基礎になっています。

このプログラム以外の特色として、語学教育に力を入れていることが挙げられます。ネイティブ教員による週5日の必修英語に加えて、外国語大学に匹敵するほどの14言語から1言語を選択必修させています。あと実業界とのパイプもあり、後悔しない就職に力を入れているのも特長でしょうね。

――つぎに栗原教授の所属する国際関係学部と多文化コミュニケーション学科について伺った。

学部ではずっとアメリカ留学が必修でしたし、国際関係学科では現在も必修です。12年度に新設した多文化コミュニケーション学科でも90%近くの学生がアメリカ留学に参加しています。この学科は、「多文化社会協力」「観光多文化」「多文化多言語」の3領域からなっていますが、フィールドワークやインターンシップ等とにかく元気に現場に出かけて「自分の眼で見て、感じ、考えよう、それを楽しもう」をコンセプトにしています。

亜細亜大武蔵野キャンパス南門
亜細亜大国際交流会館(8号館)

学問の枠を越えて現代情報社会を考察

――栗原教授の専門は「社会学」で、2つの研究課題を掲げている。まずは「生活世界の現在とコミュニケーション」から説明していただいた。

これは、「情報」と「コミュニケーション」の現実社会での交錯についての研究です。たとえばコミュニケーションが話し合いのなかで新しい意味を生み出すものとすれば、ネット社会における情報交換はコミュニケーションと言えるものなのか? そうしたことを現代の情報交換やコミュニケーションについて調査しています。そこで浮かび上がってきたのは、物を擬人化して話しかける現代人の姿や、意外なほどにまじめな現代若者像ですね。

――栗原教授のもう一つの研究課題は「多文化社会:モノ・コト・ヒトのハイブリット社会」というものである。

こちらは非常に難解なテーマです(笑い)。文化とは何か? それぞれの地域に蓄積されてきた意味や価値観の体系で、ふつう思想や芸術のようなものと考えがちですが、自然との共生のあり方が文化です。そこでは自然を含めた物や人・考え方・行為様式が、モノ・ヒト・コト(またその複合体)として特色をもって生み出されているのです。多文化社会では、この異なる複数のモノ・ヒト・コトが出合い混合します。この出合いはさらに何を生みだすのか。そんなことを考察しています。ちょっと分かりにくいですよね。でも具体例を挙げて説明すると学生もわかってくれます。

――ちなみに栗原教授のこうした考え方はドイツの社会哲学者であるユルゲン・ハーバーマス(Jurgen Habermas 1929~)の思想に負うところが大きいという。じつは栗原教授は、ハーバーマス本人から直接指導を受けた数少ない日本人学者の一人なのだ。栗原教授の考察が社会学の枠を越えてやや哲学的になるのにはそんな事情もあるらしい。

武蔵野キャンパス点描

まずは街に出て自分なりの多文化を発見

――多文化コミュニケーション学科には1年次からゼミがあるが、専門的テーマのゼミ指導は3年次専門ゼミと4年次総合ゼミの計2年間で開かれる。14年度には学科の第1期生が3年生、つまり学科として最初の専門ゼミ生になる。2年後には卒業作品を作成するというが、栗原教授のゼミはどういうものなのだろうか。

3年次のゼミでは、まず街に出てそこにある多文化について観察することから始めようと思っています。一般的には、まず文献購読などで基本的な知識を身に付けてから街に出るのでしょうが、あえていきなり街に出るフィールドワークから始めてもらいます。

そうした観察やインタビュー・アンケート、いわゆる社会調査法を実践的に学んで現実をとらえる、そして分析・報告してもらいます。前期から夏にかけて、自分の眼で見て考える姿勢と力をつけ、後期から各自のテーマで書くゼミ論につながるようにしていきたいと考えています。

こうしたゼミ論は卒業作品の基礎になります。4年次には、国内外問わず自分でフィールドワークの計画を立て、調べ、成果をまとめてもらう予定です。卒業作品の形は研究論文に限定しません。

また、わたしが地元の「武蔵野市国際交流協会」に関わってきたこともあり、海外から来訪される方々と積極的に交流しようということで、ゼミ生たちにも街に出るフィールドワークの一環として参加するよう指導します。

――あらためてゼミ生たちへの指導方針については……

勉強・研究がよりよく出来るようになるに越したことはありませんが、まぁ社会人としてきちんとしたつき合い方のできる大人に育ってほしいということでしょうね(笑い)。学生諸君には『いま学生の君たちは学生のプロである。プロというのは、自ら考えて生きていくことである』とよく言っています。その心は、4年後には「社会人のプロ」になることを意識しながら日々勉学に励んでほしいということですね。

――最後に、栗原教授も参加されているというNGO活動「スランガニ基金」についても伺ってみた。

これは、かつてのわたしのゼミで学んでいたOGが始めた活動でして、スリランカで幼児教育を必要としている地域に、幼稚園をいくつも開設するなど幼児教育の支援をしています。わたしも趣旨に賛同し、「顧問」の肩書きで参加させてもらっています。いま教えている学部・学科生にはこうした海外活動に興味をもつ人も多く、具体的な相談を受けると、この基金を紹介したり、代表の彼女から情報を入手して学生に伝えたりもしています。

こんな学生に来てほしい

学生とは厳しく、かつ楽しい関係を持ちたいと考えていますので、まずはきちんとした人間性・社会性をもった人を期待したいですね。こちらがまじめに話をしている時にはまじめな対応ができる人ですね。人生あそびも大切ですし、ゼミでは特にユーモアやゆったり感を大切にしていますが、「とりあえず適当に」という態度は決して許しません。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。