早稲田塾
GOOD PROFESSOR

中央大学
法学部 政治学科

秋吉 貴雄 教授

あきよし・たかお
1971年大分県生まれ。00年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。00年熊本大学法学部助教授。02年同大学院社会文化科学研究科助教授。07年同准教授。11年同教授。13年より現職。博士(商学・一橋大)。第1回住田航空奨励賞(交通研究協会 09年)日本交通学会賞著書の部(08年)日本公共政策学会奨励賞(08年)。

主な著作に『公共政策の変容と政策科学:日米航空輸送産業における2つの規制改革』『公共政策学の基礎』(共著・前著ともに有斐閣)などがある。

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秋吉教授の研究室が入る「2号館」
新築なった多摩学生研究棟「炎の塔」

〝in〟と〝of〟の視線から迫る公共政策学

――今週の一生モノのプロフェッサー秋吉教授が中央大学に着任されたのは13年春のこと。それまでは熊本大学で教鞭を執ってきた。まずは首都圏の私立大と地方の国立大との比較についてから話していただこう。

同じ政治学系ということですが、熊本大学の学生は九州圏内の出身者が多かったのに対し、ここ中央大学の学生は全国からやって来ていて、非常に多様というのが第一印象でした。熊本大学の学生は公務員や地元企業への就職を志望する人が多く、全体におとなしい人が多かったですね。

いっぽう中央大学のほうは私立の大規模校ということで、学生の雰囲気が変わるのではないかと少し心配な面もあったのですが、まじめな学生が多いことに安心しました。そのおかげでこの環境になじむのに時間がかからず助かりました。

また両校の制度的なところでは、熊本大学の政治学は法学科のなかに含まれるため、法律と政治の双方を学ぶことになりますが、中央大学は政治学科として独立していますから、多様な政治学科目を学べます。そこが両者の大きな違いですね。

――中央大学政治学科では、14年度からコース制が敷かれ、(1)公共政策(2)地域創造(3)国際政治(4)メディア政治」――の4コースが設けられる。

多摩モノレール駅から登校する学生たち
冬の中央大多摩キャンパス点描

もっと多元的知識を活用した公共政策を

――秋吉教授の専門は「公共政策学」(Policy Studies)と「行政学」(Public Administration)だ。両学問分野の内容をお聞きすると……。

公共政策学というのは、環境問題や交通問題など、諸社会問題における解決のための政策決定のあり方について考える学問分野です。もう片方の行政学のほうは、行政組織の制度設計やそのマネジメントのあり方について考える学問分野になります。両者は隣接分野といわれ、非常に近しい関係の学問分野だということができます。

――まずは公共政策学についてから解説していただこう。

これは比較的新しい学問分野で、研究領域として確立してきたのは70年代に入ってからです。研究の目的は、公共政策の決定をいかに改善していくのかにあります。その方法論については、アメリカの政治学者ハロルド・ラズウェル(Harold Dwight Lasswell、1902~78年)が「inの知識」「ofの知識」による決定を提唱しています。

ここで「inの知識」というのは、政策決定に投入される知識情報のことで、「政策デザイン論」とも称されます。「ofの知識」のほうは、政策決定のプロセスの知識で「政策過程論」とも称されます。この「ofの知識」を踏まえたうえで「inの知識」を改善していく、とりわけ「inの知識」の多元性を確保していくべきというのが最近の主流になっています。

――こうした中で秋吉教授はどんな研究をなさっているのだろうか。

わたしは、ある政策の事例を取り上げて、どのようなフレーミング・構造化がなされて政策の決定につながったのかについて分析しています。今後の課題としては、政策分析で得られた知識をどう政策に反映するのか? その知識活用についても解明していきたいと考えています。

――もう一つの研究課題である行政学については……

行政学の研究におけるキーワードして「制度」「管理」「政策」があります。このうち「制度」は行政の仕組み、「管理」は行政組織の管理、「政策」は政策を形成したり実施したりすることです。そうした行政組織のあり方に関心があって研究を続けています。

さらに最近では、地方自治のさまざまな改革型について民間企業の経済学や経営学の知識をもとに管理をおこなうNPM(New Public Management)、たとえば公共サービスに民間のノウハウを投入するPFI(Private Finance Initiative)といった具体的手法について調査しています。こうした政策手法はすべて良い面ばかりでないことに注意が必要です。

コストでの競争が厳しいために行政サービスの質が低下するなどのマイナス面もあり、諸外国ではNPMによる改革の見直しも進められています。今後はさらに一歩進めて、そうした政策事業の日本における可能性についても研究していきたいと考えています。

冬の中央大多摩キャンパス点描

4年間で一生モノの学問リテラシーを

――中央大学政治学科の専門ゼミ演習は3~4年次学部生が対象となる。秋吉教授は13年度の着任で、本格的なゼミは14年度の3年次専門ゼミから始まる。いまの時点でどんなゼミをお考えなのだろうか。

14年度の3年次専門ゼミは11人のゼミ生でスタートする予定でして、ほぼ理想的な人数だと思っています。ゼミのテーマは「公共政策の形成過程と実施過程の分析」で、前期では文献購読を中心に公共政策の形成や実施を分析するための理論や枠組みについて学んでもらいます。

そして後期には、実際の公共政策事例についてグループでの分析研究になります。分析する事例については、中央と地方の政策からわたしが選んで提示していきます。

こちらの学科のゼミは3年次から4年次へ全員持ち上がりになりますので、4年次では、3年次に学んだ理論と分析手法を用いて個別の事例研究をして卒業論文にまとめていくということになります。

――あらためてゼミ生たちへの指導方針については……

公共政策事例について実際に分析していくためには一次資料の収集やヒアリングなど「足を使って」ということが基本になりますが、その前にまず「頭を鍛える」ことも大事になります。分析のための理論や枠組みをしっかり勉強するということですね。

さらに、それを正しく使いこなすための論理的・実戦的なトレーニングも必要になります。4年間のあいだに、どんな問いを設定してどうやって分析していくのかといった学問手法の基本をしっかり身につけてほしいと思っております。

さらに言えば、新3年次11人のゼミ生のほとんどは公務員志望のようですので、さらにジャーナリスト志望の方などにも加わっていただき、多面的に行政や公共政策を分析していきたいと思っております。

こんな学生に来てほしい

公共政策学の使命は、我々が社会の一員として問題にどう向かっていくのかということにあるのではないかと考えます。そういう意味でも、公務員をめざす人に加えて、いまの社会問題の解決に一市民として積極的に関わりたいという心がある人たちも来てくれたらと思います。政策決定についてその決定過程から実施過程までを分析していくのは、一種のなぞ解きでもあり、知的な愉しみでもありますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。