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GOOD PROFESSOR

立教大学
社会学部 社会学科

松本 康 教授(教務部長)

まつもと・やすし
1955年大阪生まれ。84年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。84年東京大学文学部助手。87年名古屋大学文学部講師。91年同助教授。99年東京都立大学大学院都市科学研究科教授。05年首都大学東京への組織改編で都市環境学部教授。06年より現職。この間88年米シカゴ大学客員研究員。立教大学グローバル都市研究所所長。教務部長。

著作は『東京で暮らす―都市社会構造と社会意識』(東京都立大学出版会)『増殖するネットワーク』(勁草書房)『都市社会学のフロンティア2 生活・関係・文化』(日本評論社)など多数(掲載著作はいずれも編著)。

松本教授が主宰する研究室のURLアドレスはコチラ↓
http://www2.rikkyo.ac.jp/web/ymatsumoto/index.html

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松本研究室が入る池袋キャンパス「12号館」
池袋キャンパス内にはチャペルもある

都市社会学研究のパイオニア

――立教大学社会学部は半世紀を超える歴史をもつ。同学部社会学科の松本教授にその歴史的展開ふくめて学部のことから聞いてみよう。

開設当初の本学社会学部は、本来の社会学に加えて、産業関係や観光学なども扱う間口の広い学部でした。それらが学部として独立していき、現在の社会学科・現代文化学科・メディア社会学科の3学科制に整えられたのは06年になります。学部全体の特徴としては、わたしを含めて都市問題を研究している教員が多いことですね。

――松本教授が所属する社会学科については……

社会学部の3学科のうち、社会学の根本的なところを研究しているのが、我らが社会学科でして、そこを土台として現代の各社会問題について研究するのが残る2学科という構成になります。ですから社会学科には、あるテーマに特化した研究をするのではなく、社会学全般を広く学びたいという人に向いていますね。

社会学科の1年次では、社会学とはどんな学問分野であるのかについて「社会学原論」を学ぶことから始め、アンケートやヒヤリングによる社会調査の方法を身につけていきます。3~4年次には各自テーマを絞って「専門演習2」「卒業論文演習」でそれぞれ研究の仕上げをすることになります。

立教大池袋キャンパスの「第一食堂」
立大のホームタウンはTOKYO池袋

脱工業化の先にある「創造都市」とは

――松本教授のご専門は「都市社会学」(Urban Sociology)で、具体的な研究テーマとしているのは「日本の創造都市の研究」だ。創造都市(クリエーティブシティ、英Creative Cities)という新しい概念について都市社会学分野で早くから研究しているのは、わが国では松本教授だけという。まずは創造都市とは何であるのかから説明していただいた。

90年代のヨーロッパでは脱工業化の動向、つまり製造業など大量生産型の産業の衰退という現象が起こりました。それまで工業を中心にしていた都市の衰退が問題になり、そうした都市や地域をどのようにして再生していくのかが検討されてきました。具体的には、文化やアートの活用や産業遺産の展示公開など、さまざま従来にはない試みで再生復興させていこうというのが創造都市研究のおもなコンセプトになります。

すでに欧州各国ではいくつかのプロジェクトが進められていて、成功例の報告も数々されています。面白い例をひとつ紹介しますと、北欧フィンランドでは、緯度が高いため1年の半分はほとんど日照がなく1日の大半が夜です。これは観光面では非常に不利なのですが、それを逆手にとりまして、ロウソクの光を使った「光の文化」をベースにイルミネーションの祭典で観光客を呼び込むことに成功しています。

――そうした創造都市の概念を日本に移入した場合、どんな地域再生の例が考えられますか。

たとえば群馬と長野の県境にある碓氷峠は、かつて「アプト式」(Abt system)の軌道があったところが遊歩道として整備され、トンネルやレンガ造りの古い橋が貴重な遺構として公開されています。これをもっと活性化させるためには、富岡製糸工場跡や足尾鉱山跡などの産業遺構とネットワークを組むなどすることで、一層の活性化が図られるのではないかと考えられます。

――さらに広域なネットワーク事例もあるようですね。

東アジアの諸都市においても創造都市概念が受け入れつつありまして、現在ユネスコによる「クリエーティブシティ・ネットワーク」には(1)中国の5都市(2)韓国の3都市(3)日本の4都市(金沢・名古屋・神戸・札幌)が登録されています。これとは別に、横浜や浜松でも創造都市を標榜する動きがあります。

――つぎに松本教授は「立教大学グローバル都市研究所」の所長も兼任する。この研究所のことも聞いておこう。

この研究所は07年に設立され、その立ち上げから関わってきました。ここは立教における都市研究の伝統を生かしながら、さらに学際的に研究水準を高めて発展させようという理念で運営されています。現在は、創造都市をテーマに中国や韓国の研究者などと連携しながら研究の蓄積をしている段階です。

立教大池袋キャンパス点描

「良き市民」となるための〝ゼミ3ヵ条〟

――立教大学社会学部における専門ゼミ演習は、3年次「専門演習2」と4年次「卒業論文演習」という形で開かれていく。

わたしのゼミは各年次15~17人のゼミ生でやっています。例年入ゼミ希望者が多いため選抜になっていて、その方法はわたしとの面接になります。選考ポイントは、社会学だけでなく政治・行政・経済・都市計画など多様な社会問題に関心をもっているかどうかに尽きます。

さらには「ゼミ3ヵ条」とも言える(1)明るく楽しく(2)連絡を密に(3)ほんのちょっとの勇気を――を守れることが条件となります。ここで「ほんのちょっとの勇気を」というのは、見知らぬ他人へのインタビューなどで臆せず出来るかどうかということです。

ゼミではずっと横浜市における都市問題も扱っています。14年度からは「都市再生の文化戦略」をゼミテーマに掲げ、文化を切り口としたグローバル時代の都市発展戦略のあり方を考えていきます。

また3年次のゼミでは、インタビューを中心にしたフィールドワーク調査を夏休みに断行します。前期はその調査と準備に充て、後期はその調査結果をゼミ報告書にまとめてもらいます。

夏休みのゼミ合宿では、わたしが考案した「総当たりグループディスカッション」が恒例行事となっています。ゼミ生全員がグループに分かれ、それぞれ自らの生い立ちなどを語り合うものです。何回か組み合わせを変えてやっていくうちに、重複なしに全員と話せるというものです。これによってゼミ生たちの親密度がグッと増しますね。

――あらためてゼミ生たちへの指導方針について次のように語ってくれた。

貴重な若き日に都市問題について研究することの意味は「良き市民になる」ということに尽きます。大学卒業後どんな人生を送ることになろうとも、日本の(そして世界の)「市民」であることには変わりありません。であるならば、良き市民となって社会と地域を支える一生モノの素養を身につけなさいということですね。

こんな学生に来てほしい

広い視野でいろいろなことに関心をもつ人に来てほしいです。現実の世界は学問分野の境界など飛び超えて広く存在しています。あまり狭い専門・分野にこだわらずに、世の中に対して広い好奇心をもち続ける人がいいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。