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GOOD PROFESSOR

東邦大学
看護学部

村上 好恵 教授

むらかみ・よしえ
1967年北海道生まれ。90年弘前大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒。90年虎の門病院看護師。95年愛媛大学医学部看護学科助手。99年兵庫県立看護大学大学院看護研究科修士課程修了。99年国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部リサーチアシスタント。04年聖路加看護大学講師。07年首都大学東京健康福祉学部看護学科准教授。12年より現職。博士(看護学聖路加看護大学)。

主な著作に『家族性腫瘍遺伝カウンセリング―理論と実際』(金原出版)『がん看護学―臨床に活かすがん看護の基礎と実践』(ヌーヴェルヒロカワ)『遺伝性乳がん・卵巣がんの基礎と臨床』(篠原出版新社)などがある(著作はいずれも分担執筆)。

村上教授らが在籍する「成人看護学研究室」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.nurs.toho-u.ac.jp/lab/adult_health_nursing/index.html

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成人看護学研究のトップリーダー

――今週ご登壇願うのは東邦大学看護学部の村上好恵教授。まずは同看護学部のことから話してもらおう。

東邦大学には、(1)人間性の教育(2)感染についての教育(3)国際交流――という3つの重点教育項目があります。まず「人間性」の教育については、1年次では災害時の状況を想定して3泊4日のキャンプ生活を体験し、2年次には鎌倉のお寺に1泊して日本文化研修をおこないます。こうして一般教養の枠を超えて、医療を提供する側の人間性が大切という観点からの教育をしております。

つぎの「感染」につきましては、看護のなかの1項目として教えるのではなく、「感染制御学」の専任教員により独立した講座として教育しています。医療人にとって感染制御は重要な問題で、理論教育はもちろん実験指導も重要なのです。これは他大学ではなかなか見かけないですね。

もうひとつ「国際交流」に関しては、選択科目として夏休みの1ヵ月間カナダのビクトリア大学での語学研修、春休みにヨーロッパでナイチンゲールの足跡をたどる研修旅行、そしてタイやラオスでのフィールド調査と実習も履修することができます。

さらにはグローバル化に対応して英語を1~4年次まで履修できるようになっていますし、第2外国語が7言語から選択できるようにもなっています。看護系の学部としては非常に充実した外国語教育と自負しております。

がん遺伝子保有者への看護のあり方を模索

――村上教授のご専門は「成人看護学」「がん看護学」「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」「家族性腫瘍」と多岐にわたる。いま研究中の具体的テーマは2つほどあるということで、まずは初めに「がん患者とその家族の精神的苦痛に対する支援の研究」について説明いただこう。

いまや2人に1人はがん(cancer)にかかり、そのうちの3人に1人が亡くなるという時代。がんの患者さんは非常に多く、それを取り巻く家族の数はさらに多いことになります。わたしたち看護をする者は、そうしたがん罹患者にどのようなサポートができるのかが大きな課題です。

医療に従事していますと、患者さんやご家族の方に何かしてあげなくてはいけないと考えがちになります。そうではなくて、患者さんたちが本当に望むことは何か? どんな治療が希望なのか? どんな最期を迎えたいと考えているのか? そうした本音をきちんと聴かせていただきサポートしていくことが最も重要になります。

――もうひとつの研究テーマである「家族性腫瘍(遺伝性腫瘍)の患者とその家族をサポートするケアの研究」については……

がんの中で遺伝性のものは10%程度といわれます。そうした方々は発がん性の遺伝子変異をもっていますので、それは検査で事前に調べることもできます。その検査によって将来に発症リスクがあることを知るメリットがある一方で、同時にいつか発症するかもしれないという不安を抱えてしまうデメリットも発生します。

遺伝性のケースでは発症年齢が若年(50歳前)という特徴があり、私たちは発見が遅れて手遅れになる事態だけはぜひとも防ぎたいと思っています。遺伝子変異をもっていることがわかったら、それをメリットとして生かし、定期的に検診を受けて早期発見・早期治療に努めてもらうように説明します。私たちの看護がそうした方々の支えになれればと考えています。

この遺伝子変異は兄弟姉妹全員に遺伝するとは限りません。遺伝子変異を持つ人と持たない人との間での葛藤状況は、その家族や親族をも巻き込んでさまざまなケースに至ります。そこでのケアでは、これが正解というのがありませんから、個々のケースに合わせて丁寧に対応していくことが大切ですね。

――村上教授は「がん患者」「家族性腫瘍患者」への看護研究では日本における第一人者の地歩にあるとされる。

「最善の看護」をクリエイティブにめざす

――そんな村上教授は「成人看護学研究室」を主宰されている。この研究室のことについても説明をお願いしよう。

この研究室は、わたしを含め本学教授2人に准教授・講師・助教の総勢9人の教員スタッフで構成されています。ここでいう「成人期」というのは人生の大半を占める期間なので実にさまざまな健康問題が起きてきます。そのあらゆる疾患について、急性期から回復期・リハビリ期あるいは亡くなるまでの期間にどのような看護が必要なのかを研究しています。

――この研究室での学生指導は1年次秋学期からの学部生が対象になるという。

「成人看護学」は1~3年次の看護学部の必修授業として、1年次には概論、2年次に理論、3年次には実習を指導しております。さらに4年次では、卒業研究をする学生を例年30人ほど受け入れています。

なお多くの看護系学部・学科では、そのカリキュラムが過密化していること、実際の研究データをとることが困難などの理由もあって、卒研は計画書の提出だけで可として済ます大学・養成機関も増えてきています。しかし本学では、大学を卒業するためにはきちんと研究を経験する必要があるという考えから最後まで研究をやり遂げてもらうようにしています。

――あらためて村上教授が学生指導で特に心がけていることについてこう語ってくれた。

わたしは成人期という、人生のなかで一番長い時期を研究対象にしていますので、さまざまな疾患や社会的背景をもった患者・家族とお付き合いしなければなりません。そうした複雑さをよく把握しながら柔軟に対応することが求められます。

とくに成人初期の若い方と高齢者に近い方では身体の仕組みも違ってきますので、その機能的な面にも配慮して、それぞれ最善の医療と看護とは何なのかをきちんと考えられる人を育てられればと思っております。そのためにも最新の看護技術に基づいた知識を駆使して、最善の看護を多角的に、柔軟に創造できるような看護師を目指してほしいですね。

こんな学生に来てほしい

開拓精神やチャレンジ精神の旺盛な方に来ていただきたいですね。医療技術は日々新たになっています。次はどうなるんだろうと自ら探求していく姿勢がとても大切になります。
また看護は病院や医療機関だけにあるのではなく、一般家庭や福祉施設をはじめあらゆる所で必要とされ存在しています。こうして看護の道は多方面に開けていますので、いろいろな分野に積極的に羽ばたいていってほしい。そういう意味で看護学の可能性は無限なのです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。