早稲田塾
GOOD PROFESSOR

明治大学
文学部

諸富 祥彦 教授

もろとみ・よしひこ
1963年福岡県生まれ。92年筑波大学大学院教育学研究科博士課程修了。以後、英イーストアングリア大学・米トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師・同助教授を経て、現職。教育学博士。日本トランスパーソナル学会会長。教師を支える会代表。

著作は『悩みぬく意味』(幻冬舎新書)『孤独であるためのレッスン』(日本放送出版協会)『ずっと彼女がいないあなたへ』(WAVE出版)など多数。諸富教授が主宰するURLのアドレスはコチラ↓
http://morotomi.net/

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諸富教授の研究室が入る「文学部14号館」

人に寄り添うカウンセリングの研究

――明治大学文学部の諸富祥彦教授は「学校カウンセリング」と「人間性/トランスパーソナル心理学」が専門で、両分野のわが国における第一人者とされる。まずは学校カウンセリングのことから教えていただこう。

いまこの国における学校の児童・生徒たちが抱える問題としては、不登校もあるし、イジメもあるしで、人間関係や心理面にかかわることで悩んでいる方が非常に多いですね。

――そうした心の悩みの相談を受けるプロのカウンセラーとして、いったい諸富教授はどんなアドバイスをされるのだろうか。

カウンセラーの役割はアドバイスすることではありません。子どもたちに寄り添って、そのことばにじっと耳を傾け、いっしょに悩んであげる。そうした傾聴の姿勢こそが大切なのです。

――その一方で、教える側の先生方にも悩みを抱える人が多いともいう。諸富教授は「教師を支える会」(http://www15.atpages.jp/~sasaeru/)の代表もされている。

いまの日本の教員は忙しすぎますね。忙しすぎて追い詰められて、そして辞めてしまう。そういう例が多いのです。児童・生徒全員に持たせる連絡帳への記載・管理、保護者からのクレーム処理などもあって大変です。うつ病を発症させる教員も年々多くなっています。

こうした教員からの相談には、さらに現実的な対応策を考えていかねばなりません。荒れている学級をどう治めるのか? 高校生との対応に苦しんでいたらどうすればいいのか? 同僚・上司の教員との関係が良くないケースでは、相手に自分の気持ちをどう伝えたらいいのか?――そうした具体的なことをいっしょに考えていくわけです。

「山の上ホテル」横坂道の先に14号館はある

トランスパーソナル心理学研究の第一人者

――諸富教授のもうひとつの研究テーマである「人間性/トランスパーソナル心理学」については……

これは自己成長の心理学です。「生きている意味があるのか」「生き方がわからない」「生まれてきた意味があるのだろうか」「自分のことを好きになれない」――中・高生の皆さんの中にもこうしたことで悩んでいる人は多いと思います。

とかく人は、こうした答えの出しようがない人生上の問題に悩むものです。しかし、こうした悩みにも意味は十分にあります。その悩みを通して自らを見つめることで、人生のいろいろなことを経験し成長していくからです。

臨床心理学に関心のある人、カウンセリングに関心のある人、教師になりたいと考えている人、自分の生き方に迷っている人――そういう人にぜひ学んでほしいのがこの心理学です。これは心の病を解明していく心理学ではなく、自らの可能性や力を十分に発揮して生きていくためには果たしてどうすればいいのかを考えていく心理学です。

――キャリア心理学の具体的な手法については……

この心理学については、米スタンフォード大学のJ.D.クランボルツ教授(John D.Krumboltz)という大家がいまして、「計画された偶発性理論」(PlannedHappenstance Theory)というのを提唱しています。クランボルツ教授によると、成功した人を対象に調査したところ、18歳のときに「これで成功したい」と思い描いたもので成功していた人はわずかに2%に過ぎなかったそうです。

この人生キャリア理論で示されるのは、18歳の時点で人生なりたいものが見つからなくてもOKということ。ただし、自らのキャリアがどのようになりたいのかを絶えず考えている必要はあります。これが同理論の第1の要点です。

その第2は「考えすぎるな。足を運べ」で、少しでも面白そうなことがあったら躊躇せずに行動に移してみるということです。すごく成功した人や幸福な人について調べてみると、「たまたまやってみたこと」が成功や幸福につながったという人が多いそうです。ならば単純にラッキーだっただけかというと、決してそうではありません。「人生にプラスをもたらす偶然の出来事」に心を開いて、自ら積極的に行動していったためなのです。

なにか気になることがあったらやってみる。なにか人に誘われたら「イエス」と言ってみる。絶えず心を開いておく。成功した人と幸福な人に共通するのは、こうしたことを常に心掛けているということです。みなさんもこの精神で他人の目など気にせずに積極的に生きてみてはいかがでしょうか。

初春の明治大学駿河台キャンパス建物群

一生モノのコミュニケーション能力を

――明治大学文学部の特色について伺ってみると……

自由でのびのびとした雰囲気があり、自ら本当にしたいことを探求できる場です。大学公式のURLにアクセスするなり各自で調べて行動していただければと思います。

――そんな明治大学文学部において諸富教授は、教養科目「心理学概論A・B」と「こころの科学A・B」を担当する。

このうち「心理学概論」では「自己成長の心理学」について講義しています。これは学部の1~2年次を対象にした教養科目として教えているので、学問としての心理学というよりも、生き方を自ら知るための心理学として教えています。「生きている意味がわからない」「自分が好きになれない」「人から嫌われるのが怖い」といった具体的なテーマについて、その悩みの解決に役立つような講義をしています。

ここでは講義のあと学生たち自身に考えてもらい、それからシェアリング(sharing)をします。シェアリングとは、相手を論破しようとするディスカッション(discussion)とは違って、それぞれが生き方を語り、互いに静かに耳を傾け合うという方法でおこなうものです。他人の生き方についての自己開示を傾聴し相互に共有し合うだけなのですが、それが自らの生き方に大きな影響を与えることになることを体験してもらいます。

一方の「こころの科学」ではいわゆる「婚育」の授業をしています。最近の若者は、人間関係をうまくできない人が多い。そうなると友人ができない。就職活動もうまくいかない。恋人もできない。こうして人間関係の上手・下手は人生のすべてに影響してきます。

そこで、恋愛や結婚に焦点を当ててコミュニケーション能力を向上させる授業をしています。みんなで最高のデートプランを考えてみたり、恋愛告白の練習をしたりしています。苦手な人間関係を克服すれば、一生モノの友人ができて、恋人もできて、就活もうまくいく。そうなってくれれば良いと思っているわけです。

こんな学生に来てほしい

自ら心を開いて、他人とふれ合いながら、自らの人生を考えていく――こういう気持ちをもっている人はぜひ私の講義をうけてほしいですね。逆にいえば、お客様気分の人にはあまり来てほしくありません。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。